愛知県警岡崎署の留置場で2022年12月、勾留中の男性が死亡する問題が起き、警察の対応が疑問視されている。

弁護士ドットコムは、会員の弁護士に警察についてのアンケート(実施期間:2022年12月21日〜2023年1月9日)を実施し、105人から回答が寄せられた。6割以上の弁護士が、警察官の法律知識について「不十分」「やや不十分」だと思うと回答し、取り調べ時の対応にも不満や疑問を抱いていることがわかった。

「もはや(被疑者を)犯罪者として扱っている」「嘘をつく、罪証隠滅をする警察官が多すぎる」などの意見が飛び出した。取り調べで録音・録画ができる対象事件の拡大、法律教育の必要性などの課題が浮かびあがった。

●警察官の法律知識、66.7%が「十分ではない」

警察官の法律知識を十分だと思うか尋ねたところ、もっとも多かったのは「不十分」(44.8%)との回答だった。「やや不十分」(21.9%)と回答した弁護士をあわせて、66.7%(70人)。一方、「十分」(2.9%)「やや十分」(3.8%)と回答したのは、回答者の6.7%にとどまった。

●LGBT当事者に「ああいうのが好みなの?」

警察による取り調べは密室でおこなわれるため、たとえ問題があったとしても、明るみになりにくい。被疑者から弁護士に寄せられる声からは、人権無視とも思える対応があるという。

「LGBT当事者である男性被疑者に対して、別の警察官を指さして『ああいうのは好みなの?』とか、『自称イケメンが来たぞ』といった発言をした。警察官は、LGBTに対する理解をもっと深めるべきだと思う」

取り調べについて、疑問や不満を抱いたことがあるのは64.7%(とてもある31.4%、ややある33.3%)。一方、「あまりない」は14.3%、「ない」は4.8%にとどまった。

取り調べを見えるようにするため、刑事訴訟法が改正され、2019年6月に録音・録画(可視化)制度が施行されたが、対象となるのは、裁判員裁判になる事件、検察庁が自ら検挙・摘発しておこなう捜査の事件に限定されている。逮捕されていない場合は、対象外だ。

弁護士からは、次のエピソードが寄せられている。

「大声で怒鳴る、被疑者をお前呼ばわりするなど、威圧的な取調べをおこなっている」
「一般社会では許容されないレベルの脅迫はいまだに見られる」
「『やっていないなら証明してもらわないと』などと小学生でもわかりそうな『悪魔の証明』を被疑者にさせようとする」
「被疑者に対し、『取り調べで話せば、起訴されない』などと嘘の情報を伝える」
「在宅事件の任意取調べに同行した弁護人との打合せ(警察署の建物外)に捜査官がついてきて、内容に聞き耳を立てようとしてきた」

●「なんでもかんでも警察に」が原因?

このように批判の声が相次いだものの、同情や理解を示す声も少数ながらあった。

「警察官の方が検察官より真面目だし、法的知識もあることがほとんど」(「法律知識がやや不十分」と回答した弁護士)

また、個人の問題ではなく警察組織自体の問題と指摘する声があった。

「公務員の労働条件を何とかしない限り、警察はよくならない」
「何かあったらすぐに警察に行く人がいます。ゴミ箱みたいな扱いをするのもやめた方がいい」
「警察官個人の力量による差が激しいと思います。警察は、強大な国家権力を担う組織なので、属人的要素を排して、誰でも同じ捜査、対応ができるよう、もっとIT化を含め、マニュアル化が進むと良いと思います」