ジェフ・フレッチャー氏が「得点が取れなかったことが最大の敗因」

 大谷翔平投手の所属するエンゼルスは8年連続でポストシーズン進出を逃している。日本の大谷ファンに不満があるとすれば、どれだけ二刀流が活躍しても、チームの勝利が遠いことだろう。大谷入団以降の5シーズンは、勝率5割に届いていない。米紙「オレンジ・カウンティ・レジスター」のエンゼルス番記者を10年連続で務めているジェフ・フレッチャー氏が分析した。

 フレッチャー氏は今年7月、著書「SHO-TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男」を日米同時発売。徳間書店発行の日本語版は既に6刷を重ね、4万5000部に及んでいる。このほど初来日し、26日に都内でトークイベントを開催。SNSなどで応募したMLBファン約100人が参加した。

 エンゼルスは今季も73勝89敗、勝率.451でア・リーグ西地区3位に終わり、プレーオフ進出にはほど遠かった。序盤は好調だったが、6月に14連敗を喫し大失速。フレッチャー氏はトークイベントの中で、「打線に怪我人が出て、打てる人がいなくなり、得点が取れなかったことが最大の敗因」と指摘した。

 大谷は投手として15勝9敗、防御率2.33をマークする一方、打者としても157試合で34本塁打95打点、打率.273と申し分ない働き。チームの顔であるマイク・トラウト外野手も故障に見舞われながら、119試合40本塁打80打点、打率.283と奮闘したのだが、2人が気を吐いただけでは足りなかったというのだ。

オフはウルシェラら続々補強で「彼らの打棒に期待する」

 そこで球団はオフに入り、ツインズからジオ・ウルシェラ内野手、ブルワーズから今季29本塁打のハンター・レンフロー外野手をトレードで獲得。フレッチャー氏は「彼らの打棒に期待する」とうなずく。

 しかし、エンゼルスの低迷は今季始まったわけではない。ワールドシリーズからはチャンピオンに輝いた2002年を最後に20年間、プレーオフからも2014年を最後に8年間も遠ざかっている。長期低迷には、もっと根本的な原因があるはずだ。

 フレッチャー氏はトークイベント終了後、「Full-Count」の取材に応じ「実はマイナーリーグの育成システムに問題があり、優秀な若手が育ってこないのです」と語り、「だからトップチームに怪我人が出た時、代わりになれる選手がいない。怪我人はどのチームにも出るが、選手層の厚さに問題があるエンゼルスは、他のチームなら埋められる穴を埋められない。そこが長年の課題です」と強調した。

 大谷は今年10月、来季年俸3000万ドル(約42億円)で1年契約を締結した。ペリー・ミナシアンGMは「大谷はエンゼルスで来季開幕を迎える」と断言している。それでも、来年の2023年オフにFAとなることから、来シーズン中に他球団へトレードされる可能性は払拭できない。フレッチャー氏も「(トレード期限の)7月にエンゼルスが低迷しているようなら、大いにありうる」と認める。いずれにせよ、チーム強化策を根本的に見直さない限り、プレーオフに絡む戦いを熱望している大谷を、来年オフFAとなった後に引き止めることは至難と言えそうだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)