クルマの雪下ろしをするとき、お湯をかけたり、ボディから一気に雪をかき落としたりするのはNGです。ボディの塗装面を傷めたり、ガラス面に傷をつける可能性があります。クルマを傷めない正しい雪下ろし、どうすればよいのでしょうか。

雪を載せたままの走行、NGですよ!

 2023年1月下旬の大雪では、太平洋側の大都市圏や南九州、四国南部などでもまとまった降雪がありましたが、ルーフの雪を載せたまま走行した人もいるのではないでしょうか。これは、雪をまき散らして周りのクルマを危険にさらす恐れがあり、地域によっては罰則も定められているNG行為です。とはいえ、雪に不慣れで、どうやって雪をクルマから下ろせばよいか迷う人も多いことでしょう。


雪がこんもりと積もったら、どうやって雪を下ろす(小林祐史撮影)。

 クルマの雪下ろしは、やり方を間違えると、ボディの塗装面を傷めたり、ガラス面に傷をつけることがあります。ボディやガラス面と接している部分の雪が凍っているのに、力任せにかき落としたり、雪おろしの道具をボディに接触させたり、お湯をかけたり……こうした行為は結果的にクルマを傷めてしまいます。

 まず、雪下ろしに必要な4つの道具を用意することから始めます。1つ目は先端がゴムベラとブラシになっているスノーブラシ。2つ目はスコップ。3つ目は防水・防寒のゴム手袋。さらに、積もった雪が凍っている場合のために解氷スプレーも用意しましょう。

ボディに触れないようにして「上部のみ」雪を下ろす

 柔らかい雪が積もっているなら、スノーブラシでボディに触れないようにしながら、表面に少し雪を残すようにして大まかに雪を下ろします。積もった雪の根元が凍っている状態ならば、凍っていない部分のみを下ろすようにします。

 この時、雪はクルマの左右に下ろすようにします。下ろした雪がドアを開閉できないくらい高く積もった場合は、スコップでクルマから離れた場所に移動させましょう。

 左右に下ろす理由は、前に下ろすと発進しづらくなってしまい、後ろだとマフラー出口に雪が詰まり、排気ガスに含まれる一酸化炭素が車内に入り込む危険性があるからです。もし雪を下ろす前から、積雪がフロントバンパーやマフラー出口を覆っていたら、エンジンを始動させる前に除雪しておきましょう。

お湯かけるなよ!!!!!

 次に、ボディ表面に少し雪を残した状態でエンジンを始動させます。このときにエアコンもオンにしておきます。両者の熱がボディやガラス面に伝わり、雪が少し溶けたらスノーブラシのブラシ部分、もしくはゴム手袋の上にマイクロファイバークロスやセーム革、タオルなど巻いた手で、残りの雪を下ろします。

 エンジンやエアコンの熱で凍った部分がすぐに溶けるわけではありませんが、だからといって、ここでお湯や水をかけるのはNGです。特にお湯は雪で冷え切ったボディが急激に温められるため、塗装面を傷める可能性が高く、ガラス面にはひびが入る危険もあります。

 仮に傷みやひび割れが生じなくても、残った水分が冷えて凍結すると厄介です。この凍った水分の上に雪が積もれば、簡単には雪下ろしができなくなり、加えて走行中の加速やブレーキなどで、ボディ上を凍った部分が滑るという状況を招きます。したがって、時間がかかっても焦らずに、エンジンやエアコンの熱で徐々に溶かすのがベターです。また、エンジン、エアコンと同時に解氷スプレーを使用するのが有効です。


ドアまで雪で埋もれた場合は、スコップで回りを除雪(画像:写真AC)。

 ボディやガラス面の雪下ろしを終えたら、最後にライトやウインカー等の灯火類を点灯させてみましょう。雪が残って点灯状態が判別しにくいようならスノーブラシのブラシ面やタオルで軽く払い落とします。

「雪が積もる前」に洗車するとなおよし

 雪の季節は空気が乾燥しているため、クルマの表面にはホコリや砂が付着しやすくなります。このような状態で雪を溶かさずに下ろすと、ホコリや砂で塗装面を傷めてしまいます。

 予防策として有効なのは、天気予報で雪が降りそうだとわかったら、事前に洗車をすることです。雪が積もる前にホコリと砂を流すことが目的なので、汚れが酷くなければ、水で洗い流す程度で十分です。洗い流した後は、吸水性の高いマイクロファイバータオルなどで水分が残らないように拭き上げておきましょう。このように洗車をしておくと、後の雪下ろしでクルマが傷つくリスクが下がります。

 しかし事前に洗車をしても、一気に雪をかき落とすなど、前述した手順を守らない雪下ろしは禁物です。なぜなら雪自体にホコリ、砂など、ボディを傷つける危険があるものが含まれているからです。

 一見すると白くてきれいに見える雪ですが、クルマのボディやガラス面にとっては大敵となるものが含まれています。くれぐれも正しい手順で雪下ろしを行い、愛車を労りましょう。