「ネコは飼い主を愛しているのか?」という疑問に研究者や獣医師が回答したり、子ネコが飼い主を親のように安心・信頼できると思っているという研究結果があったりと、「ネコ好きの人がネコを愛しているのと同じように、ネコも愛情に応えてほしい」と考えるネコ好きの人は多いはず。それに対し、「そもそもネコ好きの人はネコが望んでいる形で正しく愛情を伝えられているのか?」という点に着目した研究を、イギリスのノッティンガム・トレント大学が報告しています。

Investigation of humans individual differences as predictors of their animal interaction styles, focused on the domestic cat | Scientific Reports

https://www.nature.com/articles/s41598-022-15194-7

The most experienced cat owners are giving their pets unwelcome affection, study suggests | Nottingham Trent University

https://www.ntu.ac.uk/about-us/news/news-articles/2022/08/the-most-experienced-cat-owners-are-giving-their-pets-unwelcome-affection,-study-suggests

Many Cat Lovers Are Giving Their Cats Unwanted Affection, Study Suggests : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/many-cat-lovers-are-giving-their-cats-unwanted-affection-study-suggests

動物にはそれぞれ、なでられるのが好きな体の部位と、抱きしめられて心地良い方法があり、ネコについても「ネコを安心させ、少なくとも敵意を減らし、愛情深く扱う方法」についての研究があります。ノッティンガム・トレント大学の研究者は「CATガイドライン」というものを提示し、ネコに選択と制御を提供し(Choice and control)、ネコの反応に注意して行動し(Attention)、触る場所をネコの側頭部に限定する(Touch)、というネコとの触れ合い方を奨励しました。



一方で新しい研究結果によると、ネコ好きの人は、ネコが好ましく思わない・快適に感じないとされる場所をなでる傾向があり、ネコがどのように扱われるかの選択肢を狭めていると報告されています。ノッティンガム・トレント大学で動物の行動と福祉を研究しているローレン・フィンカ教授は、「すべてのネコは個性的で、多くのネコはどのように人間と接するかについて、特定の好みを持っています。しかし、すべてのネコができるだけ快適に過ごし、それぞれの特定のニーズが満たされていることを確認するために、従うべきいくつかの優れた一般原則もあります」と研究について説明しています。

研究では、イギリスのイヌ・ネコ保護施設と協力し、120人のボランティアが初対面のネコ3匹と5分間触れ合う実験が行われました。ボランティアは事前アンケートで自身の性格やネコと触れ合った経験について回答し、自宅で飼っているネコと同じようにネコと交流するように指示されました。実際に触れ合う時間では、なでるタイミングをできるだけネコに選ばせ、あまり積極的には触らないようにし、ネコの反応とボディランゲージに注意を払うように指示されました。合わせて、耳の付け根や頬、あごの下に触れるのがネコにとって最善であることも示唆されました。

実験の結果、自身を「経験豊富でネコに精通している」と評価した人々ほど、あらかじめネコにとって好ましいとされた部位をなでるのではなく、ネコがあまりなでられるのを好まないしっぽの付け根やおなか、脚、背中に触れる傾向があったとのこと。また、家でより多くのネコを飼っている、もしくはより長くネコを飼っていると回答した人ほど、ネコと触れ合っている際に、ネコがなでられるタイミングやなでてもらう場所を選ぶ自由をネコに与えるケースが低くなり、積極的にネコに触れに行くことが発見されました。



そのほか、高齢で神経症的な傾向が強い人ほど、ネコを抱きしめたり拘束したりしやすく、外向的な人ほどより頻繁にネコに接触して、ネコがあまり好まない部分をなでる傾向があったそうです。対照的に、性格に関するアンケートで「協調性」のスコアが高くなった参加者は、ネコが嫌がる部位に触れる機会が少なくなりました。また、ネコや他の動物との仕事の経験があると回答した人は、より「ネコに優しい」アプローチをする傾向があり、ネコの自由に任せてネコが要求する動きに敏感に反応しました。総合して、人々の経験や性格、そして自分のネコに関するスキルへの認識が、ネコとの触れ合い方に重要な影響を与える可能性があると、研究者たちは結論付けています。

フィンカ教授はこの研究を受けて、「ネコとの触れ合いが上手であるかという評価や、特定のネコを引き取る適性があるかを判断するために、ネコを飼った経験、ネコを飼っている期間の長さなどが、信頼できる指標として常に考慮されるべきではありません」と述べています。研究チームは合わせて、研究に協力したバタシー保護施設が公開している「ネコの周りで適切に行動するためのムービー」を紹介し、ネコとの正しい交流を誰もが確実に認識できることも研究の重要な目的として強調しています。

How to interact with your cat | The Battersea Way - YouTube