この記事をまとめると

フィットホンダのコンパクトモデル

■2022年10月にマイナーチェンジを実施した

■ホンダ・フィットの売れ行きについて解説

マイナーチェンジで「RS」が復活!

 2022年には、国内で売られた新車の39%を軽自動車が占めた。ダイハツやスズキ以外のメーカーも軽自動車に力を入れ、ホンダでは、N-BOXの人気が抜群に高い。2022年には国内のベストセラーカーになり、N-BOXだけで、国内で新車として売られたホンダ車の40%近くを占めた。

 そこにN-WGNなども加えると、ホンダの軽自動車比率は53%に増える。コンパクトなフィット/フリード/ヴェゼルも含めると、80%を上まわった。今のホンダは「小さなクルマのメーカー」だ。

 この状況だから、ホンダの国内販売では、N-BOXと同じ価格帯のフィットが競い合う。販売合戦に勝ったのはベストセラーのN-BOXで、フィットは負けたから、国内ではヤリス(ヤリスクロスやGRヤリスを除く)の約70%しか売られていない。つまりフィットは、身内のN-BOXに顧客を奪われて販売を低迷させる。

 そこでフィットは、2022年10月にマイナーチェンジを実施した。ノーマルエンジンは、従来は1.3リッターだったが、改良後は1.5リッターに拡大された。開発者は「1.3リッターは少しパワー不足でe:HEVとの格差も気になったが、1.5リッターになって解消された。e:HEVもパワーアップされ、フィットの動力性能が全般的に向上した」という。

 グレードも見直されてRSを復活させた。以前はネスと呼ばれるスポーティグレードを用意したが、魅力がわかりにくかった。その点でRSは、足まわりの設定を変更して、走行安定性とステアリング操作に対する正確性も高めている。従ってスポーティな運転感覚を味わえる。開発者は「e:HEV、ノーマルエンジンともにパワーアップしたから、グレードもRSを復活させた」という。

 フィットRSは、ベテランのクルマ好きから見ると、5ナンバーサイズだった時代のシビックと重なる。初代シビックにはRSというグレードがあり、大ヒットした3代目の3ドア25iなども、フィットRSに似た商品だった。

販売ランキング上位はスーパーハイトワゴンで占められている

 それでもフィットが売れ行きを伸ばすのは難しい。フィットの標準タイプとされるノーマルエンジンを積んだホームの価格は182万6000円で、N-BOXに標準ボディを組み合わせたLは157万9600円だ。N-BOXの価格は約25万円安い。

 フィットのスポーティグレードになるノーマルエンジンを積んだRSは195万9100円で、N-BOXにエアロパーツを装着した上級のカスタムLは178万9700円だ。これもN-BOXが約17万円安い。

 以上のような価格で、車内の広さを比べると、N-BOXが広くシートアレンジも多彩だ。後席を畳むと自転車を積めて、スライドドアを備えるから乗降性も良い。

 ただしフィットは、全長が4m前後で、全高を立体駐車場を使える高さに抑えたコンパクトカーでは、後席の居住性と積載性がもっとも優れている。加えて動力性能や走行安定性とのバランスは、N-BOXよりも優秀だ。

 このようにフィットは魅力的なコンパクトカーで、商品力はN-BOXにも負けないが、販売面で対抗するのは難しい。その理由を販売店では以下のように説明した。「今はスライドドアを装着した背の高いコンパクトな車種を求めるお客様が増えた。このニーズに適しているのは、ホンダではN-BOXとフリードだ。フィットは合理的で価格も割安だが、背の高いボディにスライドドア、というニーズによって、売れ行きはN-BOXが上まわる」。

 確かにN-BOXと併せてフリードの販売も好調だ。現行フリードの発売は2016年だから、2020年のフィットに比べると古いが、売れ行きでは上まわる。

 さらにいえば、小型/普通車では、ルーミーが実質的な販売1位だ。統計上はヤリスが多いが、ヤリスクロスやGRヤリスの台数も含まれる。カローラも、セダン、ツーリング、スポーツ、継続生産型のアクシオとフィールダーまで含んだシリーズ全体の数字だ。ノートも3ナンバー車のノートオーラを含む。これらを分割して、ユーザーニーズに沿ってボディタイプ別に売れ行きを算出すると、ルーミーが1位になる。

 そしてルーミーは、全高が1700mmを超えるボディにスライドドアを装着しており、いわばN-BOXの小型車版だ。このように国内販売ランキングの最上位は、スーパーハイトワゴンで占められる。フィットが売れない理由は根深いのだ。