謎のジンクスは本当? ホンダ車の名前に秘密アリ!?

 こんなジンクスを聞いたことはないでしょうか。

「車名がカタカナの“エ”から始まるホンダ車は、後継モデルが出ないまま一代限りで販売終了する…」

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 じつに不名誉なジンクスにも思えますが、はたしてその信憑性は高いのでしょうか。

 真相を追うため、条件に該当する車種を振り返りながら検証します。

ホンダにまつわる謎のジンクスは本当か!? (写真はホンダ「エレメント」)

 これまでホンダが発売した自動車において、車名がカタカナの“エ”で始まる車種は4車種あります。

 それが「エレメント」「エディックス」「エアウェイブ」「エリシオン」です。

 そして奇しくも、4車種ともに現在日本国内で新車販売されているモデルはありません。

 さらにいずれも「初代モデル」のみとなり、つまり2代目モデルが発売されることなく販売が終了していました。

 ここまで見ると冒頭で挙げたジンクスは正しいようにも思えます。一体どういうことなのか、車種ごとに経緯を見ていきます。

アメリカからやって来た異色SUV「エレメント」

「エレメント」は2003年に日本で発売されたSUVです。

 1980年代から1990年代に生まれた当時の若者「ジェネレーションY」をターゲットとして開発から生産まで一貫して米国で行われ、日本での発売は米国の一年遅れでスタートしました。

 ボディサイズは全長4300mm×全幅1815mm×全高1790mmで、全幅の大きさからも米国をメインに設計されたことがうかがえます。

アメリカからやって来た異色SUV「エレメント」

 デザインモチーフは「ライフガードステーション(海岸でライフセーバーの務める監視台)」で、特徴はなんといってもボディの大半を樹脂パネルが覆う斬新なデザインです。

 つや消しグレーの樹脂パネルは、どの車体色を選択してもコントラストが明確で、実質的にツートーンカラーといえる外観は独特そのものでした。

 また、左右のドアはセンターピラーのない観音開き式となっており、テールゲートも上下に分割して開くタイプと、デザイン以外も個性が満点。

 しかし国内のSUVブームには少し早かったようで、日本市場では残念ながら成功とはいかず、わずか2年で国内販売を終了しました。 

 米国ではその後も販売が続けられ特別仕様車も登場しましたが、最終的にフルモデルチェンジや後継車種も無いまま2011年に販売が完全に終了しました。

前席に3人が座れた仰天ミニバン「エディックス」

 ホンダは「エディックス」をミニバンだと説明します。しかし車内を見渡しても、いわゆる“ミニバンらしい”3列シートは存在しません。

 2004年に登場したエディックス最大の特徴は、フロントシートに大人3人が横に並んで座るシートレイアウトです。リアシートにも3人座れ、大人6人で多人数乗車できる新しいミニバンだ、というのがホンダの主張といえます。

前席に3人が座れた仰天ミニバン「エディックス」

 ボディサイズは全長4285mm×全幅1795mm×全高1610mm(FFモデル)と、短めの全長にしては広めの全幅が独特ですが、小回りは意外なほど効くため取り回しは上々でした。

 発売当初は斬新なシートレイアウトに注目が集まったものの、同じホンダのラインナップに通常の3列シートミニバン「ステップワゴン」や「オデッセイ」などが多数存在するなかで、横並びで座る面白さが伝わらなかったのか、エディックスの販売は苦戦。

 特徴だったシートレイアウトを継ぐモデルも出ないまま、2009年をもって一代限りで販売を終了しました。

天井がガラス張りで開放感バツグンの「エアウェイブ」

「エアウェイブ」は、2005年から2010年までホンダが販売していたコンパクトサイズのステーションワゴンです。

 同社のコンパクトカー「フィット」をベースに開発され、ホイールベースを延長しつつフィットで好評だったセンタータンクレイアウトを採用したことで、1クラス上の広さを獲得しています。

天井がガラス張りで開放感バツグンの「エアウェイブ」

 最大の特徴は、ガラスルーフが選択できるところです。

 開閉機構は無いものの、天井を占める面積の大部分が透明になることで、圧倒的な開放感と爽快感を獲得しました。

 また太陽からの熱線を吸収するUVカットガラスが使用され、さらに電動で展開が可能なサンシェードも装備していたので、夏場の日差しからも守られる設計となっていました。

 広い車内と使い勝手の良さ、燃費も良く価格も手頃と欠点のないクルマにも思えるエアウェイブでしたが、大ヒット作とはならず2010年に一代限りでその役目を終えました。

アルファードに挑戦したホンダの最上級ミニバン「エリシオン」

「エリシオン」は2004年に販売された大型ミニバンで、これまでホンダが販売した日本専用設計のミニバンでは最大級のサイズを誇るモデルでした。

 ボディサイズは全長4845mm×全幅1830mm×全高1790mm。長い全長と全幅から生み出される広大で快適な室内空間を特徴とし、さらに乗り心地の良さについても高い評価を獲得していました。

アルファードに挑戦したホンダの最上級ミニバン「エリシオン」(画像はエリシオン プレステージ)

 ライバル車として想定されたトヨタ「アルファード」や日産「エルグランド」と比較すると、フロントフェイスやスタイリングはプレーンな造形となっているのが特徴です。

 デザインテーマは「海を駆ける高級クルーザー」をモチーフとし「洗練された優雅さ」を重視してデザインしたとホンダは説明します。

 しかし、押し出しの強さを求める高級ミニバンユーザーのニーズとマッチしていたのかについては疑問が残ります。

 エリシオンの全高1790mmはライバル2車よりも100mmほど低く、走行安定性の高さや乗り心地の良さには繋がっていたものの、ライバルと並べた時の「迫力」という面では不利に働いてしまいました。

 モデル中期で、押し出し感の強いフロントフェイスに改めた派生車種「エリシオン プレステージ」を追加しましたが、すでに定着したイメージを覆すにはいたらず、販売台数が盛り上がることのないままエリシオンは2013年に一代限りで販売を終了しました。

※ ※ ※

 実際にエから名前の始まるホンダ車は、そのすべてが一代のみで販売が終了していましたが、ジンクスが完全に正しいとは言い切れない面もあります。

 例えば、エアウェイブは2012年に後継モデルとなる「フィットシャトル」が誕生。さらに2015年にはフルモデルチェンジでクラスアップを図った「シャトル」も誕生しています。つまりエアウェイブという名前は無くなったものの、実質的には3代に渡るロングセラーモデルといっても過言ではありません。

 また、エリシオンは国内での販売は終了しているものの、海外向けでは2016年から同名の大型ミニバンが新開発され、広い視野で見ればエリシオンは現在も生き残っています。

 こうして振り返ると、むしろホンダは意欲的に新しい提案を繰り返しているように思えます。斬新で挑戦的なモデルが多いために、廃止になった車名も少なくなく、それがたまたま目立ってしまったのでは無いでしょうか。

 ジンクスを堂々と打ち破るべく、次にホンダが出す“エ”から始まる名前の車種に注目していきましょう。