新型コロナウイルス対策を助言する厚生労働省の専門家組織「アドバイザリーボード」は9月21日、全国の新規感染者数に関して「(第6波のピークだった)2月を下回った」との見解を発表。

さらに政府は9月7日から、入国者数の上限を1日2万人から5万人に引き上げ、添乗員がいないツアー客の受け入れも再開した。

着々と自粛ムードが解禁されつつあるが、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和先生は、新型コロナウイルスの感染拡大について、こう警鐘を鳴らす。

「現在、新規感染者数は減少しつつありますが、この冬は新型コロナウイルスの第8波が襲ってくるでしょう。

コロナの流行時期は昨年とほぼ同様に、気温が下がることで換気の機会が減少し、空気が乾燥する12月の終わりから1月にかけて感染者数が急増することが予想されます」

さらに、朝倉医師会病院感染症専門医の佐藤留美先生はインフルエンザの流行にも危機感を募らせている。

「毎年、インフルエンザの流行予測の目安となる南半球のオーストラリアでは今夏、例年よりも早くインフルエンザの流行が始まりました。そしてコロナ禍以降、インフルエンザの流行は世界的に見てもほとんどありませんでしたが、今年のオーストラリアではコロナ前の過去5年間の平均を大きく上回る感染爆発が起こったのです。

日本でもコロナ禍以降、インフルエンザの流行はほとんどなく、集団免疫がかなり落ちています。

オーストラリアの結果も踏まえると、今年はインフルエンザと新型コロナウイルスの同時流行は避けられないでしょう」

政府も今冬の新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行を懸念している。

そんななか、インフルエンザの予防接種が10月1日から全国で開始される。

同時に、これまで60歳以上、基礎疾患のある人、感染リスクの高い医療従事者だけに限られていたコロナワクチン4回目接種の対象者が、9月20日から「3回目を終えて5カ月以上経過した12歳以上」に拡大された。

さらに当初、コロナワクチンは「ほかのワクチンとの同時接種は行わず、接種間隔を13日以上おく」という方針だったが、政府はインフルエンザワクチンに限り、接種間隔の規定を廃止し、“同時接種”を解禁したのだ。

同時接種とは2種類のワクチンを同時に打つこと。

片方の腕に2本打つか、両腕に1本ずつ打つか決まりはないが、後者が一般的だという。

2種類のワクチンを同時に体内に入れることに不安もあるが……。

政府は、米国の新型コロナウイルスとインフルエンザのワクチン同時接種に関する研究結果をもとに「インフルエンザワクチンに限っては安全性や有効性に問題はない」として容認した。

しかし、政府の決定に菊池先生は次のように苦言を呈する。

「副反応が出る人と出ない人の個人差を考慮すると、海外のデータだけを論拠に同時接種が安全と判断するのは早急です」

■痛みが増し、全身の倦怠感が強く出ることも

佐藤先生もワクチンは感染予防に効果的であるが、同時接種はリスクが高いと危険性を指摘。

「コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種によって、接種後の副反応がひどくなる可能性があります。

接種部分の痛みが増し、これまで以上に全身の倦怠感が強く出ることも考えられるのです」

菊池先生のクリニックでも同時接種は行わないとしている。

「やはり同時接種後の副反応がどう出るかわからない怖さがあります。個別接種では副反応の熱が38度だったのが、同時接種で40度になるという可能性も十分考えられるでしょう。

また同時に打つと、副反応が出た場合、どちらのワクチンによるものなのかわからず対処が難しくなる恐れも。

私自身、コロナワクチンだけを打った場合でも副反応で高熱が出るため、同時接種は避けます」

では実際、インフルエンザワクチンとコロナワクチンを打つ場合、どのくらいの間隔を空けるべきなのか。

「ワクチン接種による副反応のほとんどは1週間程度で治まるため、1つのワクチンを打ったあと、次にワクチンを打つのは、1週間は空けるのがよいでしょう」(菊池先生)

同時接種でなければコロナワクチンとインフルエンザワクチンで接種する腕を変える必要はないと佐藤先生は提言。

「コロナワクチンは筋肉注射、インフルエンザワクチンは皮下注射であり、接種部位も多少異なるため、1週間の間隔を空けるのならば同じ腕で全く問題ありません。

成分が血液中に入れば同じですから、同じ腕に打ったからといって副反応が強くなったり、ワクチンの効果が変わったりすることもありません。

接種後の副反応で、腕を上げるのが痛いなど日常生活への支障を考えれば、利き腕でないほうに打つのがいいでしょう」

今後の流行に備えてインフルエンザワクチンの接種は11月までに終わらせるのがベストだという。

「どちらのワクチンも免疫がつくまで2週間かかります。

毎冬、日本のインフルエンザの流行は12月から3月にかけてですが、オーストラリアの状況を見ても、例年よりも早い感染拡大が考えられます。10月の接種開始から遅くても11月末までには、コロナとインフルの2つのワクチン接種が完了していることを推奨します」(佐藤先生)

同時流行が懸念されるなか、コロナとインフルのワクチン接種には余裕をもったスケジュールで備えよう。