暗号資産交換所大手の米FTXが破綻したニュースは、ソフトバンクグループ(SBG)の株価が週初14日の東京市場で急落した要因にもなっていたはずだ。一時的には前週の終値を997円(14%)下回る、5956円まで下落した。ストップ安も想定されそうな勢いだった。

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 SBGがFTXに1億ドル(約140億円)ほどの出資をしていると伝わったから、投資家の間に悪い連想が広まったことと、11日の決算説明会でSBGが追加の自社株買いに触れなかった失望感が相乗的に作用したものと思われる。

 SBGは前週末の11日に、22年4〜9月期の最終損益が1290億円の赤字だったことを公表している。この決算が22年第1四半期決算を引継いでいることや、アリババ株の処分益が計上されることなども周知のことだったから、決算内容そのものに驚きは無かった。

 8月に発表された4000億円の自社株買いは、10月末にはすでにおよそ50%消化の勢いで実施されていた。1カ月換算で1000億円の自社株買いが実施された事になるから、残りの2000億円で10カ月をつなぐと考える投資家はいない。

 今回の決算発表に合わせて、6000億円規模で自社株買いが追加されることが、市場の暗黙の期待だった。そんな期待を裏切ったSBGに対して、投資家がきついお灸を据えたように見える。

 だが、自社株買いが予想されるから買われ、自社株買いの期待がなくなったから売られるというSBG株の有り様は、上場会社の中で特異な例だろう。通常株式は業績の向上(と期待されるから)により買われて株価が上昇し、時価総額が膨らんで存在感を増し、業績の低迷(と懸念されるから)により、売られて勢いを失うことが本来の姿だ。

 もちろん他の企業でも自社株買いは適時行われているが、SBGのように常態化と見間違うように運用されている企業はない。「余剰な株式を市場から回収して企業価値を高めて株主に還元する」という大義名分に何の問題もないが、投資行動の選択が「自社株買いの有無」によって左右されることは適切ではない。

 孫正義会長兼社長は、5兆円という超弩級の純利益を計上した21年の6月23日に開催された定時株主総会で、株主から「自社株買い以外では株価を上げられない」と指摘された。孫氏は「大概にして欲しい。株価は後からついてくる」と気色ばんだと伝えられたが、同じ年の11月に1兆円の自社株買いを発表しているから、同じ穴の狢(ムジナ)のようだ。

 SBGを自社株買いがなくとも株価が上がる会社にして、株主を納得させることが孫氏の使命だろう。