「かつて私の“ヒモ”だった夫。仕事がうまくいき収入が増えてから暴力的になりました」

 こう語るのは、45歳の女性・ルカさん(仮名)。夫のDVからアルコール依存に陥り、幻聴や幻覚に悩んでいる。それほどまでに苦しみながら、なぜ離婚できないのか。

 彼女に聞いた詳細を、全3回にわたりお届けする。

◆酒に溺れすぎて幻覚が見えるようになった

「何度も警察を呼んだし離婚も考えた。でもいろいろあり、一緒にいるしかない……日々の苦しみから逃れたくて私は毎日お酒を飲んでいましたが、半年ほど前に初めて幻聴と幻覚があり、怖くて精神病院に行ったら、アルコール依存症の診断でした。

実にいろんな幻聴と幻覚があります。こないだは、買い物から帰宅したら家のリビングのはじっこに、やせほそった少女が俯いて立っていました。夜、ベランダに出ようとカーテンを開けると、お向かいのマンションの屋上、うちより1階低いくらいのところに、ポーズをとったオブジェのような人が数人いるんです。
怖くてカーテンを閉じるんですが、どうなってるかなってソローリとカーテンを開けるたびに人の数が増えていく……。

寝室の壁のあたりでは玉置浩二の、マンションの下の階からはアンジェラ・アキの歌声が……本当に怖い毎日です」

◆彼の贅沢三昧のおかげで、貯金は底をついた

 ルカさんはフリーの編集者だが、最近は小学3年生の娘さんの子育てと家事で忙しく、現在はあまり仕事をしていない。3歳年下のご主人はイラストレーター。今は結構有名になり稼ぐようになったが、出会った15年前はまだ“食えなかった”そう。同棲して5年ほどで妊娠し、結婚した。

「私、大学卒業後に新卒で大手出版社に就職したんです。夫は、私が担当していたビジネス誌の小さな挿絵を担当していました。大学時代から私は独り暮らしでしたが“なにかあったときのために”と、コツコツ貯金をしていたんです。彼と知り合った30歳の頃には300万円以上は貯金がありました。“このお金で彼を養いながら、自分も作家になる夢を模索しよう”と退職して、同棲をスタートしたんです」

 いくら出版社出身とはいえ、すぐに作家になれるわけもない。ただ、編集の仕事は入るので、二人の生活費くらいは確保できた。しかし、彼の贅沢三昧のおかげで、貯金はあっというまに底をついた。

◆頼られること=愛情のような気がして、妊娠と結婚

「彼、稼げないのに“クリエーターはいいものを身につけなくちゃ”って言ってね。フェラガモとかアルマーニとか、当時から一流ブランドのものばかり欲しがる人でした。食材もオーガニックがいいとかね。うるさくてお金のかかる人で。でも私には仕事もお金もあったので、好きにさせていました。彼のイラストの感性にほれ込んだ弱みですね」

 彼に頼られること=愛情のような気がして関係は続き、妊娠して結婚。しかし彼は相変わらず稼げないし、毎日家にいるのに家事も育児もしない。すべてがルカさんのワンオペだった。当時はレギュラーの編集仕事も大量にあったため、文字通り“髪を振り乱して”汗水垂らす毎日だった。

「自治体の政策で、割と安くベビーシッターをお願いできたし、保育園にも運よく0歳児の時に預けられた。それでも仕事の時間は足りなくて、山のような“やることリスト”がなくならない毎日。彼はのんきにお金にならないイラストを描いてばかり。何度も“たまには手伝って”と言いましたが、ダメでした」

◆すでに夫への愛情は消えていたのに

 夫はずっと家にいるのに、娘を保育園に預けに行くのもお迎えもルカさん。夜は、終わらない仕事を気にしながらも夕飯を作ろうとするが、娘はワンワン泣きはじめる。なのに夫はのんきに「ご飯まだ?」と尋ねてきては、ゴミ出しひとつしない。もう彼女の精神状態はボロボロ。2歳で母乳をやめたあとには、もともと好きだったお酒をまた飲み始めるようになり、いつしか昼夜を問わず飲むようになっていった。