組体操や座高測定、アルコールランプなど、平成から令和にかけ学校から消えたものたち。必要性や安全性など、廃止の理由にはさまざまな経緯や背景があるといいます。そして現在、見直す学校が増えているのが「体育座り」です。

「三角座り」や「体操座り」など、地域によって呼び方に差はあるものの、膝を立てて揃えた両脚を腕で抱えるあの座り方がなぜ学校現場において見直されているのでしょうか? 日本の身体技法を研究する『日本身体文化研究所』矢田部英正さんに話を聞きました。

教育現場で見直しがかかる「体育座り」

「座り方」に注目し文献を中世まで時代を遡ると、日本人は男女問わず胡座(あぐら)や立膝、横座りなど様々な座り方で描かれています。ですが、体育座りをしている人の姿はほとんどと言っていいほど見られませんでした。

 それではいったいどのタイミングで「体育座り」は生まれたのでしょうか。

「昭和40年に作成された『集団行動指導の手引き』がきっかけとなり、“地面に腰を下ろして話を聞く姿勢”として教育の場に登場し広まりました」(矢田部さん)

胡座(あぐら)は古くから伝わる座り方

 昭和から現在に至るまで教育現場で見られる体育座りですが「体への負担が大きい」などが見直しの理由としてあげられます。

「体育座りが“良い”か“悪い”かという問いについては、個人の柔軟性や身体能力、座る時間の長さによって良くも悪くも転じるため、答えるのが非常に難しいですね。ただ、膝を抱え込む座り方は内臓が圧迫され、座骨への刺激もあります。ですので、長時間であったり体の大きな子どもにとっては負担の多い姿勢だと思います」(矢田部さん)

 教育現場において、どのような座り方が子どもにとって“理想“といえるのでしょうか?

「体育座りは膝や足首への負荷は少ないものの、長時間になると腹部や腰への負担が大きい。正座の場合は膝や足首に一定の負担がかかりますが、腰や腹部にはストレスの少ないです。座り方によって一長一短があるため、指導者は的確に判断しながら、どの状況では、どの座り方をするのが良いのかの見極めが必要です」(矢田部さん)

正座は膝や足首への負担があるが、腹部や腰には負担が少ない

 体育座りを見直す学校が増えてきていることについて矢田部さんに聞くと、

「体育座りの代替案となる“一致した意見”が教育現場に無いことが問題。体育の授業で、あるいは椅子座や床坐において、『どのような場面でどういった座り方がいいのか』という研究がほとんどなされていないのが現状です。まずは歴史的・技術的な背景を正しく踏まえ、ガイドライン的なものが必要だと思われます」(矢田部さん)

子どもたちに適した「座り方」を、今後の教育現場は模索していく必要がある

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 当たり前のように認識していた「体育座り」。今後どう変わっていくのかに注目です。

(取材・文=宮田智也 / 放送作家)