貸与型中心だった日本の奨学金。しかし、昨今では「給付型」が増加しており、だからこそ「調べる学生」「調べない学生」の差は大きくなっています(写真:mon/PIXTA)

これまでの奨学金に関する報道は、極端に悲劇的な事例が取り上げられがちだった。しかし、さまざまな要素が絡まっている以上、制度の是非を単体で論ずるのはなかなか難しく、また「借りない」ことがつねに最適解とも言えない。そこで「奨学金を借りたことで、価値観や生き方に起きた変化」という観点で幅広い当事者に取材。高校生が今後の人生の参考にできるようなリアルな事例を積み重ねていく……。

そんな想いで始まった連載「奨学金借りたら人生こうなった」が『奨学金、借りたら人生こうなった』として書籍化され、10月30日に発売となる。本書では、連載で話題となったライフストーリー14編のほか、「奨学金報道変遷」「奨学金識者対談」「現役大学生座談会」から成る、約100ページもの書き下ろしを収録した。

本稿では書き下ろしの1つである「現役大学生座談会」から一部抜粋・加筆して前後編でお届けする。(前編はこちら

奨学金を借りたことで人生がどのように転ぶかは、その者の行動次第である。


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そして、奨学金を借りる/給付してもらう人の数と支給額は年々増え続けているが、学費の上昇、仕送り額の減少など、学生を取り巻く環境はますます過酷になっている。

そこで、本稿では現在進行形で奨学金を借りている現役大学生の座談会を実施。奨学金に対する思いや体験談を聞いていきたい。

[座談会参加者]
A…地方国立大学の理系学部、男子4年生
B…地方私立大学の看護学部、女子4年生
C…地方医療専門学校の理学療法学科、女子2年生
D…都内私立大学の文系学部、男子3年生

高校生の時から奨学金について知っておくべきこと

千駄木:2017年からJASSOが給付型奨学金を新設してから、同制度はさらに拡充されたと言われていますが、この中で給付型を受給しているのはCさんとDさんぐらいなんですね。

A:実は僕も給付型を申請したかったんですよ。

D:「実は」じゃなくて、みんな「もらえる」なら「もらいたい」ですよね。

B:私の場合は修学資金だから話は別だけど、返済義務がないのはうらやましく思います。

A:確かに、Cさんみたいに高校時代から、もっと早く給付型奨学金について知っておくべきだったなとは思います。というのも、大学入学後も申し込める給付型奨学金は結構あるんですよ。それを僕は全然調べずに、しかも、そういう存在があるということすら知らずに、大学に通っていますからね。

D:奨学金に関する報告ってキャンパス内の掲示板か、大学専用のポータルサイトやメーリスぐらいでしか情報が回ってこないんですよね。掲示板なんて誰も見ていないから、だいたい申込期限が終わっている。

A:そうなんですよ。

千駄木:連載でも、給付型奨学金をもらっている現役の大学生に話を聞いたことがあります。彼の場合、1年生の終わり頃に、企業や財団など民間の給付型奨学金があることを、大学のポータルサイトを通じて知ったそうです。40〜50もの団体の奨学金の募集案内が掲載されていて、それを目にしたときは「奨学金ってこんなにあるんだ」と驚いた……と語っていました。

A:自分も、調べてみたら1〜2年生でも申し込めたり、成績が良ければ申請できる奨学金もあると知ってからは、貸与型を借りていることもあって「もうちょっと早く存在を知っていれば、今よりも生活が楽になっていたのかもな」と思うこともあります。

千駄木:将来的な返済額も、給付型奨学金に採用されてれば百万円以上、少なくなる可能性もありますしね。自治体や企業・財団の奨学金は月額数万円程度ですが、数年給付してもらえれば、そこに生まれる差は本当に大きいと思います。

D:貸与型と給付型、両方借りている身からすると、情報収集は本当に大事。「成績上位者だけが選ばれる給付型奨学金」の情報をつかめば、それが勉強のモチベーションにもつながりますよね。勉強すればするだけ、お金がもらえるんですから。

