世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”、稀代の読書家として知られる出口治明APU(立命館アジア太平洋大学)学長。世界史を背骨に日本人が最も苦手とする「哲学と宗教」の全史を初めて体系的に解説した『哲学と宗教全史』が「ビジネス書大賞2020」特別賞(ビジネス教養部門)を受賞。発売3年たってもベスト&ロングセラーとなっている。
◎宮部みゆき氏(直木賞作家)「本書を読まなくても単位を落とすことはありませんが、よりよく生きるために必要な大切なものを落とす可能性はあります」
◎池谷裕二氏(東京大学教授・脳研究者)「初心者でも知の大都市で路頭に迷わないよう、周到にデザインされ、読者を思索の快楽へと誘う。世界でも選ばれた人にしか書けない稀有な本」
◎なかにし礼氏(作詞家・直木賞作家)「読み終わったら、西洋と東洋の哲学と宗教の大河を怒濤とともに下ったような快い疲労感が残る。世界に初めて登場した名著である」
◎大手ベテラン書店員「百年残る王道の一冊」
◎東原敏昭氏(日立製作所会長)「最近、何か起きたときに必ずひもとく一冊」(日経新聞リーダー本棚)と評した究極の一冊
だがこの本、A5判ハードカバー、468ページ、2400円+税という近年稀に見るスケールの本で、巷では「鈍器本」といわれている。“現代の知の巨人”に、本書を抜粋しながら、哲学と宗教のツボについて語ってもらおう。

なぜ、デカルトは
スウェーデンで死んだのか?

 バルト帝国と呼ばれた全盛期の頃のスウェーデンは、クリスティーナ女王(在位1632-1654)の時代で、クリスティーナは学問や文化の振興に尽力しました。

 彼女はルネ・デカルト(1596-1650)に学問を学びたいと、何度か親書を渡しました。

 デカルトはパリまで出迎えたスウェーデンの軍艦に乗ってストックホルムに向かいました。

 それは1649年10月のことで、ストックホルムはすでに厳寒期に入ろうとしていました。

 加えて、クリスティーナは早起きが大好きな女王でした。

 デカルトは必ずしも丈夫な体質ではなかったので、早朝のレクチャーが負担になったのか、風邪をこじらせ肺炎を併発して、1650年2月に死去しました。

 人間の思想を神の世界からほぼ完全に独立させ、しかもその思想の力で神の存在証明を行った、近代哲学の祖といわれるデカルトも、北欧の魅力的な女王には弱かったのかな、という冗談が残されています。

デカルトを読み解くオススメの本

 デカルトの代表的な著書『方法序説』はいくつかの和訳が出版されています。
『方法序説』(谷川多佳子訳、岩波文庫、1997)、『方法序説』(山田弘明訳、ちくま学芸文庫、2010)の2冊を紹介しておきます。
他に『省察』(山田弘明訳、ちくま学芸文庫)、『哲学原理』(桂寿一訳、岩波文庫)もお薦めです。

『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。

 僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んだ全3000年史を、1冊に凝縮してみました。

(本原稿は、15万部突破のベストセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)