親世代とは全然違う価値観や慣習が広がっていることを理解する必要があります(写真:pearlinheart/PIXTA)

小中学生の59%が“ネッ友”がいて、そのうち15%は実際に会ったことがある。

「そんなにいるの?」、あるいは「それくらいはいるだろう」。「安心した」、あるいは「危ない」。“ネッ友”とはネット上で知り合い、やり取りをする友だちのことですが、このデータを聞いてどう思われたでしょうか。

ネッ友と聞くと親世代は眉をひそめがちですが、趣味などの共通点を持つ人と出会いやすい上に、感情を共有し、時に励まし合い、高め合えるなどのメリットも多く、決して悪いものではありません。しかし、トラブルなどのリスクは高いだけに、「大丈夫だろう」という楽観視は禁物。親としては何らかの対策が必要でしょう。

前述したデータは、子ども向けサイトのニフティキッズが実施した「ネッ友」に関するアンケート調査によるもの(回答者数1465人 実施期間2022年6月15日〜7月6日)。ニフティキッズの閲覧者を対象にしたアンケートだけに、ネット利用頻度の高い子どもが集まっている可能性こそあるものの、それでも決して低くない数値といえるのではないでしょうか。

良い相手と出会えることも多いが…

まずアンケートの主な項目をあげていくと、【今、ネッ友はいる?】の回答は、「いる」が59%、「いない」が41%。さらに、【ネッ友と知り合ったきっかけ】の回答は、ゲームが48%、LINEが23%、Twitterが19%、TikTokが11%、Instagramが9%、その他が31%。ゲームとSNSが大半を占めているだけに、この2つを押さえておくだけでも、それなりの対策になりそうです。

次に、【実際にネッ友に会ったことがある?】の回答は、「ある」が15%、「ない」が85%。

【(「ある」人へ)会ってみてどうだった?】の回答は、「ネット上での印象と変わらなかった」が49%、「ネット上での印象よりよかった」が36%、「ネット上での印象より悪かった」が2%、「聞いていた情報(性別・年齢など)とちがっていた」が5%、その他が8%。

この調査では、実に85%もの子どもたちが良い相手と出会えたようです。しかし、だからといって安心できるわけではありません。性別や年齢の虚偽は性的なトラブルと紙一重である以上、「もし自分の子どもが『聞いていた情報と違っていた』の5%に当たったら……」と心配ではないでしょうか。

一方、【(「ない」人へ)ネッ友に会いたいと思う?】の回答は、「会いたいけどこわい」が29%、「会いたいけどおうちの人に禁止されている」が15%、「会いたいけど友だちに会わないほうがいいと言われている」が2%、「会いたくない」が29%、「会う予定がある」が5%、その他が20%。

「こわい」と「会いたくない」で約6割を占めていることをどう見ればいいのか。親の言うことを守っている15%を合わせても、「うちの子どもは大丈夫」と安心できないでしょう。それは、もしその気持ちが距離の縮まりや月日の経過とともに薄れたら、「会う」という選択肢を選ぶことになりうるからです。

「ウチの子は怖がりだし、会わないから大丈夫」と決めつけていないかは要注意。大人でも、毎日のように連絡を取り合い、共通点が増えるほど、会うことへの怖さが薄れ、多少の疑問点があってもスルーしてしまいがちなだけに、「会わない」ではなく「会うかもしれない」という前提が必要でしょう。

子どもたちのネッ友との付き合い方には、どんなリスクが潜み、どんな対策が必要なのでしょうか。

リア友との違いに現代っ子らしさ

ニフティキッズのアンケートには、あと2つ興味深いアンケート結果がありました。

1つ目は【ネッ友とリアルの友だちとの違いは何?】という質問で、子どもたちの主な回答は「リアルの友だちと違って、ネッ友は相手の顔がわからない」「ネッ友ならいつでも遊べるけど、リアルの友だちとは限られた時間でしか遊べない」「ネッ友は気楽、リア友は人間関係が複雑」「ネッ友は素顔を見せずに話せる、リア友はありのままで話せる」「ネッ友は思っていることを何でも話せるけど、リアルの友だちには遠慮しがち」の5つ。

