各企業で「トップ5%」の人事評価を受ける人材に共通する行動習慣をAI分析で明らかにしたクロスリバー代表の越川慎司さんは「この5年の変化のスピードはすさまじいものがありました。20代、30代はこれからのキャリアに大きな不安を抱えていますが、今や最大のリスクは“何もしないこと”です」という──。(第1回/全5回)

※本稿は、越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■20代後半にやってくる「大きな転機」

マイクロソフトの役員を2016年に“卒業”し、働き方改革を支援するコンサルティングチーム・クロスリバーを起業してから、5年間で800社超、総計17万人の変革を支援してきました。また、合わせて4つの大学・専門学校で、学生に対してキャリア開発の授業を行ってきました。

就職を控えた学生や入社間もない若手社員は、希望と期待に満ち溢れ、目をキラキラと輝かせて共に活動してくれます。20代のパワーに触発されて、私自身のモチベーションも否応なく高まります。

ところが、20代後半になると元気がなくなる若者が多いのです。また、転職や社内異動、留学や起業の相談が増えるのは、30代を迎える直前が圧倒的です。

「このまま30代を迎えても大丈夫でしょうか?」
「このままで私のキャリアは大丈夫でしょうか? 不安です」

写真=iStock.com/Mananya Kaewthawee
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mananya Kaewthawee

■「安定」という幻想

最近の20代、30代は、固定観念や常識に縛られて、目の前で起きている変化をネガティブに捉えてしまう傾向があります。

それ以前の時代を生きた親世代の影響を受け、「安定した人生を送るためには、よい大学に入って、大企業に就職し、キャリアアップをする必要がある」という思い込みがそこにはあります。

親世代は、確かにそれでギリギリ生き抜くことができたかもしれません。しかし、世の中の変化は確実に進んでいます。とくにここ5年の変化はすさまじいものがあります。

過去の環境にアジャストした古い常識では、残念ながら新しい環境を生き抜いていくことは不可能です。

変化を前向きに捉える人は、行動力に長けています。一方で、マイナスに捉える人は、新たな行動をみずから抑制してしまいます。行動しなければ学びを得ることはなく、また、学びを得ても実践しなければ自分のものにはなりません。

私がいま行っているのは、そんな若い世代の「思い込み」をポジティブな解釈に変えるべく、“マインド・スイッチ”を切り替えるお手伝いです。

写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

■変化におびえる必要はない

あなたに伝えたいのは、変化におびえる必要はない、ということです。いま進んでいる社会の変化は、間違いなく、あなたのこれからの人生をポジティブな方向へと押し進めてくれるものです。

これから日本では、少子高齢化による人口減少で、テクノロジーの進化・浸透に弾みがつきます。

「AI(人工知能)が人間の仕事を奪う」という“論者”がいますが、けっしてそのようなことはありません。AIをはじめとしたテクノロジーによって、働く環境は大きく改善されます。「人間にしかできない仕事」が明確になり、自分の意思で仕事を選べる社会になっていきます。

来る未来に向けて、現状起きつつある変化を前向きに捉え、「いま何をすべきか」を自分なりに冷静に判断していくことが大切です。

■不安と不満はなくせないが、変化はできる

20代、30代からは、就職や転職についての具体的な相談もよく受けます。

不安と不満をなくすことはできません。しかし同時に、自分の捉え方、受け取り方次第で、それらを満足にも安心にも変化させられることを私は知っています。また、不安と不満をなくすことにエネルギーを傾けても、満足や安心につながることがないことも知っています。

そもそも不安と不満はマイナスの要素であり、それを取り除いたとしても満足や安心には変化しません。満足はプラスの要素ですから、ただマイナスの要素を取り除くだけではゼロになるだけで、そこにプラスが生まれることはないのです。

就職や転職に成功している人たちは、ネガティブな感情があったとしても、常にそれ以上に冒険心とワクワク感を持ち続けています。悲観思考を持ちつつ、楽観主義ベースで実践する。行動を起こす。

それがバランスの取れた人生戦略です。

■最大のリスクは「何もしない」こと

私自身、5年後10年後の社会に具体的にどのような変化が起きているか、すべてがわかっているわけではありません。しかし、「変化に対応する力」をつける、という観点から、経営者とコンサルタント両方の立場で行動実験を積み重ねてきました。

越川慎司『29歳の教科書』(プレジデント社)

マイクロソフトを卒業してからは、週休3日や複業という働き方、知識や経験の積み重ね方など、さまざまな行動実験を5年以上行いました。

社会環境が大きく変わる中で、今後最もリスクの高い行動は「何もしない」ことです。また、いきなり大きな成果を目指すこともお勧めしません。

大きな変化を起こすために、むしろ日々の小さな行動実験を積み重ねること、自分に実践可能な「行動の選択肢」を増やしていくことが必要です。

20代ではさまざまな技能(スキル)を吸収することに注力し、苦しい経験を積み重ねることをおそれてはなりません。そして、30代で飛躍するのです。

■歳を取ることをおそれる必要はない

昨今は、50代以上の世代を「働かないおじさん」などと揶揄(やゆ)する言説も一部で見受けられます。

しかし、歳を取ることを必要以上におそれる必要もありません。いまこの瞬間の20代、30代のアクションが、また、それがもたらす自己変革が、40代、50代以降の未来を作ります。

かつての世代は、同じように新卒一括採用で“就社”し、その会社で出世レースを繰り広げました。

終身雇用で外の世界を知ることもないままに、いつしか年齢的に退職金や年金が頭にちらつくようになり、どこにも行けないままビジネスキャリアを終えました。みずからの限界に挑戦することも、経験値を高めて最大レベルまで到達することもありませんでした。

■これからは「オープンワールド」を生きる

しかし、いまを生きる20代、30代は違います。

まるでロールプレイングゲーム(RPG)の世界の「オープンワールド」のように、これからのビジネスシーンは会社や業界、国境の壁がなくなります。

ゲームという仮想空間ではなく、ビジネスという現実世界において、時間的、空間的な制約はなくなります。プレーヤーであるあなたが自由に探索し、目的に到達できる、文字通りのオープンワールドを生きることになるのです。

■不安はあっていいが、挑戦をやめる理由にしない

飛躍しようとジャンプを試みる際に不安を感じるのは、20代に限りません。大きなジャンプをするには少ししゃがむ必要があり、そのときに「飛べるのか⁉」と誰でも不安になるものです。

リスクのない挑戦はありません。その見えないリスクに不安を感じるのは当然です。不安だからといってジャンプを止めてしまっては、成長はありません。

これからさらに成果を残したい方、自分が主役のキャリアを構築したい方、新たな挑戦をしようと思っているものの不安で身動きが取れない方に、前へ進む勇気を与えるコンテンツを届けたいと、今回『29歳の教科書』を書きました。

社会と自分の変化を楽しみながら、広大なフィールドを一緒に進んでいきましょう。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。
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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)