6年ぶりの新シリーズ「デュエル・マスターズWIN」に合わせ9月に発売された新作トレーディングカード(記者撮影)
おもちゃの市場の中でカード市場の拡大が続いている。日本玩具協会が2022年6月に発表した統計によると、カードゲーム・トレーディングカードは前年比45%増の1782億円となり、2001年度に現行の方式で集計を始めてから過去最高を記録した。1996年から販売されているポケモン社の「ポケモンカード」やコナミグループの「遊戯王OCG」などが市場の拡大を牽引している。
9月26日、玩具卸で国内最大手のハピネットは、2022年度上期(4〜9月)の営業利益見通しを24億円から32億円に上方修正。業績が上振れた要因に「ポケモンカード」や7月に発売開始したバンダイの「ワンピースカードゲーム」の好調を挙げている。
トレーディングカードでは、アメリカのウィザーズ・オブ・ザ・コーストが開発し、日本ではタカラトミーが販売する「デュエル・マスターズ」も好調だ。2022年5月で日本発売20周年を迎えたが、今なおタカラトミーの業績に貢献している。
ロングセラーで大人も子どもも遊ぶ商品に
トレーディングカード好調の理由は複数ある。
1つはユーザー層の拡大だ。例えば、デュエル・マスターズはもともと小学生をターゲットにした商品だったが、ロングセラーに伴ってボリュームゾーンが20代になっているという。
デュエル・マスターズはスタン落ち(昔のカードが使えなくなること)がないため、久しぶりに遊ぶときに昔持っていたカードをそのまま使える。そのため、大学生になって小学生のときに買ったカードで”復帰”するケースも少なくないという。子どもが新たなユーザーとなる一方、大人も遊ぶ商品となったことでユーザーの裾野が広がった格好だ。
デジタルゲーム化も追い風となった。2014年にブリザード・エンターテイメントが「ハースストーン」、2016年にCygamesが「シャドウバース」といったスマホアプリなどで遊べるタイプを投入し、デジタルカードゲーム(DCG)と呼ばれるゲームジャンルが台頭した。
デュエル・マスターズの販売責任者である原伸吉氏は、「カードゲームはホビーの中でもあまり一般的ではなかった。デジタル化で多くの人がトレカを知るきっかけになったと思う」と話す。
そして、デュエル・マスターズ自身もデジタルへ進出。2019年にDeNAと共同開発したスマホアプリ「デュエル・マスターズプレイス」を投入した。ルールを簡単にして、新規ユーザーが入りやすくしたり、プレイスで初登場したカードを紙でも販売したりして、紙のカードにも関心を持ってもらう仕掛けをつくった。
紙のゲームは対面のコミュニケーションだが、デジタルのゲームは時間を選ばず1人で遊べることから、カードゲームでも楽しみ方が違う。デジタル化を追い風にして、紙との共存状態をつくれている。
デュエルマスターズ以外にも遊戯王が、「遊戯王マスターデュエル」など複数のDCGを展開しており、DCGの「シャドウバース」が紙のカードを販売するなど、多くの企業がデジタルとアナログのカードでシナジーを図っている。
コレクション性が高まり「交換市場」も旺盛
好調が続くもう1つの理由はコレクション性だ。
デュエル・マスターズは2021年発売の商品からコレクション性をより意識した作りにした。カードの光り方の違いなどでデザインの差異をつけている。各社ともカードデザインに工夫を凝らし、しのぎを削っている。また、トレーディングカードの主要商品は「拡張パック」と呼ばれる中身がわからないもの。これがコレクション欲を増す要因にもなっている。
コレクション性の高まりから流通市場も活発だ。コレクター向けのトレカフリマアプリ「magi」を運営するジラフは、2022年9月の月間流通額は4億円にのぼる。同社の麻生輝明CEOは、「コロナ禍でトレカ収集の趣味が広がった。取引額も全体的に上昇傾向にある」と話す。
国内のカードゲームやトレーディングカード市場は「ポケモンカードゲーム」「遊戯王OCG」「デュエル・マスターズTCG」の3強が君臨する。
だが、ここにもう1つの強者が足を踏み入れた。ワンピースが2022年7月から「ワンピースカードゲーム」の販売を始めたのだ。一方、デュエル・マスターズはユーザー年齢層の広がりやコレクション性の高まりにも対応し、6年ぶりにシリーズを一新。9月からは漫画・アニメも開始した。
「厳しい競争環境の中で、各タイトルともユーザーをより喜ばせようと取り組んでおり、新たなカードデザインがでてきたという情報は毎日何かしら入ってくる。そこがカードゲームが盛んな原動力になっているのでないか」(原氏)タイトルごとの競争はより激しくなりそうだが、紙とデジタルのほか、さまざまなメディア展開で市場の拡大はなお続きそうだ。
(武山 隼大 : 東洋経済 記者)
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