リア友との違いに「顔がわからない」「いつでも遊べる」「気楽」などの付き合いやすさをあげ、さらに「ありのままで話せる」「何でも話せる」と精神的に頼っている様子がうかがえます。これは「簡単さや合理性を優先させる」「空気を読むなどの窮屈さを感じて本当の自分を出せる場所を求める」という現代の子どもらしい特徴でしょう。

私のもとにも、「小6の娘にはゲームで知り合ったネッ友が20人以上いて、『学校の友だちには言えないことも言える』とこちらが心配になるほど信頼しています。何人かとは会ったことがあるみたいですが、そろそろ危ない年ごろなので、やめさせたほうがいいですか?」と戸惑う相談者さんからの問い合わせがありました。

続く2つ目は【ネッ友の良くないところはどんなところだと思う?】という質問で、子どもたちの主な回答は「年齢や性別など、いくらでも嘘をつける」「相手の素性が全くわからないところ」「会いたくなってしまうこと。それがトラブルにつながるかもしれないこと」「文字だけだと気持ちが伝わりにくい」「人によって悪口や暴言を吐く人がいる」の5つ。

「嘘をつける」「素性がわからない」「会いたくなってしまう」というリスクを自覚しているものの、子どもたちが自らそれを回避できるかといえば不安が残ります。だからこそ「気持ちが伝わりにくい」「暴言を吐く人がいる」という苦い経験談を語る子どもたちもいて、彼らなりに少しずつ学びを得ているのでしょう。

私の相談者さんにも、「中1の娘が『SNSで知り合った人から暴言を吐かれて怖かったけど、DMだけのやり取りにしてLINEのIDは教えなくてよかった』と言っていた」という母親がいました。自分なりに、本名や年齢も言わずに付き合うなどの対応策を考えている子どももいますが、やはり親から一定のガイドラインを作ってあげたほうがいいでしょう。

ネッ友が「会う」までの手堅い流れ

今後、SNSやゲーム、あるいはその他のアプリやメタバースなどでのやり取りが増えることはあっても、なくなることはないでしょう。親としては、シャットアウトするのは不可能であり適切ではないからこそ、ガイドラインを作ったり、リテラシーを高めてあげたりなどの対応が求められています。特にメリットの裏にあるリスクや失敗に関するガイドラインとリテラシーは手厚くフォローするべきではないでしょうか。

たとえば8月16日放送の「スッキリ」(日本テレビ系)でこのテーマが扱われたとき、街頭インタビューに「TikTokがきっかけでネッ友になり、その後リア友になった」という中1と中2の少女2人が登場しました。2人は「好きなアーティストが同じで意気投合し、その後、顔写真を送り合い、個人情報を教え合い、親に相談したうえで会った」ようです。

この2人のように、「親に報告しながら、1つずつステップを踏んでいく」という手堅さがあればリスクを大幅に減らすことができるでしょう。ただその一方で、どんなに意気投合しているように見えた相手でも、「仲がいいと思っていたのに、突然暴言を吐かれた」「嘘をついているかもしれないと感じる」「会うのはもう少し先がいいのに誘われ続けて、断りづらくて困っている」などの状況に陥るケースも考えられます。

そのときどうすればいいのか。たとえば「暴言を吐かれた時点で、やり取りをやめる」「嘘をついているかもしれないと思ったら率直に聞いてみて、疑いが晴れなかったら連絡頻度を減らす」「怖さが残るうちは会わず、断り方のパターンをいくつか用意する」などの具体的な方法をあらかじめ伝えておけば、1つのリスクヘッジになります。

また、もし子どもが相手に個人情報を教えていたら、いきなり連絡を絶つと「感情的になった相手が会いに来る」というリスクがあるので、「少しずつ距離を取りながら徐々にフェードアウトする」などの対策が必要でしょう。

いずれにしても、最も避けなければいけないのは、「子どもが知らないところで相手の怒りが増幅していく」というケース。人間の感情は良くも悪くも、会っていないときのほうが、思いが募りやすいところがあるものなのです。

