「感じがいい」と思われる人はどういった行動・言動をしているのでしょうか(写真:kikuo/PIXTA)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャⓇ」の大野萌子です。

私たちは普段、無意識のうちに、人を「感じがいい」「感じが悪い」と判断しています。しかも、そのたった一瞬で感じた印象が、その人に与える影響を大きく左右しがちです。

特にビジネスシーンにおいては、相手に与える印象の良し悪しが、社内の評価や出世にまで影響することが増えてきました。営業職や接客、サービス業であれば、そのまま営業成績に直結して大きな差が生まれることもあるでしょう。普段何気なく行っている行動や言動が、相手にマイナスの印象を与えて、知らぬ間に損をしているということもありうるのです。

では「感じがいい」と思われる人はどういった行動・言動をしているのでしょうか。拙書『「感じがいい人」の行動図鑑』から一部抜粋、再構成してお届けします。

「感じがいい人」は曖昧ワードを使わない

上司や取引先相手からの仕事の依頼で、「可能な範囲のなるはやで」とか、「手があいた時でいいけれど、できれば優先順位高めで」などと言われたことはありませんか。


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依頼する上司や取引先からすれば、「ほかの仕事を差しおいてでも今すぐに」というのが正直な気持ち。とはいえ、さすがにそれをストレートに言えばカドが立つので「こちらの状況、わかってくれますよね」「そこは何とか配慮してやってくれますよね」という含みを持たせた結果、前述の発言になるわけです。

けれど、実はこれ、依頼側が勝手な期待を押し付けているだけ。依頼された側は、自分の思う「可能な範囲のなるはや」で対応してくれるでしょうが、かといって、それが依頼する側が納得する「なるはや」と同じスピードとは限りません。

それどころか、作業の途中で「例の件、まだ?」など催促されたり、せっかく仕上げても「遅いじゃないか」と言われたり、さらに依頼された側が「なるはや」の指示に圧力を感じ、無理をして対応しようと頑張りすぎるあまりに体調をくずすようなことがあれば、パワハラにだって発展しかねません。相手を慮ったつもりの曖昧表現での指示というのは、実は身勝手でわかりにくく、作業する側にとっては厳しい判断を迫られていることになるのです。

具体的な日時で指示ができる

その点、感じがいい人、好かれる人というのは、仕事を依頼する際も「○月○日の○時まで」というように、詳細な期限を設定してくれます。

一方で、こうしたはっきりとした期限設定は、相手の都合が考慮されていないようで、心苦しく思うことがあるかもしれません。けれど、依頼される側としては、逆に期日がはっきりしているほうが、スケジュールに組み入れやすく、対応しやすいのです。

もし、気になるようなら、「○月○日の○時まで(にお願いします)」という指示・命令口調ではなく、「○月○日の○時までにお願いできませんか?」というような、相手に判断を委ねる依頼・質問形の表現を使うのもテクニックのひとつ。

特にメールなどの非対面コミュニケーションでは、文字の印象がそのまま伝わるので、よりやわらかい依頼形表現が効果的です。そのうえで「日程が厳しければご相談ください」と、ひと言フォローを入れれば万全。ただし、あくまで、最も重要な日時などの指示出しは明確に言い切ることを忘れないでくださいね。

このように、相手によってどうとでも取れる曖昧表現は、ほかにも「朝イチ」「午後イチ」「本日中」「今週中」「あとで」「改めて」など、数限りなくあります。「本日中」と言われても、終業時間なのか、その日の0時までなのか、人によって捉えかたが違います。「改めて連絡します、って言われたけど、結局いつまで待てばいいの」とモヤっとした経験がある人もきっといらっしゃるでしょう。

そのため、こうした感覚的曖昧表現はしっかり相手に伝わる言葉に言いかえることが大切なのです。特にビジネスシーンではちょっとした行き違いが思ってもいなかった大きなトラブルや損害につながりかねませんから、ことさらに気をつけたいものです。

「以心伝心」は幻想、伝える努力を怠らない

「察するが美徳」の文化が浸透しているわが国においては、曖昧表現でのやりとりがいまだに多く残っています。また、社会生活の中で、「空気が読めないやつと思われたくない」「自分が我慢すれば丸く収まる」といった思いから、自分の気持ちを抑え込むことも多くあります。こうしたことを続けていくと、自分の本心がつかみづらくなるだけでなく、自分ではっきりと認識できないことは、伝え方が曖昧になります。「以心伝心」という言葉がありますが、残念ながらこれは幻想です。言葉でしっかり伝えなければ、相手には伝わりません。


テレワークが浸透し、メールのやりとりが主流になった今、メールを送ったことで「伝えたつもり」になっているケースも多々あります。こうした一方的なメールでの伝言も、曖昧表現も、足りないのは相手への思いやりです。察してくれる、わかってくれると思わずに、相手に伝える、伝わる努力を惜しまないこと。より具体的かつ明確に伝えるためにはどうしたらいいかをしっかり考えて、行動する。その第一歩が曖昧表現の排除です。

さらに、わかったつもりにならず、ちゃんと伝わったかどうか、相手に聞いて確認することも必要です。面倒に感じるかもしれませんが、これこそがコミュニケーションの基本。人は基本的にはわかり合えないものです。それゆえに、わかりあうための手段を講じ、そのプロセスを積み重ねていくことが大切なのです。そしてそうした努力ができるのが「感じがいい人」であり、円滑なコミュニケーションはその中から生まれるのです。

(大野 萌子 : 日本メンタルアップ支援機構 代表理事)