高額な月額を払ってでもDAZNを見ようとするコアなファンはともかく、大半を占めるその他の一般的なファンにとって、この天皇杯はどう映るだろうか。J2の18位チームである甲府の優勝に何を感じるだろうか。大番狂わせに感激しても、甲府が抱える問題には気づきにくいだろう。

 日本のサッカー界において、サッカーという競技の全体像をどう伝えるかという視点に立てる人は少ない。NHKでさえ天皇杯の共催者としての立場を優先させたように見えた。甲府の矛盾点について指摘することは、優勝に水を差す行為だと考えたのだろう。

 甲府という地方都市のクラブが天皇杯を制すことは、快挙であることに間違いない。まさに美しい話である。しかし、甲府本来の立ち位置はJ1昇格を狙うJ2の強豪だ。それがJ3降格圏にほど近い18位に沈む現実を黙認するのは嘘臭い。無理を感じる。

 J2で甲府は直近11試合、勝ちがない。7連敗中でもある。ボロボロの状態にあるチームが、なぜ天皇杯では、アビスパ福岡(準々決勝)、鹿島アントラーズ(準決勝)、広島(決勝)を、次々に破り、頂点の座に就いたのか。これもまた謎であるが、この甲府の優勝を語る時、この視点だけでは不十分だ。

 22日(土曜日)には、ルヴァン杯決勝が行われる。こちらも地上波(フジテレビ)で生中継される。その翌週にはJリーグの33節が行われる。横浜F・マリノスが勝ち、川崎フロンターレが敗れれば、横浜FMの優勝が決定する。天皇杯、ルヴァン杯、J1のチャンピオンが立て続けに誕生する。

 報じるメディアは、それぞれをしっかり差別化できるか。ステイタスの違いを表現できるか。3冠という言い方を迂闊に使えば、ステイタスが断トツに高いJ1優勝は霞む。シーズン終盤に向け、焦点がぼやけないことを期待したい。