高速道路でパトカーが見せた「取締りの神業」

 道路をクルマで走っていると、警察が速度違反の取締りをしていることがあります。

 俗に「ネズミ捕り」といわれるものですが、実施する場所やタイミングに傾向や法則はあるのでしょうか。

ネズミ捕りの「サイン会場」へ誘導(画像:オービスガイド)

【画像】速度取締り「プロの神業」四コマ解説と、実際の警察告知を見る(22枚)

 今回、オービス(速度違反自動取締装置)の運用情報共有サービス「オービスガイド」の運営やアプリ開発を10年以上手掛け、リアルタイムに投稿される多くの情報から取締りの傾向を探っている「オービスガイド」の大須賀克己さんに話を聞きました。

 大須賀さんは、これまで日本全国の道を実際に数十万km走り回ってきたドライバーでもありますが、無事故・無違反でゴールド運転免許を3連続更新中です。

※ ※ ※

――そもそも「ネズミ捕り」とは、どのようなものなのでしょうか。

「俗語なので正式な定義はありませんが、一般的に警察の、速度違反の交通取締りを指すようです。ただしオービス(速度違反自動取締装置)は除きます。ネズミ捕りはオービスと異なり、その場で違反切符の処理を行いますが、定置式と追尾式の2方式があります。

 定置式は道路の路肩などに計測機器を設置し速度を測るのに対し、追尾式は白バイや覆面パトカーなどが移動しながら違反車両を探します。

 定置式のネズミ捕りは、各地にお決まりの取締りポイントが存在し、毎日のように行っている場所もあれば、ローテーションで実施されている所もあります。なぜ場所がだいたい決まっているかというと、違反処理を行うスペース(通称、サイン会場)が必要だからです。そのため、地元の人はネズミ捕りの場所を把握していて、捕まるのはほとんど地元以外の人です。

 追尾式のネズミ捕りは、高速道路や幹線道路など速度が出やすい道で、白バイや覆面パトカーなどにより行われます。

 走りながら実施するため取締りエリアは広域ですが、警察車両の拠点となる高速道路交通警察隊の施設があるような場所を基点に行われることが多いので、取締り重点エリアのような場所は存在します。『覆面パトカーは気配で分かる』という方もいますが、トンネル内や夜間は気配も薄れます。

 また、私が片側3車線の高速道路で見たのは、追越車線を飛ばしてくるクルマを白黒パトカーが取り締まる際、パトカーは中央車線を走る大型トラックを挟んで違反車からは死角となる対角線上を反時計回りに巧みに移動し、違反車の後ろに回り込むというプロの神業を見ました。違反車は白黒パトカーの姿に全く見ることなく、気が付いた時は速度を計測された後でした」

ネズミ捕りが実施される場所・時間・天気は?

――ネズミ捕りは、季節や曜日、時間、天候などで実施する傾向が変わるのでしょうか。

「今年は9月30日まで「秋の全国交通安全運動」が実施されていますが、この期間中は取締りが通常とは比較にならないくらい増えます。

 それ以外では下記のような条件下で実施されている傾向があります。

・都道府県警のウェブサイトやSNSで告知された場所
・休日前や連休中、深夜の高速道路や幹線道路
・休日の午前中、行楽地へ向かう郊外の幹線道路(夕方は上り方面)
・休日の行楽地周辺の道路
・「海の日」の海岸沿いや「山の日」の山道
・平日の早朝(渋滞発生前)の市街地周辺道路
・平日の10時から正午まで、14時から17時までのお決まりのポイント
・通学・下校時間帯の通学路やゾーン30のエリア
・正月やお盆など交通量が減る都市部の高速道路
・常時、高速道路のSAやPA、IC付近
・年度末に取締りが増える傾向がある

 天候については、雨の日よりも、やはり晴れや曇りの日が多いです(これはアプリへの投稿数で如実に現れます。雨が降っているエリアからの投稿は5分の1程度に減り、台風などが接近すると投稿がほぼ無くなります)。ただし、雨でもアンダーパスや高架下など、あまり天候に左右されない取締り場所も存在します」

移動式オービスの予告看板。最近見られる小型タイプ(画像:オービスガイド)

――移動式オービスは、どのような路線でよく運用されていますか。

「移動式オービスがよく実施されている場所は、狭い通学路から高速道路の非常駐車帯まで様々です。これは、サイン会場が必要ないためです。

 ただし実際は、移動式オービスを運ぶ車両を近くに停車でき、車内から移動式オービスを監視できる場所が運用しやすいようです。そのような場所では定期的に繰り返し設置されます。

 移動式オービスには『見せる取締り』と『本気の取締り』があります。見せる取締りは、小学校の正門前に置いたり渋滞横の歩道に設置したりしています。本気の取締りは、深夜の幹線道路沿いなどに設置されます」

――移動式オービスでも予告の看板はあるのでしょうか。

「本来、オービスの手前には必ず予告看板があることが前提でした。しかしそれが、2017年8月19日付の愛三時報(愛知県西尾市)に掲載された記事の『予告標識を設置せずに行う』という記述で崩れました。

 それ以来、予告看板を設置する場合としない場合があります。首都高速で遭遇した移動式オービスでは予告看板を見かけませんでしたが、埼玉県内の場合はすべて予告看板がありました。

 ただし予告看板の色や大きさ、設置場所に決まりはなく、片側2車線道路の中央分離帯に予告看板があり、オービス本体は左側の路肩に設置されていたこともあります。また最近の予告看板はとても小さくなりました」

――取締りの予告はどこにありますか?

 都道府県警のウェブサイトやSNSで告知されていたりします。掲載場所や記載方法などに決まりはなく、県警ごとにマチマチです。

『○月上旬に県内北部にて速度違反取締り実施予定』などのように大まかな案内をすることから、『○月○日午前中、○○市○○町○丁目の国道○号線で実施』といった具体的な告知もあります。

 もしお住まいの地域の警察のSNSが具体的な情報を発信している場合は、フォローしておいて損はないと思います。また、幹線道路に設置されている電光式の道路情報板で知らせることもあり、『県内 移動式オービス 実施中』などの表示がある時は、県内のどこかで運用されています」

※ ※ ※

 大須賀さんによると、取締りの“お決まりのポイント”は「オービスガイド」アプリでも確認が可能。また、レーダー探知器の中には「車両追尾の重点エリア」を教えてくれる機種もあります。

 ただ、このような取締りが頻繁に行われる場所は、数年で変わったりするといいます。取締りの有無にかかわらず、制限速度を守ることが大切なのは言うまでもありません。