実績のあるリリーバーの名前は見当たらず

 野球日本代表「侍ジャパン」の栗山英樹監督は4日、都内で記者会見を開き、11月に行う日本ハム、巨人、オーストラリアとの強化試合「侍ジャパンシリーズ 2022」のメンバー28人を発表した。半数以上の15人がトップチーム初選出のフレッシュな顔ぶれ。一方で、2年連続パ・リーグ投手4冠に輝いたオリックス・山本由伸投手、ソフトバンク・千賀滉大投手、東京五輪で侍ジャパンの主力として日本に金メダルをもたらしたソフトバンク・柳田悠岐外野手、オリックス・吉田正尚外野手らは選出されなかった。栗山監督は来春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)へ向け、今回は含まれなかった日本人メジャーリーガーの招集にも意欲をのぞかせる。指揮官の胸の内とは──。

 11月5日に日本ハム戦、6日に巨人戦(以上東京ドーム)、9日と10日にはオーストラリア戦(札幌)を予定している侍ジャパン。栗山監督は「11月の時点で外国のチームに対して勝ち切るために、一番いいチームを思い描いて選んだ。今回選んだ選手たちがこの4試合で(WBCにも)そのまま行くくらいの結果を残してくれると信じている」と話した。

 ただ一方で「正直に言うと、外国に行っている選手であるとか、今回は少し制限がかかっている部分もある。今季タイトルを取ったのに選ばれていない人もいて、皆さんは気になると思うが、僕の方で選手たちと話をしているつもり。そういうことを含めて(WBCの選考などを)やっていきたい」と本音も明かした。

 特に、今回選出された投手13人のうち、リリーバーは巨人・大勢、阪神・湯浅京己、広島・森浦大輔、先発と救援の両方をこなしたオリックス・山崎颯一郎くらい。今季パ・リーグ最多セーブの楽天・松井裕樹、最優秀中継ぎの西武・平良海馬、同・水上由伸、東京五輪金メダリストのDeNA・山崎康晃、広島・栗林良吏ら実績のある選手の名前が見当たらない。

 レギュラーシーズンで超人的な登板数をこなしてきたリリーバーが現時点で抱える疲労は尋常ではなく、さらにクライマックスシリーズ(CS)を控えている選手もいる。このポジションで今回選出されていない選手の中にも、栗山監督が心に決めている選手はいるだろう。

愛弟子の大谷ら日本人メジャーリーガーは?

 先発でもオリックス・山本、今季セ・リーグ投手3冠の阪神・青柳晃洋投手らは、シーズンをほぼフルに稼働した上、CSも控える。野手で故障を抱えながら奮闘している柳田、吉田正らも同様だ。栗山監督は「表に出ていない怪我、体の状態など、いろいろなことがある。そういういろいろなことを含めて考えた。何となく想像してもらえれば」と話す。

 WBCでは現役メジャーリーガーの招集にも意欲を燃やす。栗山監督の愛弟子である二刀流のエンゼルス・大谷翔平投手はその目玉。さらに、パドレスのダルビッシュ有投手についても、栗山監督は8月の米国視察から帰国した際、「あれだけ野球を研究していて“野球博士”という表現が一番ふさわしい。そういうものをいろいろな選手たちに伝えてあげてほしいという思いが、こっちにはある。僕としても、個人的にいろいろ接点があって、一緒に戦った選手に近い感覚がある。ダルは迷惑かもしれないけれど……」と並々ならぬ思い入れをほのめかしている。

 一方、今年のオフに海外FA権やポスティングシステムを利用してメジャーへ移籍する選手がいた場合、WBCの開催は新天地で存在をアピールしなければならない時期に重なるため、招集が難しくなるかもしれない。さまざまな事情や思いを胸に、来春のWBCを見据える栗山監督。それだけに、今回選出された選手たちは“生き残り”をかけての猛アピールが求められる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)