―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

 腕時計投資家、斉藤由貴生です。

 2022年も残り1ヶ月程度となった今、今年の中古腕時計市場ではどのようなことが起きていたかについてお伝えしたいと思います。

◆年明けから急上昇

 年明けともに、中古腕時計市場は、前代未聞なほど凄まじい「急上昇」という値動きになっていきました。人気モデルを中心に1月には多くのモデルが過去最高値を更新。実は、その前年の2021年の1月から3月頃までにも同じような「急上昇」が一部モデルに起きていたのですが、2022年のそれはそれとは比べ物にならないぐらい凄まじいものがあったといえます。

 例えば、パテックフィリップのノーチラス(5711/1A-010)は、2021年2月に中古最安値が初めて1000万円超えとなったのですが、2022年2月には2000万円超えという状態に達していました。

 このノーチラスの2000万円超えという水準は、それ以前の感覚からすると「驚き」だったわけですが、2022年はノーチラスに限らず、様々なモデルがこのようなびっくりする値動きとなっていた経緯があります。

 また、通常、各モデルの派手な変動は、短くても1ヶ月単位というケースが多いのですが、2022年2月頃までの場合、「数週間で数十万円の上昇」という動きが多々あったわけです。

◆3月頃から雲行きが怪しくなった

 しかし、3月になるとそういった値動きが鈍化。3月中旬頃までには、「2月水準よりも安い状態」となるモデルが出るなど、雲行きが怪しくなってきたといえた状態でした。

 ただ、その一方で3月になっても「値上がり」となるモデルが存在し、一概に「下落トレンド」とはいえないような複雑な状況となっていたといえます。

 そして、4月になるとさらに「値下がり」となるモデルが増えていったわけですが、その一方で、相変わらず「上昇する」というモデルも存在。この時期、腕時計ファンの間では「値下がりが目立つ」といわれていたようにも感じますが、私からするとモデルよって、「値下がり」「値上がり」「相場が変動していない」という状態が混在している複雑なケースという認識でした。

 これまでも「多くのモデルが下落する」といった下落トレンドの時期があったわけですが、そういった時期は、基本的に「値下がり」となるモデルが主。アベノミクス以降に起こった下落トレンドは、2016年夏から冬、2019年夏から2020年夏の1年間といったケースがありますが、いずれも、多くのモデルが軒並み“値下がり”するといった、分かりやすい状態だったわけです。今年3月のように、「値下がり」の一方で「値上がり」するモデルも存在するという状態は、この20年、私が中古腕時計市場を追ってきた中で初めてでした。

 ただ、その後は「値下がり」となるモデルが増えていき、7月頃までには「値下がり」となっているモデルが多数派という状態になっていたといえます。ですから、今年3月頃から見られるようになった「値下がり」の波は、ゆっくり進行していったといえます。

◆値下がりとはいえ

 ここで重要なのは、「値下がり」となったモデルの多くは、値下がりしたといってもその相場は2021年水準と比べると高かったという点です。値下がりしたモデルの多くは、今年2月頃までに急上昇した経緯があるため、下落といっても“2022年2月までの急上昇分がなかったことに”といった感じでした。

 ですから、多くのモデルは「値下がり」となった後でも、今年1月水準並という価格帯をキープしていたわけです。

◆7月頃からはもっと安くなった

 ただ、7月頃になると「2021年12月水準以下」となるモデルが、ちらほら見られるという状況に変化。それ以前よりも値下がりが進行してきたと感じられる出来事が起きたといえます。そして、8月になると、さらに「2021年12月水準以下」といったモデルが増えていき、ますます安くなっていったわけです。