日本代表の欧州遠征は、収穫のあるものだった。

 9月23日に対戦したアメリカも、27日に対峙したエクアドルも、コンディションは悪くなかった。とりわけエクアドルは、攻守の切り替えがスピーディーでインテンシティが高かった。

 カタールW杯のグループステージでは南米勢との対戦はなく、ベスト16へ勝ち上がってもベルギーかクロアチアが待ち受けている。本来ならドイツを想定した相手と対戦したかったところだが、エクアドルのクオリティは日本を刺激したと思う。

 日本国内で試合をすることには、もちろん意味がある。ただ、W杯を直前に控えた今回のようなタイミングは、お互いにコンディションが整えにくい日本国内よりも、ヨーロッパで試合をしたほうが強化になる。分かっていたことだが、改めてそう感じる。

 今回の2試合は、4−2−3−1でスタートした。所属クラブで好調さをアピールしている鎌田大地、久保建英、堂安律らを起用するには、4−3−3より無理がないからだろう。とりわけ鎌田については、4−2−3−1のトップ下が最適だ。

 試合の終盤には3バックに変更した。アメリカ戦は3−4−2−1のような立ち位置で、エクアドル戦は3―4−1−2とも3−3−2−2にも見える布陣にした。上田綺世と伊東純也の2トップにしている。

 試合を終わらせるシステム変更として、3バックは視野に入れるべきものだ。守備時は5バックになり、相手の攻撃を跳ね返しながらカウンターを効かせられる。
 
 4バックでCBのコンビを組む吉田麻也と冨安健洋に加え、所属先で3バックの一角を担う伊藤洋輝がいる。谷口彰悟や板倉滉も3バックに対応できる。少なくとも勝点1が求められる初戦のドイツ戦では、守備に軸足を置いてスタートから3−4−2−1で臨んでもいいだろう。

 では、主戦術は4−3−3なのか、4−2−3−1なのか。

 カタールW杯アジア最終予選で採用した4−3−3は、いくつかの問題を内包していた。その最たるものは、南野拓実のポジションである。突然のシステム変更で左ウイングに収まったものの、彼は縦への突破に特徴のあるタイプではない。結果的に伊東のドリブルが頼りとなり、左サイドからの有効な崩しは限られた。南野自身も最終予選では1得点に止まった。

 日本代表の4−3−3では、鎌田の起用も難しい。偽の左ウイングで起用することはできそうだが、その場合は同サイドのサイドバックを含めて左サイドの仕組みを整理する必要がある。三笘薫は左ウイングに適性があるものの、彼を先発させるとジョーカーがいなくなってしまう。

 一方で、遠藤航、守田英正、田中碧のセントラルMFは、取り替えの効かないトリオとして機能した。相手の出かたを見ながらサッカーができる彼らは、補完性の高いユニットとして4−3−3における強みとなった。
 
 実質的にカタールW杯前最後のテストマッチとなるこのタイミングは、オプションを確認する最終機会だった。4―2―3―1にトライしたいのは理解できる。しかし、6月までの主戦術だった4−3−3には手を触れなかった。

 最終予選を通して、一定の手ごたえをつかんだところはある。さほど時間をかけなくても機能性を取り戻せると、森保監督は判断しているのかもしれない。

 ベスト8を本気で目ざすなら、これぐらいの戦術的なバリエーションが必要なのかもしれない。いずれにせよ、W杯直前の戦術的なチューニングが、大きな意味も持つことになりそうだ。