2021年12月、ZOZO元社長で起業家の前澤友作氏は、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在した。
前澤氏は、ISSから様々なチャレンジをした。
・自身のYouTubeやTwitterで宇宙での生活を報告
・「宇宙から全員お金贈り」企画の実施
・Uber Eats 史上初となる宇宙へのデリバリー
・ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長と電話

宇宙への旅は、ひと昔前までは国家プロジェクトだった。
しかし科学技術の進歩や企業の宇宙事業への参入で、民間でも実現できる時代が訪れようとしている。

宇宙旅行は、いまどこまで身近になってきているのか?
今回は、宇宙旅行や宇宙ビジネスの最新情報をお届けしよう。


■宇宙旅行のプランと費用
宇宙旅行は、下記の3つの体験に大別される。
・宇宙と地球の境界を眺める
・無重力を体験
・宇宙滞在を体験

〇ワールド・ビュー・エンタープライズ
ワールド・ビュー・エンタープライズは、宇宙と地球の境界を眺める宇宙旅行を提供する。
料金は、20〜30万ドル(約2,800〜4,200万円)。
ヘリウムガスを充填させた気球で高度30kmまで上昇させ、宇宙と地球の境界の眺めを楽しむ。

〇ブルーオリジン
Amazonの創業者ジェフ・ベゾス氏が設立した宇宙旅行を提供する企業であり、無重力を体験する宇宙旅行だ。
料金は、20〜30万ドル(約2,800〜4,200万円)。
同社は2022年8月4日(日本時間)、再利用型ロケット「ニューシェパード」で6名のクルーを宇宙へ送り出し、無事に地球へ帰還させた。

〇ヴァージン・ギャラクティック
英国のヴァージン・グループ会長 リチャード・ブランソン氏が設立した宇宙旅行企業だ。6人乗りの宇宙船で宇宙の境界線(高度100km)までを往復する宇宙旅行を計画中であり、約6分間の無重力を体験できる。
料金は、1人45万ドル(約6,300万円)。

ヴァージンは2021年7月、創業者のリチャード・ブランソン氏を乗せた試験飛行を実施したが、計画軌道を外れたことから連邦航空局(FAA)より調査が完了する2022年9月まで飛行停止の処分を受けた。

〇スペースX
イーロン・マスク氏が設立した宇宙開発企業。前澤友作氏が利用した宇宙旅行を提供しており、8日間の宇宙滞在を体験できる。
料金は、5,500万ドル(約77億円)。

宇宙船「クルードラゴン」で、国際宇宙ステーション(ISS)へ。ISSでは、各国の宇宙飛行士が仕事をしているが、旅行者は自由に過ごせる。

※1ドル140円で計算

〇日本の旅行会社
英語が苦手な人は、日本の旅行会社を利用すれば、スムーズに契約ができるだろう。
クラブツーリズムはヴァージン・ギャラクティックとの連携により、日本人向けの宇宙旅行を企画している。


クラブツーリズム「宇宙旅行クラブ」の公式サイト

エイチ・アイ・エスは、Space Perspectiveとの連携により、「Spaceship Neptune(スペースシップ・ネプチューン)」の日本とカナダでの販売権契約を締結している。

ASTRAXでは、ワールド・ビュー・エンタープライズとの連携により、「気球型宇宙船で行く成層圏宇宙旅行」の搭乗者を募集中だ。


ASTRAX×WORLD VIEWによる「気球型宇宙船で行く成層圏宇宙旅行」公式サイト


株式会社Kanattaは、株式会社SPACE NTKと株式会社エス・ティー・ワールドと共に、バルーン飛行の宇宙への旅について、日本での先行予約を2022年11月14日(火)に開始した。価格は、1人17万5,000ドル(約2,450万円)

「宇宙への旅・コンサルティング・パッケージ」には、バルーン飛行だけでなく、法的手続きの手伝いや、コンサルティング、自宅からのリムジン送迎、アメリカ国内での乗り継ぎアシスト、ラグジュアリーホテル宿泊、特別パーティなど、さまざまな内容が含まれる。


気球による宇宙旅行。2026年に実施予定。


■宇宙旅行のメリットとデメリット
宇宙旅行には、メリットとデメリットがある。

〇メリット
宇宙を間近に体験できる。美しい宇宙を眺められるし、旅行プランによっては無重力を体験可能だ。

〇デメリット
生命の危険に繋がる事故に遭遇する可能性がゼロではない。
また宇宙には、様々な放射線が飛び交っており、健康への影響も懸念される。
たとえば、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する宇宙飛行士は1日に0.5〜1.0 mSvの線量を被ばくする。これは地上での被ばく量の100倍以上に相当する。


■宇宙ビジネスは新しい市場
総務省が発表した「宇宙を拓くタスクフォース(第6回)資料」では、株式会社NTTデータ経営研究所が「長期的な宇宙ビジネス市場規模の試算」として、大手投資銀行による宇宙ビジネス市場の長期的な予測レポートが取り上げられた。
2040年代に全世界で1兆ドル(140兆円)以上に成長すると予測されている。

民間ロケット開発を推し進めているインターステラテクノロジズ株式会社をはじめ、ロケットの製造およびロケットの打ち上げの研究開発を行う企業も増えている。

結果、宇宙旅行も現実味を帯びてきている。
さらに今後は宇宙旅行だけでなく、宇宙に関連した多岐にわたるビジネスも増えてくるだろう。

メディア支援を事業としているINCLUSIVE株式会社は、宇宙関連事業の開発を目的とした宇宙事業開発会社「INCLUSIVE SPACE CONSULTING(ISC)」を設立。
人工衛星から得られるデータを活用した事業コンサルティングとソリューション開発を主軸に、人工衛星の事業を総合的にサポートする構えだ。


宇宙旅行だけを見れば、大きなコスト(価格)が最大の課題となる。
とはいえ、今後、再利用ロケットや衛星技術の進歩により、宇宙旅行の価格の低下の可能性は十分にある。

宇宙旅行が私たちの身近な旅行の選択肢となる日は、そう遠くないのかも知れない。

宇宙旅行の現状と未来予想|日程や内容、費用など宇宙ビジネスの今を解説
クラブツーリズム宇宙旅行クラブ
気球型宇宙船「ネプチューン」の日本・カナダでの販売権契約締結
宇宙を拓くタスクフォース(第6回)資料- 総務省




ITライフハック 関口哲司