「性」との向き合い方は、文化や宗教によって異なるもの。

一般的に性の話題がタブーとされる傾向が強いイスラム教で育った、ライターのタフミナ・ベーグムさん。本記事では、<コスモポリタン イギリス版>より、彼女が感じ、インタビューしてわかった「ムスリム女性と性」についてお届けします。

語り:タフミナ・ベーグムさん

性はタブーな話題

結婚している夫婦間の性行為は、イスラム教では崇拝行為と見なされると私が知ったのは、年を重ねてからでした。

そして、満足のいく性生活を送ることはムスリム女性の権利の一つであり、不満がある場合には正当な離婚理由となることを知ったのも、20代半ばになってから。これらは誰かに教わったわけではなく、『Believing Women In Islam(原題)』という本を読んで初めて知ったことです。イスラム教が内包している“女性の体や性愛”への機微について、それまでずっと気づかないまま生きていました。

むしろ、どうやって気づけたというのでしょうか。他の多くのムスリムの女性同様に、子どもの頃から性行為の「せ」の字も家庭では聞いたことがありませんでした。それは実家を出て、自立しても変わりませんでした。

代わりに言われていたのは、娘として“家族に恥をかかせない”こと。 他の若いムスリム女性同様、自分の体の変化について準備できていませんでしたし、慎み深くあることと恥が入り混じっていたんです。女性の体は、見て見ぬふりをされる存在だと思っていました。

そう感じていたのは私だけではありません。性行為について全く話されない環境で育つこと、ムスリム女性としてのこういった権利が曖昧であることは珍しいことではないのです。

詩人でBBCラジオのプレゼンター、『These Impossible Things(原題)』の著者でもあるサルマ・エルワルダニーさんは、エジプト、アイルランド、東南アジア文化の家庭で育った経験を次のように振り返っています。

「映画内でキスシーンがあったらすぐにチャンネルを変える家庭で育ちました。映画館にいる場合には、父は大きな舌打ちをして、私に見るなと言いました。スキンシップは悪くて汚いもので、隠されている存在のような気がしていました」

情報を求めて行き着いた先

サルマさんは自分の体や性行為についての情報を探すべく、インターネットを活用。そして辿り着いたのがポルノだったと言います。

もちろん、大人になった今では当時ポルノを通して見ていたものは、現実的な学びにはならないことは分かっています。でも、性他に若いムスリム女性として、何が自然なことなのかを知る手段はなかったのです。

「適切な性教育がされていない環境は、とても危険です。むしろ信仰を妨げる行為や、安全でない行動につながったりすることもあるのです」
「その上に、性行為やスキンシップをとる人たちへの過剰な羞恥心も懸念点の一つです。中には、セクシャリティを全否定されると感じるが故に信仰を捨ててしまう人もいます」

自分の体を知る大切さ

『The Greater Freedom: Middle Eastern Women Outside Of The Stereotypes(原題)』の著者、アリア・モーロさんは、「ムスリム女性はようやく今、マスターべーションや自分を探求することの大切さについて話し始めています」と語ります。

アリアさんは、自分の体と健全な関係性を築くことの大切さを力説。自分自身の体の仕組みに興味を持つことは推奨されるべきで、決して性的なこととして捉えられるべきではないと言います。

「体の見た目や機能をきちんと知るべきです。そうすることで恥ずかしく思うのではなく、感謝できるのです」

コメディアンで『Sex Bomb(原題)』の著者でもあるサディア・アズマットさんは、「社会的にムスリム女性は性行為に対して何らかの困惑を抱えていると思われがちですが、そんなことはないと思います」と話します。

「私はずっと性行為は楽しいものだと思っていましたし、羞恥心を抱いたことはありませんでした。性的対象である相手が乗り気だったらする、それだけでした」

しかしサディアさんは、大人になってから性行為と自尊心のつながりに気づいたそう。

「性行為についての考えが変わったのは、自分はもっと愛される価値があると気づいたとき。大人になるまで教わりませんでしたが、それこそが大事なことだと思います。自分が自分の性的な喜びを大切にできなかったら、他に誰ができるのでしょう?」

ムスリム女性たちの気づき

サルマさん、アリアさん、サディアさん、そして他の多くの若いムスリム女性にとって性行為は自分で向き合い方を見つけないといけないものでした。それぞれが違った道を歩んできたけれど、最終的に共通していたのが、性の大切さに気づくこと、性的に満足することは権利であるということ。

サルマさんは、「男性の性欲を満たすモノになるのではなく、自分も満足することを求めるようになるまですごく努力しました」と言います。

「長く難しい道のりです。子どもの頃から性行為に対してオープンで正直な会話をしていたら、もっときちんと教えてもらえていたら全然違ったと思いますね」

サディアさんは、自分に価値があると感じることの大切さを強調しました。

近年の変化

幸い、最近ではセクシャルウェルネスについての会話がされるようになってきました。

アンジェリカ・リンジーアリさんは、資格を持つセクシャルヘルスの教育者で、Instagramでは5万人以上のフォローを持つウェルネスコーチ。アンジェリカさんはムスリム女性たちがベストな性行為をするためなら、どんなトピックでもオープンに話します。

同様に、セクシャルウェルネスの専門家サメーラ・クェレシさんも、イスラム教の性に対するネガティブなステレオタイプをなくし、性生活を向上されるための活動をしています。

ムスリム女性にとって必要なセクシャルウェルネスの情報が届くようになったことで、未来もより明るくなってきているのです。

※この翻訳は抄訳です。Translation: Haruka ThielCOSMOPOLITAN UK