運転免許を持っている人の4人に1人が70歳以上

@beeboys/stock.adobe.com

日本では、人口の高齢化とともに高齢者ドライバーも増加しています。

内閣府の発表では、日本の総人口は1億2,617万人(2019年10月時点)となるのに対し、65歳以上人口は3,589万人です。

今後も引き続き高齢化は進むであろうと推測されていますが、「運転免許保有者の高齢化」にも注目しなければなりません。

日本全体での運転免許保有者数は8,216万人(2019年時点)となり、年齢層別に見ると70歳以上の保有者は1,195万人。実に総保有者数の約15%にあたります。1975年時点での70歳以上の保有者がわずか13万人であったことを考えても、約90倍も増加したことになるのです。

「運転技能検査」の新設で事故は防げる?

@Monet/stock.adobe.com

高齢ドライバーの割合が増加していることも踏まえ、国土交通省(国交省)では、2017年の道路交通法(道交法)改正に伴い、“認知機能検査”の結果に基づいて高齢者に対し安全運転教育を開始。

さらに2022年5月からは、75歳以上の免許保有者は、過去3年間に信号無視等の一定の違反歴があると「運転技能検査」を受けなければならないという法律に改正されました。

70歳以上となってくると身体の各所に衰えが出始め、車の運転にも支障をきたし、判断ミスなどによる事故が生じやすくなることは否めないでしょう。運転技能検査に合格しなければ運転免許証の更新ができません。

しかし、都市部から離れた地域では、移動手段で車を運転せざるを得ない高齢者も多くいるのを忘れてはなりません。

運転継続か免許返納か、本人や家族だけでは判断するのが難しい場合もあります。免許更新のタイミングや、違反が続くのを待っているだけでは、不測の事態が起こってしまう可能性も。

それ以外に、第三者からアドバイスをもらえる機会はないのでしょうか?

医療機関が行う「自動車運転外来」って何?誰のため?

@auremar/stock.adobe.com

そのような状況の中で、医療機関には「自動車運転外来」が設けられていることがあります。

本来、自動車運転外来は、病気や怪我などで手術を受けるなどした人々が、社会復帰を果たすと同時に運転感覚や能力を取り戻せるかどうか判断するためのものです。病気や怪我から再び車を運転し始められるようにするには、運転免許センターで判断可否を得なければなりません。

しかし、2017年に行われた道路交通法の改正に伴って、「高齢者ドライバーの認知機能や身体能力の低下も車の運転に影響を及ぼす」と指摘される風潮となったことから、現在では高齢者向けにも運転外来に対応している病院・医院もあるようです。

検査方法は病院・医院ごとに異なりますが、その一例が「作業療法士」による“自動車運転支援”です。

例えば、神奈川県相模原市の「さがみリハビリテーション病院」では、再び車を運転できるよう“自動車運転支援”の取り組みを行っています。病気や怪我の影響で身体の状態に不安がある人をはじめ、認知症・てんかんなどの道交法で“一定の病気等”として定義されている病気をもっている人が対象となるそうです。

検査内容は、視野・注意力・判断力をチェックする検査、受診者の情報を収集するための面接、ドライブシミュレータを使用した運転操作の確認が挙げられます。これらの検査から、医師による診断書を作成し、状況次第で公安委員会が実施している「臨時適性検査」の受講に向けた準備をサポートすることもあるとのこと。

さがみリハビリテーション病院ではこれらのサポート業務を完全予約制で受け付けています。電話もしくは直接来院する方法で、現在の状況が確認された人から運転支援を受けられる流れです。

第三者のアドバイスが、運転継続か免許返納かの判断材料に

@japolia/stock.adobe.com

高齢者でも、認知機能やその他に身体で気になる症状があれば、運転に支障が生じる可能性があります。本人に全く自覚はなくとも、年齢によっては脳神経系の病院・医院で診察を受けたり、相談したりするのがよいかもしれません。

さがみリハビリテーション病院の担当者は「病後に自動車運転を再開する際、免許センターに安全運転が可能かどうか相談して、可否判断を受けなければならないことを知らない方がまだ大半です。また、運転再開ではなく、免許返納という選択をいつとるか考えていただく機会も必要です。

運転能力の評価と医師による診断書作成を行い、免許センターで運転再開の可否判断への協力は継続していきますが、まずは現在の法律を理解してもらい、今後の自動車運転について考えていただく運転教育を重要視しています。

当院としては近隣医療機関へも働きかけ、この運転教育の考え方を広げていきたいと考えています。

高齢者ドライバーに関しても、認知機能低下を疑われるような変化に気づいた際には、ご本人・ご家族から近隣のもの忘れ外来などに相談していただきたいです」とのこと。

自動車運転支援は、あくまで「医療的な視点」から自動車運転にかかわる助言をするという内容になっており、支援を受ければ車の運転を続けられるという保証はありません。

しかし、これからも車を運転しなければならない理由がある人にとっては、今後も継続して車の運転が可能であるかを、第三者からアドバイスを受けることも重要でしょう。

©︎Monet/stock.adobe.com

1975年の時点では僅か13万人程度に留まっていた高齢ドライバーですが、半世紀近くが経過した2019年では1,000万人以上を超え、危機的な状況を迎えつつあります。

山間部などの地方では、人口減少に伴う利用者の激減で収益が見込めなくなったなどの理由により、鉄道およびバス路線の廃止が相次いでおり、車以外の高齢者の移動手段が奪われつつあるのが実情です。

一方で、国交省や自動車メーカーをはじめ、誰でも車に乗り続けられるよう、各方面での「自動運転」技術の底上げを図るべく研究開発が続けられています。それでも、完全自動化が施された車が実用化される目途が立っていませんし、当面はドライバーの運転操作が欠かせない状況が続くのではないでしょうか。

これからも運転を続けられるのか、ひとりで抱え込むのではなく周囲のサポートを求めるのもひとつの手段となるでしょう。自動車運転外来は表立っていないものの、ひとつの手段として存在しています。