J1鹿島アントラーズのレネ・ヴァイラー監督が、8月8日に解任された。J1リーグの監督交代は、ヴィッセル神戸と清水エスパルスに次いで3チーム目となる。

 今シーズン初の監督交代は神戸で、その理由は成績不振だった。シーズン開幕からリーグ戦4分3敗と低迷し、開幕からわずか1か月での体制変更となった。神戸はヤングデベロップメントコーチの肩書を持つリュイス・プラナグマに暫定的にチームを託し、ミゲル・アンヘル・ロティーナへバトンを託した。しかし、J2の東京ヴェルディやJ1のセレッソ大阪で一定の成果をあげたこのスペイン人も、チームを浮上されることはできない。2勝1分6敗と黒星が大きく先行し、3か月弱でチームを離れることとなった。

 清水の監督交代は5月末に起こった。平岡宏章監督のもとでリーグ戦2勝7分7敗と低迷していることを理由に、契約解除を選択した。

 鹿島はどうか。

 現時点の成績は11勝7分6敗の5位だ。首位の横浜F・マリノスとは勝点8差で、残り試合は「10」である。ギリギリで逆転圏内ではある。なによりも、2位の柏レイソルとは勝点2差、3位のセレッソ大阪とは勝点1差で、4位の川崎フロンターレとは同勝点だ(川崎Fは消化試合数が「2」少ないが)。まだまだ巻き返しが可能なポジションにつけている、と言える。

 ヴァイラー監督にとってマイナス評価となったのは、7月6日の20節から5試合勝利から遠ざかったことだ。直近2試合は首位の横浜FMと6位のサンフレッチェ広島に、0対2で敗れている。「まだまだ巻き返しが可能」ではなく、「このままではズルズルと後退してしまう」との判断が働いたのだろう。

 さらに言えば、シーズン開幕から4試合は、新型コロナウイルス感染症拡大による入国制限で、岩政大樹コーチがベンチをあずかった。同コーチのもとでは3勝1敗の成績を残しており、ヴァイラー監督の指揮下では8勝7分5敗となる。少し印象が変わる。それもまた、マイナス評価に加えられたのかもしれない。

 昨シーズンの鹿島は、4月にザーゴ監督を解任した。後任にはトップチームのコーチだった相馬直樹が就く。クラブのOBでもある新監督は、就任後の30試合で19勝4分7敗の成績を残し、リーグ戦4位でフィニッシュした。

 しかし、クラブは続投を望まなかった。

 4位では物足りない、ということなのだろう。それが鹿島というクラブの「立ち位置」なのだ。
クラブ史上初となるヨーロッパ人監督の招へいは、現状打破への意気込みの表れだったはずである。クラブ発足時から続いていたブラジル人体制からの転換をはかったのだから、多少なりとも時間がかかるのは織り込み済みであるべきでは、と個人的には思う。

 前述したように、ヴァイラー監督はコロナ禍で来日が遅れ、シーズン開幕後からの指揮となった。プレシーズンをチームとともに過ごすことができなかった意味では、途中就任と同じである。

 Jリーグ開幕後に最多のタイトルを獲得している鹿島は、「常勝」を義務づけられている。18年のACLを最後に3シーズン連続で無冠に終わっている現状は、鹿島に関わるすべての人々にとって歯がゆいものだろう。

 しかし、今シーズンの体制変換は、今後10年、20年につながっていく決断だったはずだ。鹿島というクラブだからこそ追い求めるもの、追い求めなければいけないものはあるとしても、このタイミングでヴァイラー監督を退任させたら──迷走の第一歩になりかねない、と思ってしまうのである。少なくとも、2シーズン連続で監督が途中交代するのは、常勝鹿島のあるべき姿ではない。