「心疾患」は日本人の死因第2位を占める病気ですが、心疾患の中には、日本人の死因第1位のがんよりも5年後死亡率が低い病気もあります。本稿にて、命の危険を見逃さないために知っておきたい知識を見ていきましょう。

Q1. 早朝に胸が痛くなります。狭心症でしょうか?

■“体を動かしていないのに痛む”なら、「異型狭心症」の可能性あり

労作(=体を動かすこと)を伴わず、早朝に胸が痛くなる場合、考えられる原因としては、異型狭心症があります。これは、冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症とも呼ばれており、冠動脈に動脈硬化が起きていないか、軽度にもかかわらず血管が痙攣し、血管の内腔が狭くなって血流が低下する病気です。日本人に多くみられ、喫煙、過呼吸、ストレス、過労、不眠、アルコールの飲み過ぎなどが引き金になります。

特徴は、症状が現れるのが早朝などの決まった時間であるということです。安静時でも「タバコを吸ったとき」「お酒を飲んだとき」など、決まったタイミングで現れることがあります。

■「コップ1杯の水」で痛みが治まれば、「逆流性食道炎」の可能性も

また、早朝に胸が痛む場合は、心臓とは関係がなく、逆流性食道炎が起きている可能性もあります。これは胃の内容物が食道に逆流し、強い酸性の胃液が食道の内壁を刺激するために胸焼けがしたり、胸が重くなったり苦しくなったり、狭心症と似た症状を自覚する病気です。酸っぱいものや苦いもの(呑酸〔どんさん〕)が込み上げてくることもあります。

逆流性食道炎の場合は、コップ1杯の水を飲むと症状がなくなるので、早朝に胸が痛くなったら、水を少し飲みます。もしそれで痛みがなくなれば、逆流性食道炎の可能性が高くなりますが、いずれの場合でも治療が必要になります。

Q2. 心臓病は遺伝するのでしょうか?

■一部の心臓病は遺伝しうるが…

基本的に心臓病は遺伝しない病気ですが、一部の心臓病には遺伝性があります。例えば、肥大型心筋症は家族内発症が多く見られ、近年の研究により、肥大型心筋症の大半に遺伝子異常が見つかっています。

また、不整脈の一部にも遺伝性があることが確認されており、「先天性QT延長症候群」「ブルガダ症候群」「カテコラミン誘発多形性心室頻拍」の発症には、遺伝子変異が関係していることが分かっています。

■「発症するスイッチ」がオンにならなければ大丈夫

そのほか、弁膜症や大動脈疾患のなかにも遺伝性の病気があります。ただし、遺伝子変異があっても、必ずしも全員が病気を発症するわけではありません。遺伝子の変異があっても、そのスイッチをオンにする誘因がなければ、“爆弾”は爆発しないのです。もし、両親や祖父母などの近しい身内に、そうした疾患を発症した人がいる場合は、念のため定期的に心臓ドックを受け、状態をこまめに確認しておくとよいです。

それから心臓病の危険因子として肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症がありますが、これらは家族の病歴も関係しており、そうした病気になりやすい体質は遺伝します。特に同居している家族の場合は、同じ食事を続けるなど生活習慣が似ているため、心臓病に限らず、同様の病気を発症する確率が高くなります。

もちろん、同じ体質をもっているからといって、必ずしも同じ病気を発症するわけではありません。生活習慣や食生活を見直すことで、病気の発症リスクを軽減することは可能です。

大堀 克己

社会医療法人北海道循環器病院 理事長