この記事をまとめると

■日産と三菱自動車によるNMKVが生み出した軽EVの販売が好調だ

■軽自動車は、車体や部品の共有化によるコスト削減など「規模の経済」の重要性が高い

■グローバルでもNMKVの存在意義は高く、今後も協業による魅力的なクルマの登場に期待

両社の強みを活かした競争力のあるクルマを世に送り出す

 軽EVの日産「サクラ」と三菱自動車(以下、三菱)「eKクロスEV」の販売が好調だ。

 日産の正式リリースでは発売開始から3週間後の6月13日時点で受注は1万1429台と発表されているが、7月後半には2万台の大台を超えたようだ。

 eKクロスEVも、サクラと比べると販売台数は少ないが、三菱としての当初目標を大きく超える規模の受注を確保している。

 改めて、日産と三菱の関係を振り返ってみると、2011年6月1日に日産50%、三菱50%を出資する合弁事業としてNMKVが35人体制で立ち上がっている。事業内容は、将来の軽自動車の商品開発とエンジニアリングで両社の強みを活かして、競争力のあるクルマを世に送り出すことだ。NMKVはその後、「デイズ」や「eKワゴン」を世に送り出していく。

 筆者は、デイズの開発責任者に日産グローバル本社で個別インタビューしたが、「日産は軽自動車の知見が少ないなか、三菱から学ぶことが本当に多い」と本心を語っていたのが印象的だった。

 一方の三菱は、日産向けを含む軽自動車全般を生産する岡山県の水島工場の稼働率が上がることで、経営に直接的なプラス効果がある。直近では、eKクロスEVに関して「日産のEV技術を数多く取り入れたことで、i-MiEV以来、社内で培ってきた我々のEV技術と上手く融合できた」と、三菱関係者はNMKVの有効性について強調している。

日産と三菱がこれから生み出す新たなクルマにも超期待!

 軽自動車は日本の乗用車市場の約4割を占めるため、日産にとっても三菱にとっても継続的に軽自動車を企画・開発・生産していく必要があるが、軽自動車は車両価格が低く、そのため実質的な利益が少ないクルマであるため、日産と三菱の2社による車体や部品の共有化や共同購買によるコスト削減などが重要だ。いわゆる「規模の経済」の重要性が高いビジネス領域なのだ。

 そうした点に着目して設立されたNMKVは、サクラとeKクロスEVの商品としての出来栄えの良さと、それを高く評価したユーザーによる受注好調は、日産と三菱の双方にとってまさにWin-Winの関係が築けていると言えるだろう。

 また、軽自動車のみならず、乗用車セグメント全体としては、日産、三菱、そしてルノーによるグローバルでのアライアンスの効果が着実に現れている。

 3社は2020年5月27日、「競争力と収益性を高める新たなるアライアンス」の取り組みについて発表している。ここでの重要なキーワードは「リーダーとフォロワー」だ。各社それぞれが得意で世界をリードしうる技術、または販売実績がすでに高い国や地域を明確化するという事業戦略だ。

 その中で、日産はEVやe-POWER、高度運転支援システム、コネクティビティなどのインテリジェント領域の技術や、北米と中国での事業でのリーダーとして位置付けた。また、三菱はプラグインハイブリッド技術や、東南アジアなど経済新興国での事業でリーダーである。

 こうしたグローバルでのアライアンスの中で、日本でのNMKVの存在意義がさらに高まったと言えるだろう。今後も日本で、日産と三菱による協業で生まれる魅力的なクルマの登場を期待したい。