奨学金制度といえば、お金に困っている人が利用するのでは…というイメージを持つひとも多いのではないでしょうか? 制度のことはなんとなくは理解しているつもりだけど、実際のところはどうなの? 『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社刊)の著者である千駄木雄大さんに、近年の奨学金制度について伺いました。

じつは2人にひとりが利用。今さら聞けない奨学金制度

「奨学金」というと、どんなイメージをもっていますか? お金がない人が利用するもの、借金をして学んでいる…など、ネガティブなイメージをもつ人も少なくはないのではないでしょうか? ところが、日本学生支援機構(以下、JASSO)が公表している「令和2年度 学生生活調査」によると、じつは今、奨学金を受給している学生の割合は「大学(昼間部)が49.6%、短大が56.9%」と、2人にひとりは借りている計算になります。
それほど、「奨学金を借りて大学に進学する」という選択肢が当たり前になりつつあるのです。そのため、昔と今とでは奨学金をめぐる状況は大きく変化しています。

●返済義務のない奨学金もある?

例えば、奨学金というと「学生時代に借りたら、社会人になってから返す」という、「貸与型」のイメージが強いですが、2017年にJASSOは返済不要の「給付型」奨学金を新設。これまで第一種(無利子)と第二種(有利子)の2種類しか選択肢がなかったところに、返済の義務のない「もらえる」奨学金という手段が加わったのです。

学生が自らの条件に適した奨学金を検索することができる「ガクシー」というサイトには、近年話題集めたメルカリの山田進太郎D&I財団の「STEM(理系)高校生女子奨学金」から、ダイソー財団や公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団など、さまざまな民間企業や財団が支給する給付型奨学金の情報が数多く掲載されています。

同サイトを運営する株式会社ガクシー代表取締役の松原良輔氏は、以前筆者の取材で現状の給付型奨学金の数について、「各大学独自のものや自治体のものを含めて8,500件ぐらいあります。そして、教育機関以外の民間企業や財団が支給しているものは確実に2000〜2500件。この民間企業や財団の奨学金は、私どもがまだ把握しきれていないだけであって、実際のところまだ1000件以上あるのではないかと思います」と語ってくれました。

●返済不要のお金をもらえる可能性は?

「そんなに、返済不要の奨学金があるの…。今の学生たちは恵まれているな」と、思ってしまいますよね。しかし、実際のところ、これらの給付型奨学金の募集要項をよく見てみますと、支給人数は「若干名」もしくは数十人程度。つまり、なかなか狭き門のようです。

他方で、JASSOの給付型奨学金の場合は「家庭の収入状況」が審査基準となりますが、民間や大学独自の給付型奨学金は「成績を重視」されることが多いため、極端に困窮している家庭の出身でなくとも、大学の成績さえよければ受給できる可能性は大いにあります。

実際に給付型奨学金を受給している現役の学生の中には「少しでも家計のたしになればと思い、応募しました」と答えた者もいました。

この学生は両親から大学進学の理解を得られず、進学のためには奨学金を借りることが必須だと考えていたようです。ところが、いざ入学して学内の掲示板やポータルサイトなども見てみると、40〜50ほどの団体が給付型奨学金を支給していることを知り、片っ端から申請したそうです。

とはいえ、やはり受給までの道はなかなか難しい…。いくら、「成績を重視」されるとはいえ、市町村や財団が支給している給付型奨学金は、世帯年収の低い家庭の学生を優先して採用するようです。前出の松原氏は給付型奨学金の申請については「親の所得制限や世帯年収の判断基準が厳しくて、しかも額面だけで判断されてしまう面がある」といいます。

それでも、この学生はめげずに大学が独自に支給している給付型奨学金に申請を切り替え、「下のきょうだいが受験を控えている」と申請の際に報告したことで、無事に受給することできたそうです。

このように、都内の有名私立大学などには、地方出身の学生のための、大学独自の給付型奨学金なども存在するようです。これまで筆者が取材した者たちの中で、そこまで世帯収入が低くない学生でも、こうした大学独自の給付型奨学金を受給することができたという話は聞きました。

根気よく受給できそうなものを探し続けていれば、返済義務のない奨学金をもらえることも不可能ではないということでしょう。

●奨学金の「利子」は住宅ローンよりも低い

とはいえ、給付型奨学金の支給人数は若干名というように、現在、奨学金を借りている者の大多数は利子つきの第二種です。「利子つき」という言葉だけを見るともっぱら「借金」というイメージが抱きやすくなりますが、貸与利率だけでいうと奨学金は0.3%程度(※利率固定方式)のため、低金利といわれている変動金利型住宅ローンよりも低いのです。

筆者はこれまで40名近くの奨学金を借りてきた人たちに取材をしてきましたが、「利息で苦労している」という話はほとんど聞いたことがありません。そのため、「第二種は借金だから」と思って借りることを躊躇している人には、「利息で将来、地獄を見る」ということはないと伝えられるでしょう。

これまで筆者が取材してきた人たちは、基本的に奨学金を借りたことで将来がなんとかなった人たちばかりのため、こうした見解は一元的だと思われるかもしれません。それでも、「奨学金は未来への自己投資」と、誇らしげに語る人たちが多かったという肌感覚はあります。

すでに進学前の予約採用は終わってしまいましたが、大学入学後も奨学金の申請は可能です。子どもと一緒に自らの条件に適した、奨学金の情報を探してみてはいかがでしょうか。