調停を回避しての契約は球団、大谷双方の「リスク回避」の結果?

 エンゼルス大谷翔平投手が年俸調停を回避し、年3000万ドル(約43億4000万円)の1年契約を結んだことに、米メディアからは「安い」との声が上がっている。スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」でエンゼルス番を務めるサム・ブラム記者が「オオタニには、支払われる金額以上の価値がある」と伝えている。

 記事は、大谷が2023年まではエンゼルスの支配下にあることを指摘した上で、もし年俸調停にかければ「野球史上で最も興味深い調停になっていただろう」としている。二刀流でプレーする「大谷の才能に前例がないため、調停で決める価値にも前例がない」のが理由だという。

 一方で大谷とエンゼルスの来季の契約が、調停を経由せずに合意に至ったのも「理解はできる」という。「2023年のオオタニは確かに高価だが、それでもこれはバーゲンであり、残された選択肢を考えるとこれは賢明な選択」としている。

 エンゼルスのモレノ・オーナーは球団の売却を検討しているのも、その理由の一つだという。今回の契約で、球団買収に興味を持つ人が、大谷が球団に何をもたらしているかをよりはっきりつかむことができたのではと推測している。

 それでもこの新契約も「トレードの可能性を排除するものではない」としている。大谷との年俸調停を懸念していたチームが「トレードをより積極的に考えるかもしれない」とさえ言う。

調停は選手が勝つか、球団が勝つかで“予測不可能”

 記事は「フェアに考えれば、大谷には支払われる金額以上の価値がある」と指摘。さらに「オオタニは、彼ほど活躍していない選手がもっと稼いでいる中、なぜこの契約に同意したのか」と疑問を呈した。例に挙げられるのは、怪我で満足にシーズンを送れていないレンドンの年3800万ドル(約55億1000万円)の契約だ。ブラム記者は大谷側と球団の双方が、リスクを回避したのではと見ている。

 調停はFAとは異なり、1球団だけを相手にすることになる。新年俸は、球団の提示額か選手の希望額のどちらかで決まる。「仮に、オオタニが5000万ドル(約72億5000万円)と言い、エンゼルスがその半額を提示すれば、どちらかが大きく“負ける”可能性がある。また、調停で争いが起こる可能性があり、そうなると、球団との関係に悪い影響を及ぼす可能性も出てくる。オオタニのような選手にとっては、それは賢明なこととは思えない」。予測不可能な調停を回避したのは、両者にとって賢明だというのだ。

 また記事は、エンゼルスが主力のトラウト、レンドン、大谷に来季、合計1億500万ドル(約152億3000万円)を支払うこと、今期並みの年俸総額を守るとすれば強化のために4000万ドル(約58億円)程度を費やすことができると指摘。大谷念願のプレーオフ進出はかなうのだろうか。(Full-Count編集部)