スターバックスのサイズアップモーニング。​​対象のフードと一緒に注文するとドリンクが1サイズアップになります(著者撮影)

喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。

そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第8回となる今回、訪れたのは「スターバックス」です。

飲食チェーンが密かにしのぎを削っているジャンル、それが「モーニング」です。朝の数時間だけ提供される限定メニューは、コスパ抜群かつ店の特色が強く現れ、どれも魅力にあふれています。

それでなくても安さで勝負しがちな日本の外食産業。集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、モーニングメニューは熾烈な値引き合戦が繰り広げられています。

そんな「空席にしておくよりは、利益率は低くても少しでも収益が上がるほうがよい」という考え方に、真っ向から勝負を挑むのがスターバックスです。この記事ではスターバックスの朝限定サービス「サイズアップモーニング」をご紹介しつつ、スタバのあらがえぬ魅力について私的考察をしていきたいと思います。

スターバックスの「サイズアップモーニング」でちょっとリッチな朝時間


スターバックスの朝限定サービス「サイズアップモーニング」(著者撮影)

スターバックスの朝限定サービス「サイズアップモーニング」は、対象のビバレッジ(ドリンクのこと)を対象のフードと一緒に注文すると、ドリンクが1サイズアップするというもの。


サイズアップモーニングのメニュー表。価格の表記はいっさいなし。そこがまたスタバっぽい(著者撮影)

つまりショートの値段でトールが、トールの値段でグランデが、グランデの値段でベンティのドリンクが飲めるんです。2022年3月から開始したサービスで、2023年1月現在も利用できます。

対象のビバレッジは、

・ドリップ コーヒー
・カフェ ミスト
・スターバックス ラテ
・ソイ ラテ
・アーモンドミルク ラテ
・オーツミルク ラテ
・ディカフェラテ
・スターバックス ブロンド ラテ with オーツミルク

対象のフードは、

・あらびきソーセージパティ&スクランブルエッグ イングリッシュマフィン
・あらびきソーセージパイ
・シュガードーナツ

です。

「◯◯定食500円」というような定額のメニューではなく、何のドリンクを注文するかによって価格は流動的に変わります。

そのため、いくら安くなっているのかはわかりにくいものの、同じ値段でサイズアップしてもらえるのはたしかにお得ですし、いつもより1サイズ大きいコーヒーを飲めば、朝の慌ただしい時間をちょっとリッチな気分で過ごせます。

ショートで注文、サイズアップしてトールで提供

この日私が注文したのは、ドリップ コーヒーのショートとあらびきソーセージパイのセットです。ショートはサイズアップして、トールで提供されます。


ドリップ コーヒー(トール)とあらびきソーセージパイ。パンは軽く温めてもらいました(著者撮影)

イチから店内調理される他のファミレスなどとは違い、あらびきソーセージパイはショーケースに入っていたもの。ですが、コンベアートースターで温めてあり、表面がほんのりと温かいのが嬉しい。サクサクプリプリという食感で、パン屋さんのパンのような本格的な味わいです。


さっくりしたパイ生地と粗挽きソーセージの間に、つぶつぶマスタードがアクセントの食べやすいお惣菜パンです(著者撮影)

数十円の値引きでもありがたい気分になるワケ

食べ終わったあとに、レシートをみると値引き額は税抜きで36円でした。

税抜き価格で記載されていてややこしいのですが、これを税込価格に換算すると、40円の値引きということになります。


サイズアップモーニングのレシートをチェックしてみました(著者撮影)

購入価格は正価なら税込742円なのが、サイズアップモーニングで注文すると税込702円なので、約5.3%安く購入できたことになります。


スターバックス ラテ(トール)とシュガードーナツ。そもそもドーナツ税込255円という設定も高い訳ではないが決して安くはない(著者撮影)

つれあいは、スターバックス ラテのショートとシュガードーナツでサイズアップモーニングを注文したのですが、こちらも値引き額は税込40円、710円が671円になり値引率は約5.5%でした。


