激闘来たる!カタールW杯特集

カタールW杯はついにベスト8が出そろい、準々決勝が行なわれる。ここまでの戦いぶりから各チームの様相も見えてきたが、はたして頂点に立つのはどこか。5人の識者に優勝予想をしてもらった。

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カタールW杯の頂点に立つのはどのチームか?

【かつてない接戦と見ている】

杉山茂樹(スポーツライター)

◎フランス 
○ブラジル 
▲ポルトガル 

 準々決勝に勝ち進んだ8チームの序列は以下のとおり。

 ◎フランス、○ブラジル、▲ポルトガル、△イングランド、△アルゼンチン、△オランダ、クロアチア、モロッコ

 しかし自信は全くない。かつてない接戦と見ている。本命フランスから6番手のオランダまで紙一重。どこが勝ってもおかしくない。

 本命に推すフランスだが、本当はブラジルのほうが強いのではないかと見るが、ブラジルが勝つ姿を想像することができないのだ。もっと言えば、ネイマールがヒーローになる姿だ。

 それと同じことはアルゼンチンにも言える。リオネル・メッシがヒーローになる姿を想像することができない。サッカーが進化するなかで、古典的なものの象徴であるメッシとネイマールを擁するチームは、割り引いて考える必要があると。

 その伝で行くと、クリスティアーノ・ロナウドが9番をつけるポルトガルも該当チームになるが、この選手はポルトガルのなかで半分お飾りのようなもので、調子が悪ければいつでもベンチに下げることができる。ポルトガル対フランスになると、相性的に僅かにポルトガルが優位に見える。

 準々決勝1番の勝負はフランス対イングランド。フランス有利と見るので、イングランドの扱いは下がる。だが、イングランドは安定感がある。フランスに勝てば、準優勝はありそうだ。アルゼンチン対オランダがその次の注目カード。創造的なプレーをするのはオランダだが、布陣が間延びする欠点を抱えているので、強く推せない。

【前回王者は地力が違う】

小宮良之(スポーツライター)

◎フランス 
○ブラジル 
▲アルゼンチン 

 大番狂わせが多い大会だが、ベスト8の顔ぶれは「順当」と言える。決勝トーナメント1回戦でスペインをPKの末に下したモロッコが、唯一のサプライズか。

 優勝予想の本命はフランスだろう。ポーランド戦は大会取材を続けるなか、最高のクオリティだった。ポーランドの整然と力強い守りを、キリアン・エムバペやウスマン・デンベレなど個の力で突き崩す様子は圧巻。

 カリム・ベンゼマがケガで大会を棒に振ったが、オリビエ・ジルーが健闘。中盤もポール・ポグバ、エンゴロ・カンテの不在は感じさせず、オーレリアン・チュアメニ、アドリアン・ラビオはより攻撃のテンポを作れる。

 バックラインの人材の豊富さは彼らのストロングポイントで、ロベルト・レバンドフスキも1失点に封じた。選手層が分厚く、フォーメーションもいくつもあり、王者は地力が違う。

 対抗はブラジルだ。フランスと並ぶ戦力を有している。スイス戦を取材し、驚くほどのインパクトはなかったが、守備が安定し、勝負強さも感じさせた。一方で、ブラジル特有の華やぐ雰囲気はない。ネイマールが全快したら、カナリア軍団のピースが揃うか。

 穴はアルゼンチン。チームとしてデザインされておらず、各々が奮闘する形で、極めて不規則と言える。しかし勝負どころを知る選手が、メッシと共に優勝するために全力を捧げ、奇跡的プレーも生み出している。メッシがワールドカップを掲げる、という絵は美しいはずだが......。

 個人的な興味はポルトガルである。ロナウドが先発を外れて騒ぎになるなどカオスだが、むしろそれがいい刺激になっている。スイス戦でハットトリックのゴンサロ・ラモスなどラッキーボーイも台頭。ジョアン・フェリックスも要チェックのファンタジスタで......。

 残り3試合勝てば、栄光のW杯。しかし、ここからの道が険しいのだ。

【フランス対ブラジルの決勝か】

原山裕平(サッカーライター)