特定のネッ友に感情を集中させない

その意味で会わずにやり取りを重ねるネッ友は、相手への「好き」という好意や、「嫌い」という悪意が募るリスクが高いため、あまり距離感を縮めすぎないことが重要。特に、ある日突然、「こんなに信頼しているのに何でなの?」「急に冷たくなったから許せない」「あっさり断りやがって!」「こんなに時間をかけて話したのに会わないなんてありえない」などの強烈な感情をぶつけられたら怖いだけに、それを未然に防ぎたいところです。

共通の趣味から関係がはじまることの多いネッ友は、短期間で仲が深まりやすく、「この人は学校の友だちとは違う。本当の理解者かもしれない」とのめり込んでしまうケースが少なくありません。しかし、それは互いにとってリスクを抱えることになるので、できるだけ一人への思い入れを強くせず、複数のネッ友に感情を分散させたほうがいいでしょう。これは「自分が悪意の被害者にも加害者にもならない」ための対策として、ぜひ覚えておいてほしいところです。

その他の主な対策としては、「子どもの使用アプリを把握しておく」「実際に使ってみてリスクを確認する」などの事前対策と、「待ち合わせは2人だけでしない」「日中に人気の多いところで会う」「帰る時間をあらかじめ決め、逃げる準備もしておく」などの対面対策があります。

事前対策で大切なのは、メンテナンスのように定期的に行うことと、「親はいいけど子どもはダメ」という不公平さを感じさせないこと。特に後者は、「子どものスマホを一方的に見る」のではなく、互いに見せ合って公明正大に行うことで、親への信頼性がグッと増します。さらに、「親子共通の“〇〇家のインターネットルール”を作る」ことも、子どもにガイドラインを守らせる1つの策になるでしょう。

一方、対面対策は念には念を入れてリスク管理をしておくのがベター。実際、「嫌がられても待ち合わせ場所まで親が一緒に行く」という方針の人も多く、「急にDMが来て会う約束をさせられた」「会ってすぐに告白された」「待ち合わせ場所におじさんが来て驚いた」などの経験談も一部ある以上、子どもの安全を最優先に考えたほうがよさそうです。

そもそも“友だち”には2種類ある

ニフティキッズのアンケートには、決して見逃せないオチがありました。最後にアンケート概要が書かれていましたが、「有効回答数」という項目に「1465人(うち女性79%、男性7%、選択なし13%)」と書かれていたのです。

つまり今回のアンケート回答は、「ほぼ少女たちによるものであり、その6割にネッ友がいて、15%が会っている」ということ。その意味では、「よりトラブルに巻き込まれるリスクが高い」ということなのかもしれません。

8月13日、福岡県北九州市の民家で女子高生と母親が刃物で刺され重傷を負った事件がありました。母子を刺したとみられる東京都の17歳少年と女子高生は、「ネット上でやり取りをしていただけで会ったことはない」「少年はGPS機能付きのアプリを使って女子高生の情報を得ていた可能性がある」などと報じられています。少年が事件直後に死亡したため不明点が多いものの、ネッ友のリスクを考えさせられるニュースであったことは間違いありません。

私もかつて友だち作りの方法をあげた『友活はじめませんか?』という本を書いたことがありました。あまり知られていませんが、“友だち”には大きく分けて2種類があり、1つは学校や職場などで受動的に出会う友だちで、もう1つはネットや趣味の場などで能動的に出会う友だち。

学校や職場で受動的に出会う友だちは基本的に選べないし、共通点が少ない人も多い一方、ネットや趣味の場で能動的に出会う友だちは明確な共通点に加えて「自分で選んだ」という実感もあり、特別な存在になりやすいところがあります。

ネッ友はまさに後者であり、親にしてみれば「何でそんなに仲がいいの?」と驚いてしまうこともあるでしょう。しかし、子どもたちからみたら、「学校の友だちとネッ友の両方がいて当たり前」「ネッ友の中にも種類やランク付けのようなものがある」という感覚もあるなど、親が理解を進めなければいけないところも少なくないようです。

ネッ友とリアルに会うことの賛否はともかく、今後はますますネット上のコミュニケーションが増えていくでしょう。子どもたちがそれを安心して楽しめるかどうかは、大人たちの理解や環境作りにかかっているのかもしれません。

(木村 隆志 : コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者)