シュガードーナツは大きめサイズ。ふっくら柔らかい生地で優しい味わいです。シュガーコーティング独特の食感も楽しい(著者撮影)

不思議なことに、こうやって数値化するとお得感が薄い。グランデをベンティにサイズアップした場合も差額は45円なのでそこまでお得という訳ではありません。

でも価格の問題じゃないんです。このとき私は確かに、いつもより1サイズ大きめのカップでコーヒーを飲んで、確かなお得感を噛み締めていました。

スターバックスのモーニングサービスのすごいところは「普段値引きのないスタバだからこそ、40円の値引きでもめっちゃ嬉しい、ありがたい気分になるところ」なのではないかと思うのです。

連載で訪れた店の中で、スタバが一番混雑していた

私が訪れたスターバックスは駅から徒歩10分ほどの、近所に牛丼チェーンやラーメン店、居酒屋などが軒を連ねる、賑わいのある立地です。

私はこの連載記事を書く際に、店の混み具合に触れるのですが、この日訪れたスターバックスは今まで訪れたどの店より混雑していました。平日の朝9時頃に店を訪れたのですが、オーダーカウンターは10人以上が並び、行列は店の外まで伸びていました。私も、15分ほど待ってようやく注文できたほどです。

ここに並んでいる人たちは誰もが、15分並んでも1杯350円のコーヒーを飲みたかったり、600円だか700円だかするサイズアップモーニングが食べたかったりするんだなぁと思うと、スターバックスってすごいなぁと感動すら覚えます。


トレイに乗せたパンと紙コップの写真なのになぜかおしゃれ。それがスタバマジック(著者撮影)

「安くはない、早くもない」を打ち消すスタバの魅力

もし牛丼チェーンで朝メニューで250円だか300円だかのたまごかけごはん定食を注文したとして、提供まで15分も待たされたら、ほとんどのお客は怒り出すでしょう。少なくとも私は腹を立てると思います。客席に座って待っているのにもかかわらずです。

なのにスターバックスの注文の列に、立って並ぶ人たちは文句一つ言わず、コーヒーを飲んだりモーニングを食べて、満足して機嫌よく帰るのです。

牛丼の人気店「吉野家」は「うまい、やすい、はやい」というキャッチコピーでおなじみですが、スターバックスは少なくとも「安くはない、早くもない」のに、その人気は衰えを知りません。

これは、スターバックスのポジショニング取りの絶妙さかなと思います。「並んででも、お茶したい」と思わせるブランド力がすごいのです。


おいしいコーヒーとショーケースに入ったパン、ドーナツのセットには、15分並んででも食べたいと思わせる何かがある(著者撮影)

スターバックスは黎明期、東京に集中的に出店するドミナント戦略をとることで、都会的なおしゃれカフェのシンボルとしてのポジションを確立しました。テレビCMをしなくても、新メニューは常にSNSやウェブニュースでとりあげられ、話題の的です。

そして、店舗数を拡大した今も、その特別さを失っていないのも特徴です。公式サイトによるとスターバックスは2022年9月末時点で、国内に1771店舗。けっこう多いと思いませんか? スターバックスのブランディングが、いかに絶妙かは伝わってくると思います。

すべてが「ちょうどいい」

そして、なんと言っても、スターバックスは居心地がいいんですよね。おしゃれすぎる店はイスが高かったり硬かったりするし、席間が広すぎると声が反響して、友人との会話を楽しみにくい。その結果、肩が凝る感じがして、居心地が悪くなってしまうものだと思います。


朝をスタバで過ごす……ただそれだけでテンションが上がるのだから不思議です(著者撮影)

でもその点、スターバックスは「ちょうどいい」。ほどよくおしゃれな内装に、ほどよく狭めの席間でテーブルが並び、ほどよく大きめな音量のBGM。

座り心地のいい椅子に座って、ざわめきの中に身を委ねながら、おいしいコーヒーを飲む時間の、なんともいえぬほっこり感に、顧客は並んででも利用したいと感じるのでしょう。


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(大木奈 ハル子 : ブロガー)