就職活動で有名な採用基準に、「学歴フィルター」が存在します。特に大学生の新卒採用では、候補者を短期間で大量募集するため「大学でふるい落とす」という目的のために使われてきました。人事コンサルタントの曽和利光氏が著書『人材の適切な見極めと獲得を成功させる 採用面接100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

近年人気の「スカウト型」採用とは?

■候補者を集めるより、適切なターゲットにしぼる

候補者をたくさん集めたのに入社に結び付かず、失敗する会社は多いです。がんばったのに成果が出ないのはなぜでしょうか。それは、間違ったターゲットに採用活動をしているためです。では、適切なターゲットをどう集めればよいのでしょうか。

近年、候補者集めが「オーディション型」から「スカウト型」へシフトしています。広告を出し、それを見た人が会社に応募するところから始まるのが従来の主流、オーディション型です。一方、候補者に会社からアプローチするのがスカウト型です。

オーディション型では候補者から応募してくれるので、あとは面接等を設定して評価すれば済みます。ただ、これは応募の見込める採用ブランドの高い会社なら有効ですが、知名度が低い会社では、応募してもらうこと自体が至難のワザです。

そうした事情から、スカウト型採用が取り入れられるようになりました。会社からアプローチするのでやや手間はかかりますが、広告だけでは来ない応募を待ち続けるより建設的です。加えて、声をかけてくれた会社に候補者は好感を持ちやすく、反応も悪くないことがわかってきたため、スカウト型は浸透しました。

スカウト型にはいくつか手法がありますが、社内リソースだけで手軽にはじめられるのがリファラル(「紹介」の意)採用です。社員や内定者に知人や後輩を紹介してもらい、接触していく方法です。新卒採用ではリクルーター制と呼ばれて昔からありましたが、最近は中途採用でも外資系企業やITベンチャーが取り入れはじめ、実効性の高さから広まっています。

この方法のネックは、実際のところ知人を紹介するハードルが高い点です。紹介した知人が選考で落とされるかもしれないわけですから、紹介者には精神的負担がかかります。効果的に行うには、紹介者を十分に動機付ける、紹介後は必ず会う、結果のフィードバックを怠らないなど、せっかくの紹介を大切にする丁寧な対応が必要です。

また、スカウトメディアという手法もあります。候補者が自分の情報をスカウトメディアに登録し、会社が検索して候補者に応募するので、「逆求人」とも呼ばれます。

活用のポイントは、人気の候補者ばかりを狙わないことです。属性や前職だけで検索すれば、誰もが狙う人材ばかりで採用競争が激化します。しかし、求める人物像から独自の検索キーワードを見つけられれば、他社と異なる人材にアプローチできます。また、候補者に合わせるスカウトメールを書くことも重要です。

このように、スカウト型は工夫さえすればブランドに関係なく、より自社に適した候補者を採用できるようになります。

ポイント
•スカウト型は、会いたい人に採用ブランドに関係なくアプローチが可能。

「学歴フィルター」は有効ではないのか?

■学校歴より学習歴、大学教育の今

採用(就職)活動で有名な採用基準に、「学歴フィルター」があります。特に大学生の新卒採用では、中途採用のように職歴がないことや候補者を短期間で大量募集する性質上、「集めたけど採る気の薄い候補者を在籍している学校でふるい落とす」という効率化のために使われてきました。

モラルの是非はともかくとして、これが合理的に行われてきた大きな理由に、日本の大学が「入難出易(入学は難しいが卒業は容易)」と見なされていることがあります。そこから転じて、入試で努力して入ったであろう高い学校歴=優秀と評価を結び付けやすかった背景ができたのです。

しかし、「学校歴」によるフィルタリングは、実のところそれほど効率的ではありません。同じ学校に通う学生間で内外の試験結果には大きな幅があることも多く、在学校名で個人の能力が保証されているわけではないからです。また、他の会社も同じようにフィルタリングすれば、採用競争が激しい候補者たちだけが残り、その後の採用難易度や辞退のリスクを高めることになります。

そこで最近では、GPA(Grade Point Average)がフィルタリングとして注目されてきています。GPAとは大学の各科目の成績平均のことで、注目されてきた背景として、近年進められてきた「シラバス厳格化」があります。大学の授業が「人材育成につながっていない」との各方面からの批判を受け、「きちんと授業に出て、知識やスキルを身につけないと単位にならない」授業内容や成績評価方法などへ変わってきているのです。これにより、現在の学生にとって授業は出なければならない「義務」となっているのです。

つまりGPAとは、目の前のやらなくてはならない義務に対し、学生がどのように取り組み、どのような結果を出しているかを評価したものとも言えます。

学生が高いGPAを取得するには、

•環境や課題に対して自分なりの目標を設定しセルフモチベートできる「意味付け力」

•やらなければならないことに対する「持続的行動力」

•テストやレポートなどアウトプットを想定し教員や授業の意図を俯瞰的に理解する「知的能力」

などの、会社が求めたがる素養が必要です。GPAは、人材を測る尺度として、より健全で機能しやすいフィルタリングと言えるでしょう。

ポイント
•学生をフィルタリングしないことは現実的には難しい。
•学校歴ではなく、学習歴として GPAが注目されてきている。
• GPA上位者は、会社が求めている素養を兼ね備えている。

曽和 利光

株式会社人材研究所 代表取締役社長