家庭で測った血圧の数値は正常値なのに、医療機関で測ると、家庭よりも高い数値が出て悩む人がいます。何回測っても高い数値が出るため、健康診断では「高血圧」という、本来とは異なる診断が下されかねません。この高くなる現象を「白衣高血圧」と呼びますが、どのように対処すればよいのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

上が200近くになることも

Q.家庭で測ると正常な血圧の数値なのに、医療機関で測ると血圧が高くなることがあるのは、本当ですか。

市原さん「本当です。いわゆる『白衣高血圧』と呼ばれています。この現象は、自宅での血圧が普段は正常でも、医療機関で測ると高くなることで、決して珍しいことではありません」

Q.白衣高血圧の場合、どれくらいの血圧になるのですか。

市原さん「高くなる程度には個人差がありますが、多く見られるのは上の血圧が150前後、下の血圧が90前後という、正常値の血圧よりも少し高い数値です。中には、上の血圧が200近く、下の血圧が100を超えるような異常な数値の人もいます」

Q.なぜ、医療機関で血圧が高くなってしまうのですか。

市原さん「精神的要素が主な原因です。例えば、医療機関が苦手な人や、血圧を測るとき、『血圧が高くなったらどうしよう』と、過度に心配する人などさまざまです。つまり、緊張することで交感神経が緊張状態になり、アドレナリンが分泌されることで血圧が高くなってしまうのです」

Q.医療機関が苦手であったり、血圧を測るときに過度に心配したりするなど、精神的な不安がなければ、医療機関でも血圧が高くなることはないのですか。

市原さん「そうとも言い切れません。一般的には、医療機関や医師が苦手な人や過去の治療で苦しい経験をした記憶がある人に多いのですが、本人が特段、何も意識していないにもかかわらず、医療機関で血圧を測ると普段よりも高くなる人も多くいます」

Q.なぜ、本人が意識していないにもかかわらず、血圧が高くなってしまうのですか。

市原さん「医療機関で、本人は意識していなくても、自然と体や気持ちが緊張状態となっていることは、珍しいことではありません。そうしたときにアドレナリンが分泌され、血圧が高くなると考えられます」

Q.白衣高血圧は医療的な疾患として扱われているのですか。

市原さん「医療的な疾患としては、扱われていません。医療関係者は、血圧を測るとき、普段、自宅で測っているのかを受診者に聞きます。そして、自宅で測った血圧が正常な数値であれば、医療機関で測った血圧がある程度高くても、問題ないと判断します」

Q.白衣高血圧の人が健康診断で血圧を測るとき、本来は血圧が正常なのに高血圧と診断されることも考えられます。どのように対処すればよいのでしょうか。

市原さん「白衣高血圧だと思う人は、健康診断で血圧を測る前に、『医療機関では血圧が高くなりがち』と、自己申告することをお勧めします。測る前に自己申告すると、たとえ血圧が高い数値であっても、健康診断の結果の判定で、考慮した記載になることが多いからです。例えば、『血圧が高いですが、家庭で測る血圧が正常であれば問題ありません』などの記載です。

ただ、高くなることを自己申告するとはいえ、自らもできるだけ、正確な血圧の数値が出るよう努めることも大切です。医療機関で血圧を測るときはなるべくリラックスして、落ち着いた状態でいられるように、心掛けることが望まれます」