A:部活で後輩たちが「給付型奨学金を受ける」という話をしていると、「そんな制度あったんだ」と思うこともあるし、自分だけが知らない間にクラスメイトたちが応募していたり、オリエンテーションで隣の席に座った子に「給付型奨学金の申請間に合った?」とか言われると、ちゃんと調べておけばよかったな、と常々思いますよね。だから、もう一度、高校生から今の大学に入り直して、自分の条件に合いそうな給付型奨学金について、もっと調べ直したいですね。

D:でも、条件面で合う給付型奨学金そのものがまず少なくて、学生課から手続きの申請書をもらうのも、結構煩雑。だから、これは嫌みではなく、仮にAさんが大学から申請していたとしても、途中で面倒になってやらなかったと思いますよ。

奨学金をめぐる環境は変わってきている

千駄木:ここまでの話を聞いていると、Dさんは結構、奨学金制度をいろいろと調べてきているようですね。

D:奨学金と言うと、JASSOから「借りる」と思われがちですが、今はもう民間企業や財団から「もらう」時代なんです。要は、企業が学生たちにお金を配っているんです。そういう給付型奨学金はたくさんあるのに、「多分申請には通らない」と思って、その選択を考える人は少ないと感じます。

A:事実、自分は一切そういう情報を知らなかったから、JASSOから貸与型を借りるに至ったんですよね。

D:例えば僕が今、受給している財団の奨学金は、大学が推薦してくれたものなんです。その財団が奨学金を支給する大学の大学生・大学院生の予定人数は全部で60人で、僕が通っている大学の推薦人数はたったの2人だったのですが、そのもうひとりの受給者とは相当仲良くなりましたよね。特にその人とは、別に学業などで競争したわけでもないのですが、一緒に闘ってきた同志というか……。ちなみに、その財団の奨学金の授与式では、同じ奨学金を受給している他大学の学生たちも集まっていたので、自然とコミュニティができて人間関係も広がりました。

「母子家庭のハンディ」は奨学金だけでは埋まらない?

B:自分も病院以外にも給付型の奨学金があることは知らなかったです。やっぱり、事前に奨学金について、知っているのと知らないのとでは、大学生活が大きく変わるんですね。


C:母子家庭の私からしてみれば、正直親の年収はそれなりにあるのに、給付型の奨学金をもらえるのは驚きでした。何事も知っておくことは大事なんですね。ちなみに、Aさんは私と同じ母子家庭ですが、高校でも奨学金は借りていたんですか?

A:僕は高校時代から高等学校等就学支援金と、高校生等奨学給付金をもらっていました。当然それには感謝していますが、結局「母子家庭のハンディ」は奨学金だけでは埋まらないと思うんです。

千駄木:それは、いわゆる「学習塾に行けなかった」ことなど、教育費をあまりかけられなかったため、周囲と感じるギャップですか?

A:僕は地元の公立の進学校出身なのですが、学校では教師による勉強のフォローはしてもらえずに、毎日ただただ学力テストでした。 だから、勉強のフォローが足りないと思った友人たちは、みんな予備校に通い始めるのですが、母子家庭の僕にそれは金銭的に無理でした。バイトも禁止でしたしね。一部の予備校には「特待生制度」もありましたが、それは東大や京大を目指す人しか入れてもらえませんでした。

C:母子家庭って、何をやるにしても誰かのサポートが必要ですよね。私の場合は母方の親戚が近所に住んでたから、みんなに助けてもらえましたけど、「教育費の経済的格差」というのは高校生でリアルに感じました。

本連載「奨学金借りたら人生こうなった」では、奨学金を返済している/返済した方からの体験談をお待ちしております。お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。奨学金を借りている/給付を受けている最中の、現役の学生の方からの応募も歓迎します。

(千駄木 雄大 : 編集者/ライター)