会社で残業する、あるいは飲み会で遅くなって終電を逃してしまったとき、ホテルやインターネットカフェ(マンガ喫茶)を利用することがあります。

しかし近年、「カーシェア」で車を仮眠用に借りて、一切走らせることなく返却している人をネットでチラホラ見かけるようになりました。なるほど、BEV(電気自動車)であれば、周囲に迷惑をかけずに車中泊ができるのでは…?

これについてカーシェアの運営会社はどう考えているのでしょうか?

カーシェアの車を借りても”走らせない”人たち

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カーシェアのサービスを使うときの流れは、運営会社のインターネットサイトで会員登録をしておいて、使いたいときに車を予約を入れるというもの。

目的地となる駐車場のカーシェア車両が「空車」となっていれば予約して使えるため、自宅に帰れなくなったときに仮眠を取ったり素泊まりしたりする方法として、活用はできそうです。

エンジンをかけたら、バッテリーに蓄えられる電気でエアコンやシガーソケットなどが使えます。終電を逃した会社員など、ちょっとした事情でカーシェアを使いたい人にはありがたいかもしれません。

SNSや一般のニュースでも、カーシェアを使った車中泊の事例が挙げられています。

近年の社会情勢を考えると、COVID-19(新型コロナウイルス)に感染する可能性もあるため、気軽にホテルやインターネットカフェなどを利用しにくくなっているのが実情です。

その際、定期的に消毒や清掃が行われているカーシェアの車両なら、他人との接触を避けられて気兼ねなく使えると考えられているでしょう。

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しかし、カーシェアで使用されている車両の多くが「エンジン車」となる点は、忘れてはならないポイントです。

エンジンをかけたら車両に積まれているバッテリーに電気が蓄えられるのは強みとなるでしょう。カーシェアエアコンで車内温度を調節したり、シガーソケットやUSBコネクタがついている車ならスマートフォンやパソコンの充電が可能です。

しかし、エンジンをかけたまま駐車場に停めている状態では、周辺環境への騒音で迷惑をかけることも考えられるでしょう。

カーシェアが設置されている場所は都心のビル街近隣に立地したコインパーキングが多く、マンションなどの住居が隣接しているケースもあるため、騒音によるトラブルが発生する可能性も否めません。

BEVで「車中泊」はあり?カーシェア会社に聞いてみた!

ふとそこで思い立ったのは、「BEVなら周囲への騒音を気にせず車中泊ができるのでは?」ということです。

近年、「リーフ」や「アリア」、「サクラ」などBEVのラインナップを揃えている日産自動車。現在は東京都や神奈川県で「e-シェアモビ」というカーシェアサービスを提供しており、BEVのレンタカーなら実績十分です。

車の走行距離は”0km”で車中泊目的のカーシェア利用は問題ないのか、直接、e-シェアモビのコールセンターへ問い合わせてみたところ、次の回答がありました。

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「カーシェア車両の設置場所に停めたままの状態で、サービスをご利用になることは可能です。

ただし、BEV車両をご利用になられた際、駐車スペースに併設している充電スタンドで充電を開始しなければ、返却処理ができません。

設置場所によっては、充電器システムの都合(普通充電・急速充電など、設置場所によって充電スタンドの仕様が異なるのだとか)で、車両に残っている電気量次第では充電ができなくなってしまいます。

弊社のホームページでは設置場所の利用方法を詳しく載せているので、ご利用前に情報を確認いただきたいです。」

車両を設置している場所にそのまま駐車した状態で、サービスを利用するのは問題ないとのこと。しかし、車両に蓄えているエネルギー残量が極端に少なくなると弊害もあるようです。

e-シェアモビは、一部の設置ステーションに設置されている急速充電器では、車両のエネルギー残量が10%を切った状態では充電できない可能性があるとのこと。

返却手続きを完了させるためには”充電作業を開始させる”のが条件となっているため、充電ができない状態であればコールセンターへ連絡をしなければならなくなります。

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e-シェアモビの場合は日産のディーラーに設置されているケースが多く、ディーラーが一般向けに開放している充電器付きの駐車スペース以外に「e-シェアモビ専用」で駐車スペースが設けられているそうです。

もし、エアコンの多用などでバッテリー残量に不安を感じるなら、こまめに他の充電施設へ移動して充電作業を行うなど工夫が必要となるでしょう。

これを踏まえると、エンジン車、BEV問わずにカーシェアを利用した車中泊は短時間で「非常時」に利用できるものと想定すべきではないでしょうか。周囲とのトラブルが発生しない程度に、カーシェアでの車中泊を活用してみるとよいかもしれません。