企画の面白さとは裏腹に一歩間違えるとハレーションを起こしてしまう難しさがある(左写真:ロイヤルホスト公式サイト、右写真:yama1221/ PIXTA)

TBSの「ジョブチューン〜アノ職業のヒミツぶっちゃけます!」で、「ロイヤルホスト」の「パンケーキ」に対するフレンチシェフの発言が「炎上」した。

「いちバラエティ番組」での「1人の発言」が、なぜこのような炎上騒動に発展してしまったのだろうか。

1つはテレビ番組の制作者と視聴者、そしてメディア(特にネット系メディア)とSNSの思惑と特性が絡みあっていることがある。

最近の「ジョブチュ−ン」は、大手ファミリーレストランやコンビニが自信をもって紹介する「人気商品」「人気メニュー」を、牋賣とされる瓮轡Д佞燭舛試食してジャッジをするという内容を放送している。

土曜日の19時から2時間、現在は3週間に1度くらいのペースで放送されている。

SNS投稿がメディア報道もあいまって拡散

今回「炎上」したシーンは、ロイヤルホストの「パンケーキ」について、フレンチのシェフが「家でも焼けるんじゃないか」「すごくケミカルな味」などと指摘。さらに高評価のカレーと比べて「パンケーキに関しては変えていったほうがいい」と感想を述べた。

そしてこれを聞くロイヤルホストの料理長らが、うつむく姿が映し出された。


ロイヤルホストのパンケーキは税込450円と庶民でも気軽に食べられる価格(写真:ロイヤルホスト公式サイト)

このシーンについて「実際に番組を見ていた視聴者」から、内容が辛辣ではないかという批判や、これを受けてロイヤルホストのパンケーキを応援するようなSNS投稿につながった。

