鹿実との対戦、心から楽しむ・喜界鹿実・森山

<第104回全国高校野球選手権鹿児島大会:鹿児島実10−0喜界>◇12日◇2回戦◇鴨池市民

 鹿児島実は立ち上がり、1死一、三塁のチャンスを作ると、4番・永井 琳(3年)がセンター方向への大飛球。これを喜界の中堅手の竹下 慎之佑(3年)が背走しながらのジャンピングキャッチで好捕。犠牲フライとなったが、得点はこの1点でくいとどめた。

 4回表、鹿児島実は6番・駒壽 太陽主将(3年)の左翼線二塁打、1番・藤田 和真(3年)の右前適時打で2点を追加。5回には3本の長打を含む5安打を集中し、一挙6点のビッグイニングを作って主導権を手繰り寄せた。 先発の右腕・森山 遼耶(3年)から3投手の継投で喜界に得点を許さなかった。

「ノーミスで戦ってこれだけ取られたら仕方ない」。喜界・松元修監督は悔し涙を浮かべながら、どこか晴れ晴れとした表情で振り返った。「鹿実とやれるのが楽しみ」。ナインは球場に入る前から自然とそんな言葉が口から出た。彼我の戦力差は歴然としている。「思い切ってぶつかっていくだけ」(盛 聖也主将・3年)と開き直った心境で挑むことができた。

 初回、中堅手の竹下が好捕でチームを盛り上げると、盛主将も飛び出した二走を好送球で刺す。「肩には自信があった。刺せて良かった」。4回には右翼手の住友 晴城(2年)が好返球で本塁アウトをとっている。

 10失点は喫したが、四死球やエラーなどこちらのミスが絡んだ失点は少なかった。少しでも制球が甘くなったところを鹿実打線に畳みかけられた。「さすが鹿実」(盛主将)と脱帽するしかなかった。

 後悔があるとすれば「打てなかったこと」だ。「打ち気にはやって前のめりになっていた」分、早打ちしてしまいしっかりと球をとらえきれなかった。 入学した頃からコロナ禍がつきまとい、野球ができないかもしれない不安を抱えながらの高校野球のスタートだった。だからこそ「野球ができることは当たり前でなく、日頃の練習から1球1打に集中する」姿勢で夏を迎えることができた。

 選手9人、大敗にも誰1人涙を流すことなく笑顔でこの夏を締めくくった。「少人数を言い訳にせず、大会に出してくれる親に勝利で恩返しする気持ちで野球に取り組んでほしい」。主将が後輩に託したメッセージだった。

(取材=政 純一郎)