コロナ感染で保険金が受け取れるケースとは?(写真:zak/PIXTA)

まだ終わりの見えない第7波、国内でのコロナ感染者数は累計1600万人を突破しました。国民のおよそ8人に1人がコロナ感染を経験するなかで現在爆発的に増えているのが、保険金請求です。コロナの感染時には、生命保険などで給付を受け取れるためです。

大手保険会社のコロナによる入院給付金の支払件数は、今年4〜6月だけですでに前年度分を上回り、実績を公表している日本生命では約27万件、明治安田生命で約12万件と、いずれも昨年1年間の約1.8倍に膨らんでいます。

コロナ感染で保険金を受け取れるケース

このうち特に多いのが「みなし入院」による給付です。病気やケガに備えて加入する医療保険や生命保険の医療特約では、入院をしたときに給付金が支払われるのが一般的ですが、コロナは特例として自宅療養や宿泊療養でも入院とみなして、保険の給付対象とされています。加入している保険に「入院したら1日1万円」のような入院給付の保障がついていれば、コロナにかかって療養したときに保険がおります。

給付されるのは原則として、PCR検査などでコロナの陽性と診断された日から療養解除日までです。入院給付金の設定金額によっては、数万円から10万円以上を受け取れるケースもあるようです。

保険の受け取りには、保険会社所定の請求書類と、感染したことや療養期間がわかる証明書が必要です。市区町村や保健所が発行する療養証明書、就業制限・解除通知、入院勧告書などが使えます。ただし現在は感染者数増加により証明書発行までに1カ月以上かかる地域が少なくありません。そこで、陽性判明時に登録する厚生労働省の管理システム「My HER-SYS」のスクリーンショットでも、保険請求できることがあります。これらの証明書に記載された療養期間が、入院給付金の対象になります。

なお、死亡時に保険金が支払われる保険に加入していて、万が一コロナ感染により亡くなったときには死亡保険金がおります。また、「災害割増特約」というオプションのついた契約であれば、通常の死亡保険金とは別に災害保険金も受け取れます。災害というと自然災害や火災などをイメージするかもしれませんが、生命保険ではこれらのほか交通事故や所定の感染症を災害として取り扱っています。

子どもの保険や団体保険からもらえることも

上記は個人で契約する生命保険や医療保険の取り扱いですが、勤務先を通して加入する団体保険(グループ保険)でも、コロナに対して同様に給付されることが多いようです。特に入院関連の保障に加入している場合は、勤務先の保険担当の窓口などで確認してみるといいでしょう。

ほかにも、コロナ感染で給付を受けられる保険はいくつかあります。たとえば「傷害保険」は、ケガで入院や通院をしたときに保険がおりるものですが、感染症への特約を付けていれば、コロナに感染して入院・通院、自宅療養をしたときに保険金が支払われます。生命保険や医療保険に比べるとケガの保険はあまりなじみがないかもしれませんが、子どもが学校や保育園の団体保険として契約している場合もあります。学生総合保障制度や共済などとして加入することもあります。

また、旅行保険でも対象になる場合があります。病気による死亡や治療費用への補償が含まれるプランなら、旅行中にコロナ感染し発病・治療開始したときに保険金が支払われます。海外旅行保険の場合は現地の病院でかかった治療費用やPCR検査費用、帰国前検査で陽性になったときにかかった隔離用のホテル代などが対象になります。こちらも、ホテルや自宅で療養した期間を入院期間とみなすことが多いようです。国内旅行向けではコロナ感染は対象外とされる保険が多いのですが、一部、旅行中に感染したときに保険金を受け取れるものもあります。

ただし、国内外問わず旅行保険で補償されるのは基本的に旅行中のみです。帰宅後に療養した場合には、感染や発病が旅程中で、かつ30日以内に治療を開始したことなどを要件としていますから、旅行とは関係ない時期に感染しても、保険は受け取れません。

最近は、コロナへの備えを強化した保険も人気を集めました。ひとつは従来型の生命保険や医療保険にコロナなど感染症への保障をセット契約するもので、コロナで入院したら給付金額が上乗せされたり一時金を受け取れたりします。対面型の営業に強い大手・中堅生保が、おもに既契約者向けに提供していました。

もうひとつ、ネット専業保険を中心に展開されているのが「コロナ保険」です。コロナ陽性と診断された時点で、入院の有無を問わず5万円や10万円などの一時金が支払われるような内容になっています。保障(補償)対象をコロナに特化し、単品で契約できるものもあります。コロナ以外の病気を対象外とすることで保険料が抑えられ、ワンコインなどリーズナブルな掛け金と、ネットやスマホだけで契約手続きを完了できる手軽さが支持され、爆発的な人気となりました。

しかしながら第6波以降は急速な感染拡大とともに保険金給付が想定以上に膨らみ、負担を抱えた保険会社が給付金額の削減や保険料の値上げ、さらには販売停止にまで追い込まれる事態が相次ぎました。今ではコロナでの保険金を売りにした保険はごく一部を除いてほとんど販売されていませんが、以前に契約した保険がまだ有効なら、感染したときに受け取れるかもしれません。

コロナが5類になれば保険がおりなくなる可能性

このように現在、コロナ感染時に給付される保険はさまざまあります。もしも感染したときには、契約中の保険で何らかの給付が受けられないか、契約内容や保険会社のコロナへの対応を確認してみましょう。

ただし、今後は要注意です。自宅療養でも入院とみなして給付金を受け取れるといった扱いは特別対応で行われていることがほとんどで、感染拡大状況や法律の見直しなどによって変わる可能性があるためです。

現下ではコロナの位置づけについて、感染症法上の「2類」から「5類」相当への変更が検討されています。上述した保険の多くは、コロナが感染症法の新型インフルエンザ等として「2類」に分類されていることを前提に給付をしています。ですから今後、分類が変更されれば、給付の対象外となる可能性があるのです。国の分類が変わったらすぐに必ず保険の取り扱いが変わるわけではありませんが、自分や家族が加入している保険の取り扱いがどうなるか、契約先の保険会社の動向を注視しておくことが重要です。

保険はいざというときがなければ、ほとんど目を向けることはないものです。無事に暮らせることが何よりではありますが、もしもコロナ感染など想定外のことに見舞われたときにどのように役立つのかを把握しておくと安心です。そのためにまずは、自分や家族の契約先がどこなのか、どんな契約内容なのかを改めて確認しておきましょう。

(加藤 梨里 : FP、マネーステップオフィス代表取締役)