[画像] 森保一監督の本性が見えた日本代表メンバー。選出ゼロの鹿島ファンはブーイングで応えるべきだ

 東アジアE−1選手権に臨む日本代表選手26人が、以下のように発表された。

GK
大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(湘南ベルマーレ)、鈴木彩艶(浦和レッズ)

DF
佐々木翔(サンフレッチェ広島)、谷口彰悟(川崎フロンターレ)、山根視来(川崎フロンターレ)、畠中槙之輔(横浜F・マリノス)、小池龍太(横浜F・マリノス)、中谷進之介(名古屋グランパス)、荒木隼人(サンフレッチェ広島)、大南拓磨(柏レイソル)、杉岡大暉(湘南ベルマーレ)

MF/FW
水沼宏太(横浜F・マリノス)、武藤嘉紀(ヴィッセル神戸)、宮市亮(横浜F・マリノス)、橋本拳人(ヴィッセル神戸)、野津田岳人(サンフレッチェ広島)、脇坂泰斗(川崎フロンターレ)、西村拓真(横浜F・マリノス)、相馬勇紀(名古屋グランパス)、岩田智輝(横浜F・マリノス)、森島司(サンフレッチェ広島)、満田誠(サンフレッチェ広島)、町野修斗(湘南ベルマーレ)、細谷真大(柏レイソル)、藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)

 今季のJリーグを見て思うことは、横浜F・マリノスの強さだ。ケヴィン・マスカット監督は、アジアチャンピオンズリーグも含めて、2試合続けて同じスタメンで戦ったことはないと記憶する。長いシーズンの先を見越し、選手をローテーションしながら無理をせずに戦っている。


横浜F・マリノスからは水沼宏太をはじめ最多の7人が選出された

 勝ち点5差で追走する2位・鹿島アントラーズ、7差で追走する3位・川崎フロンターレより、余裕を垣間見ることができる。馬なりであるにもかかわらず、首位を走っている印象だ。実際の差は、勝ち点差以上にあると筆者は踏む。森保一監督が東アジアE−1選手権に臨む日本代表に、横浜F・マリノスから7人の選手を選出したことに対して異論はない。

 一方で、それ以下のチームは混戦だ。上位と下位の間に大きな差はない。勝ち点は実際、最下位のジュビロ磐田まで僅差で並んでいる。1強とそれ以下の戦い。これが実態だと考える。選手も各チーム、粒ぞろいだ。17位の清水エスパルスにも代表に選びたくなる選手はいる。

 こうした混沌とした状況のなかで、誰を今回、東アジアE−1選手権の代表に選ぶか。

広島6、鹿島0が意味するもの

 選ばなければならない選手、外せない選手は少ない。代表で準レギュラー級の谷口、山根ぐらいに限られる。それ以外は誰を選んでも構わない。代表監督が、こうした縛りが少ないなかで選考に及ぶ機会は珍しい。新監督に就任した直後の、いわゆる新星チームでも、前監督時代からの代表選手をバッサリ切れば、波風は立つ。気遣いはしなくてはならない。それが今回の選考には不要。真っ新なキャンバスにフリーハンドで筆を入れる状態にあった。

 森保一監督は独自の言葉を持たない監督と言っていいだろう。本音を語らないというか、見せないというか、言質を取られるのを恐れているのか、とにかく就任してここまで、強く主張することを避けてきた。自らの色を隠そうとしてきた。逆に言えば、それが没個性という個性になっていた。それが一転、個性を発揮しなければならない立場になった。これまで森保監督から拝むことができにくかった奔放さに、注目が集まっていた。

 筆者は正直、もう少しバランス感覚に富んだ常識人かと思っていた。自由な環境のなかにあっても、各チームに気遣い、バランスを考慮した選考をするものと考えていた。確かにサンフレッチェ広島は好調かもしれない。森保監督にとってはその前身となるマツダで育ち、後に監督まで務めた親しいチームでもある。多くのファンもその事実を知っている。そうしたなかで広島の選手を6人も選出した。

 横浜F・マリノス7人、広島6人、川崎、湘南各3人、柏、名古屋、神戸各2人、浦和1人。クラブ別の内訳を見れば、森保監督の「広島愛」は一目瞭然となる。逆に愛が感じられない筆頭は鹿島になる。Jリーグで2位につけながら選ばれた選手は0。ベトナム戦(3月)、チュニジア戦(6月)でスタメンを飾った上田綺世が、直前にベルギーに移籍したという事情を抜きにしても、2位のチームから誰も選出しないというのはバランス的に問題だ。

 実際、鈴木優磨、樋口雄太、三竿健斗など、代表に相応しい選手は確実に存在する。嫌いな選手、好みではない選手であったとしても、義理だとしても、1人、2人選ぶ。これが常識というものだ。しかも、初戦の香港戦は鹿島スタジアムが舞台となる。

なぜ西川周作は選ばれなかったのか

 欧州ならば大問題に発展しているところだろう。地域性を無視しているというか、国内リーグを軽んじているというか、言い換えれば、森保監督は批判を承知のうえで鹿島勢を排除したわけだ。これまで見えにくかった森保監督の本性をここに見た気がする。鹿島スタジアムに駆けつける鹿島ファンは、大ブーイングでこれに応えるべきだろう。

 セレッソ大阪(Jリーグ6位)、FC東京(同7位)、さらにはGKの鈴木しか選ばれなかった浦和のファンも、怒るべき案件になる。

 佐々木、荒木、野津田、森島、満田。以上が、広島から選出されたフィールドプレーヤー5人の顔ぶれだが、選びたい候補者すべてを選んでしまった格好だ。満田という若手を登用したいのなら、佐々木というベテランや脇で構える森島は我慢するとか、28歳になってようやく居所を見つけた野津田を代表に推したいのなら、荒木は我慢するとか、GK大迫を外せない選手とするならば、フィールドプレーヤーはせいぜい3人程度に留めるとか......それが常識というか、正常なバランス感覚というものだ。

 そもそも広島が好調な原因は選手のポテンシャルというより、ミヒャエル・スキッベ監督の采配力、それに基づくサッカーの質にある。森保監督が同じメンバーの広島を率いたらJリーグで4位につけられるだろうか。

 もう1点の突っ込みどころはGKだ。浦和から唯一選ばれた鈴木は今季のJリーグに1度も出場していない。西川周作の完全なるサブに甘んじている。6月にウズベキスタンで開催された先のU−23アジアカップで、鈴木は確かに活躍した。A代表でも行けそうな可能性を感じさせるプレーを見せていた。だが、浦和ではあくまでもサブだ。Jリーグには1試合も出場していない。

 鈴木を選ぶなら、その前に実力者である西川ではないか。それが筋というか、A代表のあるべき姿だと考える。選手を管轄しているのはクラブだ。サッカー協会はではない。代表選手は育成年代のチームも含め、クラブからの借り物。主役はクラブなのだ。

 32歳の水沼が初めて選出されたり、ケガに悩まされ続けた宮市が10年ぶりに復帰したり、美しい話を見つけ出すこともできる。個人的には最年少、弱冠20歳の藤田に最も期待を寄せている。W杯の最終メンバーに残ってほしいと考える。

 だがやはり、今回の選考で筆者を最も驚かせたのは、図らずも見えてしまった森保監督の本性である。これまでも頑固そうな人柄を隠しきれない様子だったが、ここに来て一気に強気な態度に出た印象だ。よけいなケンカを売ってしまった気がする。11月のW杯本大会に向けて、火種になる可能性なきにしもあらず、だ。