人の心臓の大きさは握りこぶしほどと言われるが、損傷が酷く約3倍に肥大して摘出された心臓を“真空パック”にして保存している女性がいる。女性は今から約4年前、心臓移植を受けたことで普通の生活が可能になり、このほど『Truly』のインタビューで「私の経験をシェアすることで臓器移植について知ってもらい、同じ病気に苦しむ人たちの希望になれれば…」と胸のうちを明かした。

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ニュージーランド在住のジェシカ・マニングさん(Jessica Manning、29)が「先天性心疾患」と診断されたのは、生後3日のことだった。ジェシカさんの心臓の壁にはいくつもの穴が開き、弁が上手く機能しないなど6つの異常があり、3歳になるまでに2回の開胸手術を受け、両親は医師に「もって数年だろう」と告知された。

現在29歳のジェシカさんはこれまでに5回の開胸手術、2回のぺースメーカー植え込み術、そして肺の緊急手術を受けており、小さなものも含めると200回以上の手術に耐えてきた。「私の心臓は普通の人の半分の機能しかなかった」と語るジェシカさん。そんな彼女にとって人生の転機となる重要な手術となったのは、25歳の時に受けた心臓と肝臓の同時移植手術で、ジェシカさんは当時のことをこう振り返る。

「私は18歳で4度目の開胸手術を受け、ペースメーカーを埋め込みました。しかし19歳で心不全になり、22歳で肝硬変と診断されました。多くの人から当時『肝臓の病気になったのは不運だ』と言われましたが、実は長い間患ってきた心臓病の合併症でした。そして同じ時期、私は酷いインフルエンザに罹り、心臓と肝臓の同時移植リストに名を連ねたのです。ただ2つの臓器は1人のドナーから提供される必要があり、待機時間は通常よりも2〜3倍長くなりました。」

「『ドナーが見つかった』と電話があったのは今から約4年前、朝6時半のことでした。私が生き抜くためには臓器移植をするしかなく、連絡を受けた時はとても興奮しました。ドナーは55歳の女性で、医師はまず心臓から手掛け、その後肝臓が移植されました。20時間を要する大手術で、術後は心停止を起こしたり敗血症に罹るなど厳しい状態が続きましたが、集中治療室で53日間、一般病棟で14日間、心臓のリハビリセンターで21日を過ごし、なんとか乗り越えることができました。」

なおジェシカさんは摘出された心臓と肝臓をニュージーランドの大学に研究材料として提供しており、心臓が手元に戻ってきたのは手術から10か月後のことだったという。そしてそれ以降、古い心臓を真空パックにしてクローゼットの中に保管、「他の国と違って、ニュージーランドでは摘出した心臓をキープすることが可能なのです。保管している心臓はまるで、クッキー生地のようなんですよ」と笑い、こう続けた。

「実は心臓の重さは通常、約200〜280グラムで握りこぶしほどの大きさです。でも私の場合は、その約3倍の650グラム近くもあったのです。心臓が弱り肥大したためで、私の心臓病がいかに深刻であったかを象徴しているのです。」

ちなみにジェシカさんの胸から腹部には手術の傷痕がたくさん残っているが、「手術の傷は誇り。傷を人に見せることを躊躇することはありません」と語る。ジェシカさんは現在、自身の古い心臓をSNSで披露し、臓器移植についての質問に答えたり、臓器移植の大切さについて訴える活動をしており、「良いことも悪いことも含め、私の生の経験をシェアすることで、心臓病がどれほど深刻であり、人生にどれだけ大きな影響を与えるのかを知ってもらえれば嬉しい」と述べている。

ただSNSには「心臓を保管しているなんて気持ち悪い。いったいどんな奴なんだ」「新しい心臓を手に入れたということは誰かが死んだということだよね?」などといったネガティブなコメントが絶えないそうで、ジェシカさんは熱い思いをこう吐露した。

「嫌なことを言ってくる人は、私のそれまでの病気との闘いを知らないだけだと思います。だから私のこれまでの経緯を知って欲しいのです。」

「一方で、心臓病の子を持つ親が『あなたは私たち家族の希望よ』とコメントしてくることもあり、そんな言葉を励みにしています。だって私は、そういう人のために自分の経験をシェアしているのだから…。」

「私もそうでしたが、臓器移植を受ける人は必ず、恐怖を感じて怯んでしまう時があると思います。でもそんな時こそ、どんな小さなことでもいいからポジティブに考えることが大切なのです。なぜならその姿勢が、最終的にはいい結果につながるのですから。私はそうして生き続け、新しい心臓で素晴らしい第二の人生を手に入れたのです。」

そしてそんなジェシカさんには「なんて勇敢な女性なのだろう」「あなたはインスピレーション」「臓器移植は命の贈り物! 私も救われた一人」「強い気持ちを持ち続けて欲しい」「移植前とは全く別人のよう。輝いていて素敵だと思う」といったコメントが寄せられている。

画像は『Jessica 2022年5月1日付Instagram「The change is surreal」、2021年10月15日付Instagram「(Real conversation iv had with someone I hardly know)」』『jessica.elenanz 2022年10月14日付TikTok「Introducing myself & my siblings lol」、2022年7月2日付TikTok「#duet with @instituteofhumananatomy」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)