「Lemon」や「パプリカ」などのヒット曲を手がけたシンガーソングライターの米津玄師さん(31)。今や誰もが知る国民的アーティストの一人だが、ファンたちがこぞって訪れる「聖地」が愛知県にある。

西尾市にある地域、その名も米津町(よねづちょう)だ。米津さんと同じ名前を冠した駅や神社、和菓子店などがあり、2022年10月18日と19日に行われた米津さんの愛知公演では、多くのファンが足を運んだ。J-CASTニュースは米津町内にある「米津羊羹本舗」の店主・米津さんに話を聞いた。

米津駅...米津神社...町内スポットが「聖地」に

名鉄名古屋駅から急行に揺られること40分強。名古屋鉄道の赤い電車は、抹茶の名産地として知られる西尾市北部の「米津(よねづ)駅」に到着する。同駅がある西尾市米津町は、工場や住宅などが立ち並ぶ、一見「ごく普通」の町。しかし、とある人たちの間では、この町が「聖地」として認知されている。

「行ってきたよ米津駅!!!!!」「これから米津神社に向かいます」「めっちゃ米津米津Yonezuしてて幸せ」

SNS上でこうした投稿をしているのは、歌手の米津玄師さんを熱心に応援するファン、通称「米民」(よねみん)だ。米津さんの出身は徳島県徳島市だが、一部の米民は米津町内のスポットを「聖地」とし、わざわざ「巡礼」に訪れる人までいるのだ。

米民がまずやってくるのは、名鉄西尾線の米津駅。「米津」の駅名標を撮影してSNSにアップする人や、券売機で同駅からの切符を記念に買う人など、米民は様々な形で「巡礼」の証を残している。

町の中心部にある「米津神社」にも多くの米民が訪れる。今月18日、19日に米津さんのツアー「米津玄師 2022 TOUR」の愛知公演が日本ガイシホール(名古屋市)で行われると、それに合わせて神社を訪れる米民たちが続出。SNS上ではお守りを買う人や、米津さんのツアー成功を祈願する人などがいた。今春には、チケット当選の願いを絵馬に書き込む人もいたようだ。

そして、町の和菓子店も「聖地」の一つだ。北海道産小豆を使った「米津羊羹」(税込み540円)が名物の「米津羊羹本舗」は、明治元年(1868年)創業の老舗。5代目店主は店のツイッターアカウントを通じ、米民とコミュニケーションを取っている。

「米津ファン」の「米津さん」営む「米津町」の「米津羊羹本舗」

10月20日、自身も米津さんのファンだという店主に、電話で話を聞く事が出来た。店主によると、米津さんのメジャーシーンでの活躍により米津神社を訪れるファンが増えてきたことで、米津さんのツアーグッズを店に置き、ツイッターで神社の情報を発信するなどの施策を実施。その成果もあり、店の存在が米民の間で認知されるようになったという。

そして18日と19日に行われた米津さんの愛知公演では、米民の注目を一挙に集めることになる。18日は本来ならば定休日だったが、「羊羹を買いたい」という遠方のファンの要望に応え、店を特別に開けた。さらに19日、ライブが終わった20日には米民が羊羹目当てに押し寄せ、両日ともに昼過ぎには店を閉めるなど、想定以上の盛況ぶりだったとした。

ちなみに、取材に答えてもらった店主の氏名は米津眞一さん(以下、眞一さん)。「米津町」で「米津羊羹本舗」を営む、「米津ファン」の「米津さん」なのだ。

眞一さんによると、現在の米津町周辺は徳川家に仕えた米津家が拠点としていたことから、米津姓の家が多いという。実際に名字情報サイト「名字由来net」で調べてみると、愛知県には全国最多となる約1800人の「米津さん」が在住。そして、そのうち約800人が、米津町のある西尾市に住んでいるのだ。眞一さんの先祖も、代々「米津」を名乗ってきた。

「米津繋がり」に運命を感じ、初期の代表曲「アイネクライネ」のミュージックビデオが公開された14年春頃から米津さんを追いかけてきた眞一さん。米津さんはその後、「打上花火」(17年)、「Lemon」(18年)、「パプリカ」(同)などのヒット曲を手がけ、誰もが知る国民的アーティストになった。今では、店を訪れた米民から、米津さんのファンアートや自作グッズをプレゼントされることもあるという。

眞一さんは米民に向け「今回のツアーでびっくりするほどお客さんがいらっしゃいましたが、(スタンスは)今まで通りで続けたいと思います。田舎町にわざわざお越しいただけることも大変ありがたいです。いつでもお待ちしております」と語った。