2020年6月、「あおり運転」を原因とする事故が相次いでいることを受け、新たに「妨害運転罪」に関する規定を設けた改正道路交通法が施行されましたが、依然としてドライバー間のトラブルは後を絶ちません。

車間距離を詰めたり、クラクションを連打したりといった威圧行為が「あおり運転」の代表例として知られていますが、なかには逆上したドライバーが路上に停車し、そのまま車外での口論に発展する……というケースも。

こういった行為は後続車の迷惑になるだけでなく、事故の原因にもなり危険ですが、何らかの道路交通法違反に該当するのでしょうか。

「車を放置して路上での口論」は違反行為になりうる

警視庁の担当者に話を伺ったところ、該当する可能性が高いのが「駐停車禁止」に対する違反だといいます。

道路交通法の第44条および第45条には、駐車・停車を禁止する場所が定められており、これに該当する区域に車両を継続して止めることはできません。(参照:e-Gov法令検索「道路交通法」第44条・第45条)

たとえば駐停車禁止区域である「交差点の側端から5m以内」の場所で、赤信号で停車中に車外に降り、青信号になっても車を動かさないといった状況であれば、明確な駐停車禁止違反にあたるとのことです。

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それでは、駐停車禁止区域でなければ罪に問われないのかといえば、もちろんそうではありません。それ以外の場所であっても、他の車両の通行を妨げる形での停車行為は違反に該当しうるといいます。

駐停車の「方法」について定める道路交通法第47条においては、駐停車の際には道路の左側に寄り、「他の交通の妨害とならないようにしなければならない」とされているため、「路上に車を止めたまま口論を続ける」という行為はこれに違反するものと見なされうるのです。(参照:e-Gov法令検索「道路交通法」第47条)

■駐停車禁止違反の罰則は?

駐停車に関する罰則は、ドライバーの状態などによって大きく2種類に区分されます。「運転者が車両を離れ直ちに運転することができない状態」であれば「放置駐車違反」、運転者の状態にかかわらず、車両が「継続的に停止」している状態であれば「駐停車違反」にあたります。

警視庁の担当者の話では、車両間トラブルによって交通を妨げる行為が「駐停車違反」と「放置車両違反」のどちらに該当するのかは、そのときの状況によるとのことです。運転者が車両の近くで口論していたとしても、5分以上車を動かさない場合などは「放置駐車違反」と判断されうると言います。

また、罰金の額や違反点数は、車両が置かれていた場所によっても変動します。 

区分 罰金(普通車の場合) 違反点数 放置車両違反(駐車禁止場所) 15,000円 2点 放置車両違反(駐停車禁止場所) 18,000円 3点 駐停車違反(駐車禁止場所) 10,000円 1点 駐停車違反(駐停車禁止場所) 12,000円 2点

なお、駐停車禁止場所ではない地点における「駐停車の方法」に関する違反の場合、罰金は「15,000円(普通車)」、違反点数は「2点」となります。

第三者としてトラブルを見かけた場合にも、遠慮なく通報して

当然ながら、車両を停止させるまでの経緯によっては、2020年6月に新設された「妨害運転罪」すなわち「あおり運転」に該当するケースも考えられるといいます。

路上に停車した後に車両から降りる行為のみでは「妨害運転罪」の対象とはならないと考えられますが、それまでに幅寄せや無理な追越し、急ブレーキといった行為がある場合には、妨害運転罪が適用されうるということです。

妨害運転罪には罰則として、「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されます。違反点数は「25点」であり、2年間の免許欠格処分が下されます。

なお、高速道路上で故意に自車を停止させ、後続車両を停止させた場合の罰則はさらに重くなり、「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、違反点数は「35点」で3年間の欠格処分となります。

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道路を塞ぐような形で前走車が停止し、ドライバーなどがその車両から降りてきた場合には、ドアのロックを確認し、何を言われても窓を決して開けないようにしましょう。トラブルの内容を問わず、すぐに110番通報することが望ましいです。

警視庁の担当者によると、第三者として車両間トラブルを見かけた場合にも、遠慮なく通報してよいということでした。

その状況が道路交通法に違反するかどうかが明確でなくとも、通行が滞っていたり、口論が長引いていたりと、危険が予測される場合はまず警察に状況を報告するようにするとよいでしょう。