「老人福祉・介護事業」の倒産が、急増している。2022年1-9月は100件(前年同期51件)と急増し、過去最多を記録した。2021年はコロナ関連の資金繰り支援効果で倒産が抑制されたが、2022年は効果が薄れ、光熱費や燃料費、人手不足の顕在化で経営環境が悪化した。さらに、デイサービス運営のグループ17社の連鎖倒産や、長引くコロナ禍でコロナ関連倒産が43件発生し、倒産件数を押し上げた。

 2022年1-9月(負債1,000万円以上)の「老人福祉・介護事業」倒産は100件(前年同期51件)で、前年同期の2倍に急増した。2000年以降、1-9月累計が100件に達したのは初めて。現在の状況が続くと、2022年の倒産は2020年の118件を抜き、年間最多の更新が現実味を帯びている。
 業種別では、連鎖倒産が発生したデイサービスを含む「通所・短期入所介護事業」が45件(前年同期13件)と急増した。連鎖倒産を除いても大幅に増えており、大手事業者との競争や物価高などの運営コスト増大が影響した。次いで、「訪問介護」が36件(同30件)と増加。ヘルパー不足や感染拡大期の利用控えなどが響いた。また、「有料老人ホーム」も10件(同2件)と急増。投資と収益のバランスが崩れ、コロナ禍の業績回復の遅れが響いている。
 「老人福祉・介護事業」倒産は、新型コロナ感染拡大で2020年に最多を記録した。続く2021年は介護報酬のプラス改定やゼロ・ゼロ融資、介護事業者向け支援などが広がり、倒産は急減した。だが、時間の経過とともに支援効果も薄れ、2022年は過去最悪ペースに逆戻りした。
 「老人福祉・介護事業」は、食材や光熱費、介護用品などが値上がりする一方、価格転嫁が難しく、さらに、コロナ禍で利用客の回復も鈍い事業者が多い。こうした状況から、長引く経営不振の小規模事業者を中心に、抑えられていた倒産がこれから本格化する可能性が高まっている。

  • 本調査対象の「老人福祉・介護事業」は、有料老人ホーム、通所・短期入所介護事業、訪問介護事業などを含む。
 

倒産は急減から一転、過去最多ペースに

 2022年1-9月の「老人福祉・介護事業」倒産は、100件(前年同期比96.0%増)で、介護保険法が施行された2000年以降で最多を記録した。負債総額は191億9,100万円(同336.9%増)と前年同期から4倍超に急増した。
 倒産急増の背景は、大規模な連鎖倒産の発生が大きい。機能訓練型デイサービスを運営していた(株)ステップぱーとなー(台東区)は、グループ含め17社が破産した。同社グループは、M&Aや福祉貸付資金の利用に加え、投資家からの資金調達などで業容拡大を進めていた。しかし、コロナ禍で施設利用者数が減少し、介護報酬の落ち込みから事業継続が困難となった。
 また、利用者の減少や介護費用とは別の「かかり増し経費」も増加し、新型コロナ倒産が43件発生した。介護事業者倒産の4割超(構成比43.0%)を占め、コロナ禍の影響が深刻さを増してきた。

 

原因別、売上不振が約6割

 原因別では、最多が販売不振(売上不振)の58件(前年同期比56.7%増、前年同期37件)。
 次いで、他社倒産の余波が21件(同2000.0%増、同1件)、既往のシワ寄せ(同20.0%増、同5件)と事業上の失敗(同200.0%増、同2件)が各6件、設備投資過大が5件(同400.0%増、同1件)、偶発的原因が2件(同100.0%増、同1件)で続く。
 コロナ禍前の水準に利用者が戻らず、売上不振が約6割を占めた。また、ステップぱーとなーの連鎖倒産で、他社倒産の余波も急増した。

 形態別、消滅型が97.0%
 形態別では、破産が91件(前年同期比85.7%増、前年同期49件)と全体の9割超(構成比91.0%)を占めた。特別清算が6件(前年同期ゼロ)で、消滅型が全体の97.0%だった。再建型の民事再生法は3件(前年同期比50.0%増、前年同期2件)にとどまった。

負債額別、1億円未満が約8割
 負債額別では、最多が1千万円以上5千万円未満の62件(前年同期40件)。次いで、1億円以上5億円未満が18件(同1件)、5千万円以上1億円未満が15件(同7件)の順。負債1億円未満が77件と全体の約8割(構成比77.0%)を占め、小規模の事業者が中心。
 だが、負債10億円以上も3件(同1件)発生し、負債の大型化も進行している。

従業員別、5人未満が5割超
 従業員別では、5人未満の54件(前年同期38件)が最多。次いで、5人以上10人未満が24件(同9件)、10人以上20人未満が11件(同1件)と小規模の事業者が大半を占めた。
 一方で、50人以上300人未満が4件(同1件)、20人以上50人未満の7件(同2件)と従業員の多い倒産も増えている。

地区別件数、関東地区が最多
 地区別では、全国9地区のうち、最多は関東の42件(前年同期16件)。次いで、九州が14件(同6件)、中部(同5件)と近畿(同15件)が各13件、中国が8件(同1件)、北海道が4件(同2件)、四国が3件(同2件)、東北が2件(同3件)、北陸が1件(前年同期同数)の順だった。

都道府県別件数、神奈川が最多
 都道府県別では、神奈川の14件(前年同期2件)が最も多かった。東京都の11件(同9件)、大阪府の8件(同6件)、千葉県(同2件)と福岡県(同2件)が各6件と続く。

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 介護事業者の倒産が過去最悪ペースをたどっている。2022年1-9月に倒産した100社のうち、17社がステップぱーとなー関連だった。この連鎖倒産を除いた83件は、1-9月累計では2020年(94件)、2019年(85件)に次ぐ3番目の高水準となった。
 ステップぱーとなー関連は、さらに10社超が年内までに倒産集計に計上され、2022年は過去最多だった2020年の年間118件を大幅に上回る見込みだ。
 コロナ前から介護事業を取り巻く環境は、厳しさを増していた。ヘルパー不足や従業員の高齢化、他業種からの新規参入の増加、大手との競争激化、介護報酬のマイナス改定など、複合的な要因が折り重なっていた。そこに新型コロナが襲いかかり、利用控えや感染防止費用の負担などで、倒産が急増した。コロナ支援や介護報酬のプラス改定などで一時的に倒産は抑制されたが、2022年は支援策の縮小に加え、原油高、円安といった想定外の事態も重なり、介護用品、光熱費などの運営コストが大幅に上昇するなど、新たな負担も生じている。
 介護事業はサービスの性格上、価格転嫁が容易でなく、厳しい経営に改善の兆しを見出せないのが実情だ。介護のデジタル化など、コスト削減への取り組みも必要だが、資金繰りが悪化している事業者には新たな投資は難しい。あらゆる物価高を背景に、コスト削減に向けた支援が急務になっている。