酒に酔って大音量で音楽を流し、ゴミは至る所にポイ捨て...。埼玉県飯能市内にある入間川の観光名所「飯能河原」では、以前はバーベキュー客で混雑してこんな惨状だった。

ところが、市などが河原に有料エリアを設けたところ、騒音もなくなって静かになり、ゴミが10分の1以下に減ったという。客は半減するなどしたものの、有料化が奏功したのではないかとネットで話題になっている。

「禁止事項が平然と行われています」有料化以前は惨状

「最近、飯能河原の一部の利用者により、大音量での音響機器の使用や昼夜を問わず大声で騒ぐ、直火で調理等をする、ごみを放置する、夜間から深夜にかけて花火をするなど、飯能河原での禁止事項が平然と行われています」

飯能市サイトでは2021年6月8日、こんな文言で始まる異例のお知らせが投稿された。

新型コロナウイルスの感染拡大で、アウトドアの人気に火が点き、東京都内からも車で1時間強で行ける飯能河原には、多くのバーベキュー客が訪れ、過密状態になった。一部にマナーの悪い迷惑客がおり、同年のゴールデンウィークを中心に、前出のような光景が連日繰り返された。

「そのほか、周辺道路での通行を妨げる駐停車、住宅やごみ集積所へのごみの投棄など、違法行為や迷惑行為が多数発生しており、さらには酔ったうえでの殴り合いの喧嘩なども発生しています」

こんな状況も報告され、住民らから警察への通報が相次いで、市も、対応に苦慮していると明かした。そして、「このままでは、ルールの見直しなどのほか、利用の制限などを検討せざるを得ない状況です」と告知した。

こうした状態は改善せず、市などでは、21年8月に県が緊急事態宣言を出したのを機に、飯能河原を閉鎖する措置を取った。10月以降のシーズン外は、閉鎖が解除されたものの、市などでは、22年4、5月、ゴールデンウィークを中心に利用の制限に踏み切った。

有料化で、マナーの悪い迷惑客が予約しなくなった

この制限では、火気が使用できる有料エリアを設け、運営する奥むさし飯能観光協会のサイトで予約を受け付けた。これを有料化の実証実験と位置づけ、利用者が増える夏休みに合わせ、7月23日からは、週末やお盆期間に第2弾を始めた。エリアの利用は、1人1000円で、小学生以下は無料となっている。

この様子がテレビのニュース番組でも8月18日放送で取り上げられ、マナーがよくなりトラブルもなくなったと伝えられると、ツイッターでは、有料化が奏功したのではないかと大きな注目を集めた。

奥むさし飯能観光協会の担当者は19日、J-CASTニュースの取材に対し、次のように有料化実験の手ごたえを話した。

「2回目の最中ですが、住民の方からは、騒音もなくなり、ゴミが非常に減ったとうれしいお言葉をいただいています。ゴミについては、10分の1から20分の1ぐらい減っており、ゼロに近い感じですね」

マナーの悪い人が予約しなくなったため、飯能河原の人出は、1日数千人だったのが有料化で数百人に減った。半分以下のときもあり、1日500人の枠に満たないことも多いという。

ただ、17時以降は入場できないことになっているが、監視員がいないため、花火などをしに来る人は時々いるとした。ケンカはなくなったものの、酔いつぶれて救急車が出動したことが2回目実験で2度あったという。また、バーベキュー無料の近くの観光場所などに客が流れているともしている。

とはいえ、有料化による適正利用を進めた結果、思わぬ副次効果も生まれていると明かした。

「飯能駅に向かう途中、住宅地のゴミ集積所にバーベキューゴミを捨てる人もけっこういたのですが、それもなくなって街全体が綺麗になったという声を聞いています。ゴミは普通『お持ち帰り下さい』と呼びかけますが、ゴミ回収エリアがありますので、『捨てて帰って下さい』と呼びかけています。手ぶらで帰れますので、『この値段なら安い』との声もいただいています。また、台風が近づいたときは、予約者の方に中止の案内を送っており、増水で中州に人が取り残されるようなことも事前に防いでいると思っています。天気がよくなって来た人も何組かおられましたが、危険だと伝えるとご理解していただけました」

2回目の実験は、8月28日まで行うが、観光協会では、23年以降は正式に有料化を行う方向で考えているとしている。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)