そして、それらの投稿は「拡散」し、Twitterトレンドにも取り上げられた。

この拡散によって、今度はメディアがネット上で取り上げた。

メディアが取り上げたことで、この事案がさらに多くの人の目に触れることになり、「ジョブチューンで炎上」という図式になって広がった。

私が日本テレビでスポーツ局に在籍していた当時、ナイター中継への「苦情電話」が、毎試合、文字通り殺到していた。

苦情電話係の女性が10人ほどいて、鳴りやまない電話に応対をしていた。

内容は監督の采配や審判の判定をめぐっての苦情が大半で、放送局に言ったところで仕方がないものがほとんどだった。

きわどい判定シーンの後には、苦情係の対応では追いつかず、スポーツ局で仕事をしている私たちの電話も一斉に鳴り出すことも日常茶飯事だった。

1日にかかってくる苦情電話は、数百件以上だったが、それを称して牘蠑絖瓩隼愿Δ垢觚斥佞發覆った。

しかしSNSが普及した現在では、わざわざテレビ局に苦情電話を入れるまでもなく、自身の意見はTwitterをはじめとするSNSなどで発信することができる。

そして「苦情電話」であれば、テレビ局内部以外にその数や内容が広がることはない「ご意見」だったのだが、SNSではネット上で衆人環視のもとに可視化される。

この「可視化された批判」を、メディアが拾い上げて記事にする。

特に「テレビ番組に対する批判的な記事」は、ネットではアクセス数を稼げるコンテンツでもあって騒動に拍車をかける。

「番組を見ていなかった人たち」にも知られる

このようにして、「ジョブチューンでのシェフの発言」は、「実際に番組を見ていなかった人たち」に知られることになる。

そもそも「ジョブチューン」の世帯平均視聴率は6〜7%程度である。

失礼ながら「人気番組」と言うには及ばないだろう。

つまり多くの人は「見ていない番組」なのだ。

しかし「実際に見ていた視聴者」の批判的な投稿がキッカケで、「実際に見ていない人」を巻き込む騒動になった。

もちろん、炎上を招いたそもそもの要素として番組の演出にも少々再考すべき点はあるだろう。

“一流とされるシェフ”たちが、ファミレスの料理をジャッジする、という企画は面白いと思う。

しかし一歩間違えると、今回のようなハレーションを起こしてしまう。

ファミレスは多くの視聴者にとって身近な存在であり、そこで食べる料理も「親しみのある食べ物」である。

自分たちが日頃親しんでいるメニュー(今回はパンケーキ)が、シェフたちに褒められれば、視聴者も自分たちが食べているものが「肯定」された気持ちになる。

愛嬌のなさも相まって

ところが、自分たちが愛しているメニューがシェフによって「否定」されてしまうと、自分たちの「嗜好」まで否定された気分になってしまう。

また「努力している人を貶す」ことに、敏感に反応する人たちもいる。

そういった人たちがSNSで「ひどい内容!」と投稿をするのだ。

その「否定の見せ方」に少しでも「愛」「愛嬌」が感じられれば、視聴者は(気分は良くないけれども)一応エンタメとして受け入れるのだと思う。

しかし今回の「家のフライパンでも焼ける」に始まる発言と、それを見せるテロップの入れ方、編集の爛螢坤爿瓩砲蓮岼φ函廚魎兇犬襪海箸呂任ない。

この作り方での「否定」は、ロイヤルホストのパンケーキが好きな人には受け入れられないだろう。

自社のロングセラーへ厳しい言葉を受けた「ロイヤルホスト」側であるが、この放送の収録後にも番組に対して「放送をしないでほしい」といったアクションは起こしていない。

「ジョブチューン」のような番組では、事前に番組サイドとロイヤルホストの本社広報で詳細な打ち合わせを行っているはずである。

一方、ロイホ側も、出演協力をしている以上、これまでの放送を見て、番組の趣旨・内容を理解していたに違いない。

収録当日も、スタジオには広報の社員が立ち会っていただろう。

そのうえで、ロイヤルホストは「放送しても構わない」という姿勢だったはずである。

そこには、自社のシェフたちが真剣にメニューを開発していることを、番組で伝えられるという思惑もあったのだろう(広報担当も内心は腹を立てていたかもしれないが)。

しかし、「ジョブチューン」の番組スタッフやロイヤルホストの意図を超えて、「家でも焼けるパンケーキ」は牘蠑絖瓩靴拭この牘蠑絖瓩麓然発火したが、アクセスを稼げるツールとして、上手に利用するメディアによってさらに延焼した面もある。

「一方的に」「上から目線」、さじ加減は適切だったか

「ジョブチューン」では今年1月にも、コンビニのおにぎりを、見た目を理由に「食べない」というシェフがいて「炎上」したことがある。

牋賣とされる瓮轡Д佞、親しまれているメニューに厳しい論評をする内容は、視聴者から見れば専門的な話を聞くこともできて興味深いものだろう。

だが「一方的に」「上から目線で」、庶民的なメニューを酷評してしまうと、それは反発を招いてしまうのである。

「ジョブチューン」の制作スタッフは、その爐気顕淡梱瓩魎岼磴辰討い燭里任呂覆い世蹐Δ。

私はかつて、「中居正広のブラックバラエティ」という番組を演出していたのだが、少々キワドイかも、という場面ではナレーションやテロップに細心の工夫をして「エンタメの範囲」に収まるように心がけていた。

漫然とOAすれば牘蠑絖瓩靴討靴泙場面でも、「ナレーションひとつ」「テロップひとつ」の工夫で、避けることはできる。それは演出における大事な「肝」なのだ。

また今回のパンケーキを批評したシェフも、自らのSNSで出演の経緯を説明し、お詫びする一方で、「批判を誇張する演出は残念」と番組の「編集」について違和感を表明しているが、番組とコミュニケーションは取れていたのだろうか。

「ジョブチューン」に関しては、企画は面白いと思うだけに、炎上に対する予測力・危機管理力をさらに高める必要があるのではないか。

(村上 和彦 : TVプロデューサー、京都芸術大学客員教授)