罰金◯万円…指定金額の支払い義務はない?

 コンビニや月極駐車場では、長時間の駐車や無断駐車をしているクルマを見かけることがあります。
 
 そのようなクルマに対して、「無断駐車を発見した場合は罰金として◯万円を申し受けます」というような警告文を貼り、強く注意喚起している様子がうかがえます。
 
 このように警告文に記載されている罰金は何を基準に定められているのでしょうか。

無断駐車などの不正利用を警告する看板。実際に私有地に無断駐車されるトラブルは多いという

 コンビニやスーパー、月極駐車場などの駐車スペースでは、長時間の駐車や無断駐車をしているクルマを見かけることがあります。

【画像】さすがにヤバい! 「絶対に無断駐車できない駐車場」を画像で見る(15枚)

 そのようなクルマに対して「無断駐車を発見した場合は罰金として◯万円を申し受けます」「無断駐車は固くお断りします。発見次第、レッカー移動および罰金◯万円申し受けます」というような、警告文で注意喚起している様子がうかがえます。  

 また、放置車両に対しては、その土地の所有者から直接、罰則に関する張り紙をされることもあります。

 記載されている罰金金額は、1万円ぐらいのところから、高いところでは数億円などの警告もあるなど、さまざまです。

 このようなさまざまな金額で設定されている罰金に対して、クルマの使用者は従う必要があるのでしょうか。

 結論からいうと、罰金という名目で、支払いに応じる必要はないというのが実情です。

 そもそも、違法駐車による罰金が生じるおそれがあるのは公道であり、コンビニや月極駐車場などを含む施設の駐車場などは、私有地にあたるため法律上の罰金は適用されません。

 公道での違法駐車に関しては、道路交通法第44条で以下のように定められています。

「車両は道路標識等により停車および駐車が禁止されている道路の部分および次に掲げるその他の道路の部分においては、法令の規定、もしくは警察官の命令により、または危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、または駐車してはならない」

 一方で、私有地における違法駐車を取り締まる法律は、民法709条における「不法行為」として扱われるのが実情です。

 つまり私有地である駐車場に無断駐車をした場合であっても、道路交通法上では罰する法律がありません。

 そのため、迷惑駐車の事実があり警察に通報したとしても、公道として扱われない以上、明確な犯罪行為がないので取り締まることは難しいことが考えられます。

 また無断駐車の車両に対して、勝手にレッカー車を手配して移動したり、チェーンなどでクルマを固定したりすることも認められていません。

 レッカー車での無断駐車の移動は公道上のみの措置であり、道路交通法第51条による「道路における危険の防止・そのほか交通の安全と円滑を図るため必要な限度内」は、私有地では認められていません。

 くわえて、チェーンやタイヤロックなどは相手のクルマに傷をつける恐れがあり、場合によっては刑法261条「器物破損」が適用されます。

 このように自分の駐車場や私有地に見知らぬクルマが無断駐車している場合、自力でそのクルマを対処することは「自力救済」となり、現在の法律では禁止されているのです。

無断駐車における損害賠償金の基準は?

 このことから、コンビニや月極駐車場などの無断駐車は、罰金を支払う必要はないというのが実情です。

 しかし、前出のとおり、私有地に対する迷惑駐車は、民法第709条の不法行為に該当するおそれがあるため、民法上での損害賠償の請求をおこなうことが可能です。

 実際に、不法行為として損害賠償が請求された事例もあるようです。

 過去に大阪府茨木市にあるコンビニの駐車場を1年半ほど無断で利用していた男性に対し、駐車料金に弁護士費用と慰謝料を加えて、合計でおよそ920万円もの請求が認められる事例がありました。

 さらにほかにも、2022年7月22日、川崎市の公園の駐車場内に1年以上放置されていたバスを、市が所有者に代わり強制撤去をおこない、かかった費用のおよそ100万円の請求をする予定です。

街中の駐車場で見かける無断駐車に対する警告看板だが…その内容はさまざま

 では、損害賠償額はどのような基準で決定しているのでしょうか。

 過去の事例を踏まえて見てみた場合、近隣のコインパーキングなどの利用料金、または月極駐車場における1日の駐車料金を基準額とし、その基準額に迷惑料などをくわえた、約2、3倍の金額を賠償金として請求するのが一般的です。

 そのため、無断駐車に対する賠償額は、実際に発生した損害に対しておこなわれることがほとんどです。

 しかし、無断駐車の状況によっては、迷惑料として賠償額に盛り込み、請求されることもあるようです。

※ ※ ※

 コンビニや月極駐車場などの私有地でみかける「無断駐車を発見した場合は罰金として◯万円を申し受けます」の警告に対して、法的拘束力はないのが実情です。

 それでもなお、私有地の至る所で警告文を見かけるのは、土地の所有者の悲痛の叫びといえます。

 非常に迷惑極まりない行為である私有地への無断駐車。当然ですが、決められたスペースにきちんと駐車をするようにしましょう。