緑内障の進行には、食事や運動、生活態度が大きく関係しています。緑内障を悪化させないためには、何に気をつければよいのでしょうか? メディアでお馴染みの眼科専門医・平松類氏の著書『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)より、「緑内障にいい栄養素」を紹介します。

本稿を読む前に…

本稿ではQ&Aの根拠となる論文のエビデンス(科学的根拠)レベルをABCに分け、参考程度にとどめていただきたいDもふくめて評価しています(図表1・2参照。簡易的に分けているのであくまで目安とお考えください)。

[図表1]本稿のエビデンスレベル(著者作成) 出所:平松類著『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)

[図表2]7つのエビデンスレベル(著者作成) 出所:平松類著『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)

Q1. 目によいとされるブルーベリーは緑内障にもいい?

⇒A. 緑内障への作用は期待できません。目の疲労が改善する程度です。

【エビデンスレベル:C】

ブルーベリーは目によいといわれています。たしかに、ブルーベリーにふくまれるアントシアニンという成分は老化を防ぐ抗酸化物質の一種です。人間の身体は加齢や紫外線などによってダメージを受けています。これを酸化といいます。抗酸化物質には身体を酸化から守る作用があり、その多くが食べものなどからとり入れられます。しかし、アントシアニンは目にだけ集中するわけではなく、全身を巡ります。したがって結果的に、目にいきわたるアントシアニンは摂取量の一部となってしまうのです。

とはいえ、全身の加齢を防ぐ作用はあるといえます。ブルーベリーを好んで食べる分には問題ありませんが、患者さんの中には無理をしてまで摂取する方がいます。そういった方には「そこまでがんばる必要はありませんよ」とお話ししています。

では、緑内障についてはどうでしょうか? 残念ながらブルーベリーにふくまれるアントシアニンについてはわずかな研究があるものの、今のところ注目すべきものはありません。現在のところ眼精疲労などに対して作用があるかどうかという程度です*1。ブルーベリーが目によいといわれるようになった歴史的な経緯についてはYouTube動画で解説しているので興味のある方はご覧ください。

では、緑内障によい栄養素にはどんなものがあるのでしょうか? これについてお話しできればと思います。

*1 Shim SH, et al. Ginkgo biloba extract and bilberry anthocyanins improve visual function in patients with normal tension glaucoma. J Med Food 2012;15(9):818-23. doi: 10.1089/jmf.2012.2241. Epub 2012 Aug 7.

Q2. 目によいとされるルテインは緑内障にもよい?

⇒A. ルテインは目に集中して届くので、目の健康全般におすすめです。

【エビデンスレベル:A】

「ルテインが目によい」と最近よくいわれます。ルテインとはどんな成分で、なぜ目によいといわれるのでしょうか? ルテインは、前項でお話ししたアントシアニンと同じ抗酸化物質の一種です。体内にとり入れられたアントシアニンの一部しか目に届かないのにし、ルテインは目に集中して届きます。また、ものを見る役割を担う黄斑部や水晶体にもふくまれ、目の老化を防ぐ作用もあります(図表3)。
 

[図表3]ルテインは目の黄斑部や水晶体にも含まれる 出所:平松類著『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)

ルテインを日常的に摂取することは目を守るという意味でも重要です。目にふくまれるルテインは40歳辺りから減ってくるので、とくに40歳以上の人は積極的にとることをおすすめします。

そこで、ルテインがよくふくまれる食べものとしておすすめしたいのがホウレンソウです。1日にホウレンソウ2株程度(ルテイン6〜10mg)を目安に摂取するとよいでしょう。最初のうちは毎日この量を摂取し、1ヵ月くらい経った段階で週3回程度に減らしても問題ありません。なぜなら、身体の中のルテインは一度充足すると多少期間をおいても減らないからです。ただし、尿管結石のように体内に石ができやすい人はホウレンソウではなく、サプリメントなどでとることをおすすめします。

一方で、緑内障では「ルテインが視神経の保護に役立っている*2」というにとどまっています。なぜでしょうか? 視神経にダメージが加わると軽い炎症が起きますが、ルテインにはその炎症を抑える作用があるといわれています。ただ視野欠損を抑えるという研究はなく、緑内障への作用は未知数なところがあります。とはいえ、目の病気は緑内障だけではありません。白内障や加齢黄斑変性などさまざまな病気を予防するためにもルテインの摂取はよいことです。

*2 Lem DW, et al. Carotenoids in the Management of Glaucoma: A Systematic Review of the Evidence. Nutrients 2021;13(6):1949. doi: 10.3390/nu13061949.

Q3. 緑内障によいビタミンはありますか?