◎フランス 
○ブラジル 
▲クロアチア 

 ここまでの戦いを振り返れば、フランスとブラジルの2強が、頭ひとつ抜けている印象だ。

 共にグループステージで一度敗れてはいるものの、すでに突破が決まっている状況での敗戦であり、不安視するほどでもないだろう。ラウンド16でもそれぞれポーランド、韓国を寄せつけず、堂々の勝ち上がりを見せている。

 より優勝に近いと考えるのはフランスだ。何もないところからゴールを生み出すエムバペは"チート"と呼べるレベルで、デンベレの突破力も脅威。縦志向のチームにクオリティをもたらすアントワーヌ・グリーズマンの存在も際立っており、彼らの攻撃に対抗するのは、もはや不可能にも思える。

 ネイマールが復帰したブラジルも隙は見られないが、破壊力ではフランスに劣るかもしれない。とはいえ今回のブラジルにはかつてない守備の安定感が備わるだけに、道半ばで足をすくわれることはないはずだ。この両チームが決勝で激突し、エムバペの一撃でフランスが頂点に立つ。そんなシナリオが浮かんでくる。

 穴はクロアチアか。ルカ・モドリッチを軸とする中盤の構成力は今大会屈指で、20歳のヨシュコ・グバルディオルを中心とした守備も強固。得点力に課題を抱えるものの、ロースコアの展開に持ち込めば勝機は高まるだろう。準々決勝でブラジルを突破すれば、奇跡のフィナーレが待ち受けるかもしれない。

【南米優勢、欧州劣勢】

中山 淳(サッカージャーナリスト)

◎ブラジル 
○アルゼンチン 
▲フランス 

 準々決勝に勝ち残った8チームを見ると、やはり下馬評どおりの強さを発揮しているブラジルが本命になる。大黒柱のネイマールが負傷離脱した時は暗雲が立ち込めたが、ラウンド16の韓国戦で無事復帰。俄然チームが勢いづいた印象を受ける。

 対抗は、ブラジルにとって宿命のライバルでもあるアルゼンチン。もちろんメッシの好調ぶりも好材料だが、フリアン・アルバレスという新スター候補の台頭など、前線の選手層もブラジルに負けず劣らずの厚さを誇る。順当に勝ち進めば、準決勝はブラジルと対戦するが、その試合が事実上の決勝戦と言っていいだろう。

 一方、元気のないヨーロッパ勢では、負傷によりレギュラーの約半分を失いながら、タレント王国ぶりを発揮しているフランスが有力か。心配の種は、ラファエル・ヴァラン以外は経験の浅い若手しかいないDF陣。しかもこれまで採用した可変式4−2−3−1では攻撃的な駒がピッチに多すぎて、互角以上の相手と対戦した場合あまりにも心許ない。ただ、ディディエ・デシャン監督には3バックのオプションもあるだけに、それが切り札となるかどうかがカギだ。

 いずれにしても、「南米優勢、ヨーロッパ劣勢」という構図に変わりはないだろう。

【メッシの有終の美のドラマ成るか】

浅田真樹(スポーツライター)

◎アルゼンチン 
○ブラジル 
▲オランダ 

 これまでの勝ち上がりを見れば、ブラジル、イングランド、フランス3強だろうが、ブラジルはメンバーを落としたとはいえ、カメルーン戦でミソがついてしまったし、負傷者続出で大会を迎えたフランスはいかにもエムバペ頼み。イングランドは豪華攻撃陣を擁するも、これから相手が強くなっていくなかでDFラインに不安が残る。

 そこで優勝予想の本命はあえて3強を外し、アルゼンチンとした。

 開幕当初はチームの機能性に欠ける印象を受けたが、試合を重ねるごとにまとまりが出てきた。単純にこれまでの出来を比較すれば、3強にはかなり見劣るが、逆に右肩上がりの状態にあると期待する。

 メッシのワールドカップ出場はこれが最後かもしれないし、これまでタイトルに縁がなかった"メッシのアルゼンチン"がコパ・アメリカに続いて優勝を手にし、有終の美を飾るというドラマはいかにもありそう。

 対抗は、3強のなかで一番バランスがよく、パフォーマンスが安定しているブラジル。穴には、コーディ・ガクポ、デンゼル・ドゥムフリースというラッキーボーイが出現しているオランダ。

 ここに挙げた3チームは同じ山に入っているので、いずれにしてもこの山を勝ち抜いて決勝に駒を進めたチームが、勢いに乗って頂点に立つのではないだろうか。