「(旧統一教会関連団体の)定義がわからない」

15日、総務大臣政務官就任会見でこう発言したのは杉田水脈衆議院議員(55)。’19年に熊本県内で開催された統一教会関連団体主催のシンポジウムで講演したことを指摘されての回答だ。

杉田氏は、’16年に自身のツイッターで《幸福の科学や統一教会の信者の方にご支援、ご協力いただくのは何の問題もない》と投稿したことについても問題視されているほか、これまで数々の発言で批判を浴びてきた。

「杉田氏は女性やLGBTなどの性的マイノリティを侮辱する発言を繰り返してきました。これは憲法で定められた“法の下の平等”や“個人の尊厳”を著しく損ねるもので、議員としてはあるまじき行為。

杉田氏を総務政務官に抜擢したことは、岸田文雄首相(65)が彼女の言動にお墨付きを与え『もっとやれ』とGOサインを出したということに等しいのです」

そう警鐘を鳴らすのは、同志社大学教授で政治思想やフェミニズム理論が専門の岡野八代教授。

岡野教授は、杉田氏が’18年に雑誌『新潮45』の8月号に寄稿した「LGBTは(子供を作らないから)生産性がない。そこに税金を投入するのが果たしていいのか」という趣旨の論文に憤り、自身もレズビアンであることを公表。反論してきた当事者だ。

侮辱的な発言の矛先は、LGBTだけにとどまらない。彼女にとっては、女性も差別の対象だ。

「’14年10月には国会で、『日本で女性が輝けなくなったのは、男女共同参画の名のもと伝統や慣習を破壊するナンセンスな男女平等を目指してきたことに起因する』として、『男女平等は絶対に実現しえない反道徳の妄想です』と発言。

また’20年には、女性への性暴力に関して自民党の部会で『女性はいくらでもウソをつける』と発言し問題になりました」(政治部記者)

加えて、元TBS記者の山口敬之氏から性暴力を受けたとして訴えを起こしていたジャーナリストの伊藤詩織さんについても、英国のBBCの番組で「男性の前で記憶がなくなるまでお酒を飲んだのは、女として落ち度がある」などと述べ、「セカンドレイプだ」と批判されてきた。

LGBTの当事者団体である一般社団法人fairを主宰する松岡宗嗣さんは「差別発言をすればするほど出世してしまう状況に憤りを感じる。国会議員を辞職すべき」と怒りをあらわにする。

■国民の信任を得て当選した議員ではない

いったいなぜ、杉田氏が総務政務官に抜擢されたのか。

元参議院議員で、旧統一協会問題に詳しいジャーナリストの有田芳生さんは、こう分析する。

「いわゆる”安倍枠”です。安倍さん亡き後、岸田首相としては安倍派との関係をどう保っていくかが課題でした。そこで、安倍さんの“推し”だった杉田氏を抜擢し、安倍派の協力や右派層の人気を得ようとしたのでしょう」

前出の岡野教授は、杉田氏は国民から直接の信任を得て当選したわけではない、と指摘する。

「杉田氏は’17年に自民党に入る前から、国連人権委員会の“女子差別撤廃委員会”に出席し、『日本軍による慰安婦の強制連行はなかった』などの発言をしていました。

こうした発言が安倍元首相に気に入られ、杉田氏とは縁もゆかりもない安倍元首相のお膝元である比例中国ブロックで出馬。比例名簿の上位に据えられ、”特別枠”で当選を重ねてきたんです」

■政務官就任で政策は実行しやすく

恩人である安倍元首相の期待に応えるべく、“先兵”となって活動してきた杉田氏。

「先の参議院選で争点となった、選択的夫婦別姓制度の導入に関しても、足を引っ張ってきた議員の一人が杉田氏です」

こう明かすのは、選択的夫婦別姓・全国陳情アクション事務局の井田奈穂さんだ。

「’20年12月に、この先5年間の女性政策をまとめた“第5次男女共同参画基本計画”が発表されましたが、当初盛り込まれていた”選択的夫婦別姓”の文言は削除されていました」

さらに当初案にあった「(選択的夫婦別性への)必要な対応を進める」の文言は「夫婦の氏に関する(中略)さらなる検討を進める」に後退していたという。

「発表後、杉田氏は自身のツイッターを更新。《最終的に男女共同参画基本計画案から「夫婦別姓」の文言も削除させました。一安心です》とフォロワーに対して誇らしげに報告していました」

井田さん自身も、杉田氏の秘書から国政にかかわる人物とは思えない対応をされている。自民党議員を対象に、選択的夫婦別姓に関する勉強会を開いた際のこと。

「杉田議員は勉強会に参加できず、『資料だけ欲しい』と言っていると主宰者に聞いたため、勉強会終了後、私が杉田議員事務所に持参したんです。すると秘書の方が、資料をさっと受け取ると『近寄らないで』と、手で追い払うようなしぐさをしてドアを閉めたのです。今後のために名刺交換する余地も与えてもらえませんでした」

さらに、杉田氏を自民党に招いた安倍元首相の考え方は統一教会の思想にも近いという。

「彼にとって女性活躍はあくまで経済政策で、ジェンダー平等には反対。基本的に女性が家事や介護を担い、三歩下がってわきまえるという戦前の家族観をよしとしているのです。これは統一協会や日本会議の思想ともシンクロしていると感じます」(井田さん)

こうした思想を受け継ぐ杉田氏が、総務省の“ナンバー3”として権力を握ってしまったわけだが、今後どうなるのか。

「政務三役に入ると、自分の政策を実現しやすくなるので国会議員にとっては非常に大きいことです。秘書官が2人付きますから官僚を動かす力も大きくなる。つまり、彼女がデタラメな指示を出しても、官僚は動かざるをえない。非常に危険です」(有田さん)

杉田氏を要職に就けた岸田首相が目指す日本は“女性蔑視国家”なのだろうかーー。