値上げラッシュが止まらない。9月20日に総務省が発表した8月の全国消費者物価指数は、昨年同月比2.8%上昇。消費増税の影響以外では、30年11カ月ぶりの伸び率を記録した。

また、日本食糧新聞の調べでは、10月には飲食料品を中心に8500品以上が値上げを予定。都市ガスや火災保険料などの、生活に密接に関係する料金もアップする見通しだという……。この歴史的な物価高について、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部の南陸斗さんが解説する。

「ウクライナ危機などによるエネルギー資源や原材料などの資源高に加え、拍車をかけたのが急速な円安進行。アメリカの金融引締めにともなう日米の金利差拡大による円相場の下落が原因です。通常、円安になれば輸出が伸びたり、インバウンド(外国人旅行客による消費)が期待できたりとメリットもありますが、企業が海外に生産拠点を移していることやコロナ禍で外国人旅行者の入国制限が続いていたことなどから、それらのメリットが薄れています。一方、輸入品の価格の上昇というデメリットは顕著です」

日銀は円買い介入で円安を抑制したが、効果は一時的なものだった。表は1ドル145円が続くと仮定した、年収別の世帯あたりの年間負担増の試算だ。総務省の「家計調査」などから、2人以上の世帯の2022年度の前年度に対する負担増加額と増加率を南さんらが独自にはじき出した。

「試算結果には、輸入小麦の政府売渡価格の据え置きや、ガソリンなどの燃料油価格の激変緩和措置など、政府の物価高対策の効果を織り込んでいます。しかし、それでもすべての世帯で負担が大きく増えることになります。年収400万円の世帯は、昨年度に比べて約7万8千円の支出増です」(南さん、以下同)

■消費税3%増税と同程度の影響が

気がかりなのは、負担増の影響が低所得世帯ほど大きいことだ。

「今回の物価上昇は、おもに食料やエネルギーなど生活必需品の値上がりです。食費や電気ガス代などは、生活するうえで必ず一定程度はかかるし、減らすにも限度がある。そのため、負担率で見ると、所得が低いほど大きくなります。年収300万〜400万円未満の世帯の負担の増加率は2.1%。これは2014年に消費税が5%から8%に増税されたときと同程度の負担増です。300万円未満世帯だと、これより大きい2.7%になります」

物価高騰はいつまで続くのだろうか?

「原油価格は峠を越えました。コロナ禍から世界経済が急激に復活したことによる景気も来年には減速する可能性が高く、世界的にエネルギー資源や原材料の需要も減少するでしょう。資源価格も落ち着いていくと考えられます。円安のメリットにより、海外から企業が戻ってきたり、投資が増えたりすることも期待できます。また、海外旅行客の入国制限も緩和されインバウンドも増えるでしょう。2023年はゆるやかな円高が進むのではと考えられます」

■固定費の見直しで値上げ苦境を乗り切る

明るい兆しはあるようだが、それまでは家計にのしかかる負担を軽減させることが必要だという。

「生命保険などが家計の状況に見合っているかは見直したほうがいいでしょう。若いころに入った保険を見直さずに高い保険料をそのまま払い続けている人も多いです。また昨年から2割上がっている電気料金には、燃料価格に連動した燃料費調整制度があり、値上げ上限が設定されています。大手電力10社はまもなく上限に達し、これ以上の値上がりは考えられませんが、『自由料金プラン』で契約している場合は、燃料費調整制度の上限がありません。どちらが得かは、プランによっても変わりますので、再検討が必要です」

家計における固定費の見直しとともに、年間の支出の3割弱を占める食料品の支出を減らすことも重要なポイント。スーパーなどが独自に展開するプライベートブランド商品は比較的価格が維持されているので、家計の味方になる。

「食品ロスは国民1人あたり毎日茶わん1杯分のごはんの量が発生しているとされています。家庭では食べ残しを減らす、野菜の切りすぎなどのフードロスを削減するだけでも年間3千円の支出軽減効果が期待できます。また賞味期限間近の食品、季節限定商品やパッケージに傷がついた『わけあり商品』を格安で購入できるECサイトの利用で、さらに年3千円の削減になります」

賢い選択で、この物価上昇を乗り切ろう。