⇒A. 暗いところでものを見る際に重要になるビタミンAと身体の酸化を防ぐビタミンCをおすすめします。

【エビデンスレベル:A】

ビタミン類は身体に必要な栄養素です。どのビタミンが足りなくなると緑内障によくないのか? それはビタミンAとビタミンCです*3(図表4)。ビタミンAの一種で、目に関係する成分としてはレチノールがあります。これは目から入る光の反応に関係する非常に大切な成分です。とくに暗いところでものを見る際に重要になります。

[図表4]ビタミンA・ビタミンCを多くふくむ食べもの 出所:平松類著『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)

昔は栄養不足から夜間にものが見えにくくなる人がいました。現在でも偏った食事やダイエットなどによってビタミンAが足りない人がいます。普段からビタミンAを適切に摂取しておくことは緑内障にとってもよいといえます。注意点としては、ビタミンAは脂溶性なのでとりすぎると体外に排出できなくなります。サプリメントで摂取する際はとりすぎに注意してください。

ビタミンAを多くふくむのは、うなぎ・にんじん・ホウレンソウなどです。にんじんは古くから目によい野菜といわれていますし、ホウレンソウにはビタミンAのほかにルテイン(前項)などの目によい栄養素が豊富にふくまれています。油で炒めると栄養素が体内に吸収されやすくなるので、にんじんとホウレンソウの炒めものなどはおすすめです。

一方、ビタミンCには老化を防ぐ抗酸化作用があります。加えて、ビタミンCは水溶性なのでとりすぎても体外へ排出されるため安心です。注意点としては一度に大量にとるのではなく、毎日摂取することが大切です。

ビタミンCがよくふくまれている食品はレモンが有名です。そのほかにくだもの全般やブロッコリー、ホウレンソウなどにもふくまれています。とはいえ、ビタミンCは加熱すると壊れやすい成分なので生のくだものなどを食べるほうがおすすめです。ビタミン類をしっかりととっている患者さんは緑内障も悪化しにくい実感があります。やはりバランスがよい食事は大切です。

*3 Ramdas WD, et al. The Effect of Vitamins on Glaucoma: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients 2018;10(3):359. doi: 10.3390/nu10030359.

Q4. 緑内障によいサプリメントはありますか?

⇒A. 「これ!」というものはありませんが、治療のサポートになるものはあります。

【エビデンスレベル:B〜C&D】

「緑内障にこれは効く!」と強くいえるほどのサプリメントはありません。現状「作用があるのでは?」といわれているのが、国内ではサンテグラジェノックス®、カシス-i®というサプリメントです(図表5)。

[図表5]サンテグラジェノックス®、カシス-i®とカシス-i®EX

国外で販売されているサプリメントもいくつかありますが、国内のものを超えるほどの作用はないので積極的にはおすすめしていません。安全面と品質が不安定であることもその理由です。

では、具体的にどういう作用があるのでしょうか? 研究では、カシスは「視野欠損の進行を抑え、眼圧を下げる作用*4,5(⇒エビデンスレベルB)」が確認されています。またサンテグラジェノックス®の主成分である松樹皮エキスとビルベリーエキスは「眼圧を2〜3mmHg下げ、血流改善の作用もあった*6,7,8,9(⇒エビデンスレベルD)」と報告されています。ただし、対象者の約半数の人にのみ認められた作用で、しかも少数例のデータのため参考程度にとどめたほうがよさそうです。

サプリメントの作用をまとめると「視神経の保護作用があり、視野障害をある程度止める可能性があること」「眼圧の下降作用もわずかながら期待できる」ということです。つまり、目薬をはじめとする通常の治療をやめるほどのものではありません。サプリメントの摂取は、普段からビタミンやタンパク質などがふくまれたバランスのよい食事をしっかりとしたうえで余力があればとり入れるという位置づけです。あくまで治療後のサポートとして考えてください。

また、サプリメントの作用に関する研究についてはYouTube動画でくわしく解説しているので、興味のある方はご覧ください。ここまで、緑内障と食事・栄養の関係について見てきましたが、健康診断などで異常があると体重や食事の注意点について説明を受けることがあります。緑内障ではどうなのかについてくわしくお話しできればと思います。

*4 Ohguro H, et al. Effects of black currant anthocyanins on intraocular pressure in healthy volunteers and patients with glaucoma. J Ocul Pharmacol Ther 2013;29(1):61-7. doi: 10.1089/jop.2012.0071. Epub 2012 Oct 9.

*5 Ohguro H, et al. Two-year randomized, placebo-controlled study of black currant anthocyanins on visual field in glaucoma. Ophthalmologica 2012;228(1):26-35. doi: 10.1159/000335961. Epub 2012 Feb 22.

*6 Nakanishi-Ueda T, et al. Inhibitory Effect of Lutein and Pycnogenol on Lipid Peroxidation in Porcine Retinal Homogenate. J Clin Biochem Nutr 2006;38(3):204-10. https://doi.org/10.3164/jcbn.38.204.

*7 Manabe K, et al. Effects of French maritime pine bark/bilberry fruit extracts on intraocular pressure for primary open-angle glaucoma. J Clin Biochem Nutr 2021;68(1):67-72. doi: 10.3164/jcbn.20-50. Epub 2020 Jul 10.

*8 Steigerwalt RD, et al. Effects of Mirtogenol® on ocular blood flow and intraocular hypertension in asymptomatic subjects. Mol Vis 2008;14:1288-92.

*9 Gizzi C, et al. Mirtogenol® supplementation in association with dorzolamide-timolol or latanoprost improves the retinal microcirculation in asymptomatic patients with increased ocular pressure. Eur Rev Med Pharmacol Sci 2017;21(20):4720-5.

平松 類

二本松眼科病院 副院長