「下取り」と「買取り」それぞれのメリットとデメリットとは

 不要になったクルマを売却する時、多くの場合は「下取り」もしくは「買取り」という選択肢から選ぶことになります。

 できるだけ高値が付くに越したことはありませんが、いざ査定に出すと両者では売却価格に差がでることがあるようです。
 
 なぜ下取りと買取りでは売却価格に差が出るのでしょうか。

新車に乗り換える場合、購入店(新車ディーラー)で同時に査定をおこなう「下取り」と、専門業者の査定による「買取り」のどちらかを選択するのかは迷うところ[画像はイメージです]

【画像】ネットのクルマ一括査定サービスで「申込ボタン」を押したらどうなる!? 流れを画像とあわせてチェック(12枚)

 クルマが不要になったり、新しいクルマに買い替えたりするときに利用するのが下取りや買取りです。

 下取りと買取りは名前こそ似ていますが、実際の仕組みは大きく異なり、売却価格にも違いが出ることが一般的です。

 下取りとは、クルマを買い替える際、新しいクルマを購入する販売店(新車ディーラーなど)で、同時に古いクルマを引き取ってもらうサービスのことを指します。

 購入手続きをおこなう販売店で、同時に下取り車の査定から買取り業務までを一括でおこなってくれるため、手間や時間がかからないことが大きなメリットです。

 しかし買取りに比べて下取りの場合、査定額が低めになってしまう傾向にあります。ただし買い換えるクルマを値引きする代わりとして、査定額の上乗せ交渉に応じてもらえる場合もあるので、支払い総額を含めて比較検討すると良いでしょう。

 一方で、買取りとは、不要になったクルマを中古車買取り店などの買取り専門業者に売り渡すことを指します。

 多くの場合、複数の買取り業者に一括査定をして、最も高い査定額を提示した業者に売却することになります。一般的には、下取りの場合よりも高い値段で売却できる可能性が高いという点が大きなメリットです。

 では、なぜ買取りでは下取りよりも高値が付きやすいのでしょうか?

 関東の中古車買取り専門店の担当者は、その理由について、以下のように話します。

「私たちのような中古車買取り業者は、過去の中古車流通オークション(以下「オークション」)での販売相場をもとにした査定額のデータなどを豊富に取り揃えており、オークションで少しでも高値で売却する方法を数多く知っています。

 やはり、下取りをおこなう販売店よりも、買取りに関するノウハウはあると思いますので、それが高値での買取りにつながっているのではないかと思います」

 新車販売店は、自社のクルマを販売する能力には長けていますが、下取りしたクルマの販売に関しては販路が狭いことも多く、その点では買取り業者に分があるようです。

 また買取り業者の場合、いまの中古車のトレンドも熟知しています。

 人気車種というプラス要素はもちろんのこと、人気カラーやオプションパーツによるドレスアップといったカスタマイズについても、さらなるプラス要素として査定額に上乗せしてくれることもあります。

 もちろん、新車販売店もディーラー系列の中古車店に売却したり、オークションに参加したりもしていますが、買い取ったクルマの売却をメインに扱う買取り業者とのノウハウの差は、やはり影響するのが実情といえます。

 さらに買取りでは、通常の下取りでは価値がないと査定された旧車や、事故現状車、不動車、または過走行車などでも、例えば分解してパーツのみを海外の業者やネットオークションに売却もするなど、さまざまな販路を有しているのが大きな強みとなります。

 こうした複数の要因により、下取りよりも買取りのほうが、高値で引き取る可能性が高くなっているのです。

 クルマを少しでも高く売りたい場合、買取りはおすすめできるサービスといえます。

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 一方で、東京都の新車販売店の担当者は、昨今の下取り事情について、以下のように話します。

「近年は、新型コロナウイルスなどの世界情勢による納車遅れの影響により、“新車の納車待ちの期間に下取り車が車検を迎えてしまった”というケースがあります。

 そのようなケースで“査定額が変わってしまう”といった、ユーザーが不利になってしまうような事態にならないためにも、下取りに出す予定のクルマをあらかじめ高めに査定したり、納期と車検日を事前に伝えてもらい調整するなどの対策は取らせていただきます」

 このことから、すぐ引き渡しをおこなわなければならない買取りと比較しても、昨今の情勢を鑑みた場合、下取りが有利にはたらく可能性もあるといえます。

 たしかに、査定額だけを見れば買取り業者が有利となるケースが多いのは事実ですが、不測の事態への対応や、手間のかからないスムーズなやりとりに関しては、新車販売店による下取りを選択するメリットは十分にあります。

 何を重視するのかによって、下取りと買取りを使い分けるのが良さそうです。