朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の航空・反航空軍(空軍・防空軍)の司令部直属の区分隊で先月初旬、男性兵士が死亡する事件が起きた。軍官学校(士官学校)入学の推薦を受けた、将来有望な彼に一体何が起きたのだろうか。

デイリーNKの朝鮮人民軍内部の情報筋によると、事件のあらましは次のようなものだ。

軍の電信電話所で勤務していた20代のリさんが先月10日の夜、変わり果てた姿となって、交代勤務者により発見された。

事件後の調査で、彼は「養成指導員が検査室に同行して行われた梅毒検査は、生まれて初めての辱めと苦痛で、もはや軍での勤務はできなくなった」という内容の、遺書のようなメモを残していたことがわかった。

この養成指導員とは、幹部の人事を司る幹部部の養成課の人員のことだが、空軍司令部付の保衛部(秘密警察)は、指導員と空軍病院の軍医を呼んで取り調べを行った。

その結果、2人は梅毒検査と称して、リさんを丸裸にした状態で、立たせたり座らせたりを繰り返し、その様子を見てケタケタ笑うというセクシャル・ハラスメントを行っていたことが判明した。

保衛部は2人に余罪があると見て、検査を受けた男女兵士を個別に呼んで聴取を行ったところ、他にも同様のハラスメントを受けた者が複数いることが判明した。

2人は、軍機紊乱容疑で軍検察所に身柄を拘束され、予審(起訴前の追加取り調べ)を受けている。

(参考記事:「上官はずっとボクをさわり続けた」北朝鮮軍で同性間の性暴力が横行

これを受けて、朝鮮人民軍の総政治局は「長年、下戦士(末端の兵士)を真の革命同志と考えない軍官養成部門の幹部の腐敗、堕落ぶりを見せつけた事例」だと批判し、全軍の軍団、司令部の政治部、幹部部の養成課に「今まで行っていた男性99号(梅毒)検査、女性産婦人科検査を、指示があるまで当分の間行わないこと」を命じた。

また、身体検査を行うにあたっては、軍医が所見書を発行した場合に限ること、検査に同行したことのある養成課の担当者に警告処分を行うこと、女性産婦人科検査は早期の廃止を検討すること、などと言った内容も含まれている。

軍内部からは「(被害者が)何も言わないだけで、こんなことをしている養成課のイルクン(幹部)、軍医は少なくないだろう」との話が出ている。

朝鮮人民軍では、上官が部下に性暴力を振るう事態が続発していると言われるが、特に女性の場合、被害者であるにもかかわらず、落ち度があったとされる社会的風潮があるため、言い出せないのだ。

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