シリーズ合算ではなく「単一車種」で人気のクルマは?

 新車の人気動向を確認するうえで参考にされるのが、一般社団法人日本自動車販売協会連合会が毎月公表している「新車販売台数ランキング」です。

 登録車の月々の登録台数を集計したランキングですが、車名による「ブランド別」となっているため、上位の常連であるトヨタ「ヤリス」は別車種ともいえる「ヤリスクロス」や「GRヤリス」が、また「カローラ」も「ツーリング」や「スポーツ」「カローラクロス」までが含まれた数字となっています。

【画像】ヤリスシリーズより上!? 単一車種で売れまくる「ノート」「ルーミー」「ライズ」(25枚)

 これは戦略的にブランディングされているともいえますが、必ずしも1モデルでは圧倒的な人気とはいい切れません。

 そこで「単独車種として何が売れているのか?」を見ていくと、顔ぶれがかなり変わってきます。実際に売れているクルマはどのようなモデルがあるのでしょうか。

e-POWER専用車になった日産「ノート」(3代目)

●日産「ノート」(3代目)

 コンパクトなサイズに適度に快適な広さの居住空間、さらに先代から搭載されたシリーズ式ハイブリッド「e-POWER」の専用車として生まれ変わった日産「ノート」。

 見た目や排気量からコンパクトカーに分類されていますが、ショートノーズ&ロングデッキのスタイルが特徴の5ドアハッチバックです。

 ノートは可愛らしさを排除したシャープなフロントマスクを採用。プレミアムモデルの「ノート オーラ」も好評で、老若男女を問わず乗れる普遍性と適度な高級感を身につけました。

 全長4045mm×全幅1695mm×全高1520mmと5ナンバーに収まるサイズながらホイールベースは2580mmで、後部座席も窮屈感はほとんど感じません。

 ここに発電用の1.2リッター直列3気筒エンジン+駆動用モーターを搭載し、まとまり感のあるエクステリアで車格もBセグメント以上の高級感を感じさせます。

 もちろん28.4km/L(WLTCモード)という低燃費や、駆動はモーターのみというEVに近い乗り味も魅力的。

 充電設備が増えているとはいえ、電気自動車は不安という人でも、ガソリンエンジンで発電するe-POWERであれば、市街地から長距離まで不安なく走行できるのもポイントです。

本来OEM車は本家より人気がないけど…

●トヨタ「ルーミー」

 通常、OEM車というものは、ベース車両ほど人気にならないものですが、そんな常識を覆すほどの人気となっているのがトヨタ「ルーミー」です。

 ルーミーは、ダイハツが開発した「トール」にトヨタのバッジをつけたトールワゴンなのですが、2016年の登場以来売れまくっています。

トヨタ「ルーミー カスタム」

 コンセプトは「Living」と「Driving」を掛け合わせた「1LD-Car」。ベースのトールがターゲットとする「子育てファミリー」向きの高い実用性と広い居住空間がセールスポイント。

 軽自動車で大人気となっているトールワゴンだけに、軽を得意とするダイハツのノウハウはかなりのもので、「トールワゴンは良さそうだけど軽自動車じゃ心もとない」と考えるユーザーに受け入れられました。

 スクエアなボディ形状でショートノーズのボディは、全長3700mm×全幅1670mm×全高1735mm。取り回ししやすいのに、頭上空間の余裕もあって広々としたキャビンが魅力です。

 搭載される1リッターエンジンは、1140kgの車体に大人4人が乗ってもストレスを感じにくいレベルのパワー(69PS)を確保。1リッターターボ車もラインナップされ、高速道路などでも余裕ある走りを楽しめます。

 また、後席スライドドアは広い開口部となっていて、子どもから高齢者まで乗り降りもしやすく、荷物も積み込みやすいのもポイント。

 さらに、混雑した商業施設の駐車場でも停めやすいボディ形状と、高い着座位置による視界の良さなどもあって、販売ランキングで常に上位に鎮座しています。

●トヨタ「ライズ」

 ルーミーと同じくダイハツのOEM車でありながら、本家のダイハツ「ロッキー」をも上回る販売台数を記録するクロスオーバー小型SUVがトヨタ「ライズ」です。

 軽トールワゴンの「タント」に続き、「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)」を採用したモデルで、生産はダイハツが担当していますが、4WDはトヨタのシステムを搭載するなど、共同開発といった位置付けになっています。

 全長3995mm×全幅1695mm×全高1620mmと5ナンバーに収まるボディサイズに、17インチタイヤなどSUVらしい装備を採用。

 パワートレインはダイハツ製1リッター直列3気筒ターボエンジンと、2021年に追加されたシリーズ式ハイブリッド「e-SMARTハイブリッド」を用意し、環境性能にもこだわった小型SUVです。

 ライズ最大の魅力は、SUVとしてはお求めやすい価格設定でしょう。それでいてハイブリッドが選択可能となり、さらに衝突被害軽減ブレーキ(いわゆる自動ブレーキ)や誤発進抑制機能なども標準装備化され、上位グレードではさらに充実した安全装備も装着されます。

 低価格で人気ジャンルの小型SUVを販売できるのも、ダイハツの良品廉価なものづくりと、トヨタならではの販売力といえます。

 SUVには乗りたくても大きなサイズで諦めていた人にとっては、環境性能にも優れ安全装備も充実し、手頃な価格で乗れるライズは魅力的。

 街乗りにも最適なサイズでありながら、悪路にも対応できるSUVらしい足回りもあるという、2度オイシイのが人気の理由なのかもしれません。

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 2022年1月から6月の自販連のランキングでは、1位がヤリス(8万1580台)、2位がカローラ(7万988台)、3位がルーミー(6万5525台)、4位がノート(5万6948台)、5位がライズ(4万5380台)でした。

 取り回ししやすい小型車が上位を占めているほか、5台のうち4台がトヨタ車と、コンパクト人気とともにトヨタ車も絶大な人気があることがランキングからわかります。